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■事業の詳細

（4）製造拠点

ほぼすべての製品を自社工場で生産

アデランス<8170>は、米国のヘアクラブ社のオーダーメイドかつらを除いた、すべての製品（一部のOEM供給分を除く）を自社工場で製造している。こうした企業は国内外を見渡しても中小メーカーを除けば見当たらない。アートネイチャーも自社工場を有するが、外注依存率は同社に比べてはるかに高いとみられる。製造工程管理でコスト管理が行き届き、かつ、品質管理も十分に行えるということで、同社の自社製造体制は、今後、同社の強みとして重要な差別化ポイントになってくる可能性がある。

○フィリピン、タイ、ラオスで生産

同社の生産基地はタイとフィリピン、及びラオス（2014年9月に稼働予定）である。ラオスはこれまでは提携先会社の工場において同社の指導・管理のもと生産してきたが、2014年9月から、アデランスの自社所有工場（ラオスの第2工場という位置づけ）が稼働する予定だ。

○生産能力は十分に確保

同社の生産能力は明示されてはいないが、生産実績からの推測が可能だ。2013年2月期の生産実績では、オーダーメイドかつらが92,504枚、レディメイドかつらが583,542枚となっている。これらの数字は最大生産能力に対して60%〜80%の水準と同社からコメントを得ており、生産能力は十分に足りていると言える。この状況でラオス第2工場が稼働すると、実生産量と生産能力との差がさらに拡大することになるが、かつらは典型的な工業製品ではなく、むしろ手工業的な色彩が強いため、表面的な設備稼働率の上下が収益性に及ぼす影響は限定的である。また、労働集約型の工場であるため、減価償却費負担が利益を圧迫するという懸念も当たらないであろう。

○手作業が多く、人件費の安さは重要なポイント

生産工程は、プラスチックの樹脂(ペレット)を購入して、自社工場内で糸引き加工（もしくは製糸）して、ベースとなる人工頭皮シートに人工毛髪を植え込む、というものだ。植え込み作業は人手に頼るため、労働集約型の工場といえる。したがって、人件費の安さが重要なポイントになり、生産技術の開発や改良によるコストダウンの余地も比較的大きいと考えられる。

○自社工場でコストと品質の両面で優位性を確保し、正のスパイラルを実現

世界のかつら“メーカー”を見渡すと、実際には自前の工場を持たずに零細かつらメーカーから仕入れて販売する「かつらインポーター」あるいは「かつら販売業者」といった存在がほとんどだ。ライバルのアートネイチャーは連結子会社2社を通じてフィリピンに製造工場を有しているが、社外の製造業者にも生産を委託している。かつら製造は軽工業に属するため、中小の製造業者も多く、自社工場がコスト面で有利とは断言できない面もあるがアデランスは自社製造に強いこだわりを持っている。品質管理面では自社工場が有利なことが大きな理由の1つだ。同社はコスト面においても、立地、従業員の生産技術教育、生産管理等を通じて、競争優位性の保持に自信を見せている。生産コストは数量の関数でもあるため、この意味でも、同社の売上高の伸長が望まれる。すなわち、売上高が順調に回復基調をたどれば、生産コストの低下にもつながり、収益性の改善が加速するという、「正のスパイラル」が期待できる。

（執筆：フィスコ客員アナリスト 浅川　裕之）



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