アデランス Research Memo(15):販管費・人件費の高さが課題、マージン改善でROE向上へ
[14/06/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■財務分析
(1)経営指標分析
○ROEは13.0%でもう一歩の改善が望まれる水準
アデランス<8170>の2014年3月期末の自己資本利益率(ROE)は13.0%となっている。日本企業としては平均的な水準ともいえるが、グローバル企業としてはやや見劣りがする水準だ。また、直接のライバルであるアートネイチャーと比較しても、3ポイントの差がついている。その意味ではまだまだ改善が期待される部分といえる。
○ROAの低下がROE伸び悩みの原因
ROEはROAと財務レバレッジ合計から成る。同社は2013年3月期に有利子負債残高がほとんどなかったため、ROEとROAがほぼ同じだった。しかし2013年4月の米ヘアクラブ社買収に関連して有利子負債残高が9,713百万円に増大し、また総資産も約22,988百万円増加したため、ROE13.0%に対して、ROAが8.6%に低下した。アートネイチャーとの比較ではこのROAの差が、ROEの差につながっている形となっている。
○マージンの低さがROA、ひいてはROEの足を引っ張っている
同社の8.6%というROAは、マージン(売上高経常利益率)6.6%とターンオーバー(資産回転率)1.29回/年の積でもたらされている。このうち、資産回転率は、工場やサロン・店舗などの固定資産を抱えている企業としてはむしろ高いともいえ、アートネイチャーとの比較では明確に上回っている。したがって、ROAの低下あるいは比較劣位の要因は、マージンに帰せられる。
○マージンの低さは売上高販管費率の高さが原因
マージンの大元となる売上総利益率は、79.6%と決して低くなく、アートネイチャーとの比較でも優位にある。しかし、売上高販管費率が74.3%と高いため、売上高営業利益率が5.3%に低下してしまい、売上高経常利益率も押し下げられている。
○増収基調に転じたことで、販管費のコントロールと増収を両立させやすくなってきた
同社はここ数年、精力的に販管費の削減に努めてきた。しかし、過去10年のレンジで見ても、まだ好業績時の名残があった2000年代前半は、売上高販管費率が70%を下回って推移していた。2000年代の中盤以降は売上高の減少幅が急激で、販管費削減が追い付かない状況となって、販管費率が一気に上昇した。しかし現在では売上高が底打ちして増加に転じており、対売上高比率を抑制しながらも費用の絶対額を増加させて、収入増に結び付ける、といったことが可能な状況になってきた。広告宣伝費と販促費について、今後の活用の仕方が注目される。
○競合との比較では売上高人件費率の高さに大きな差がある
競合のアートネイチャーとの比較で販管費の内容をみると、人件費の割合において依然として両社に大きな差があることがわかる。これはサロンの設置数や海外展開の状況の違いなども影響しているため、一概に同社が「悪い」とは言い切れない。しかし、同社の方が「効率性が低い」ことは明白だ。2014年3月期の人件費は、非開示とされている。これは営業上の秘密に分類されたことのほかに、ヘアクラブ社買収によって過去との連続性がとりにくくなってきたことも理由の一つと考えられる。弊社では、ヘアクラブ社がオーダーメイドかつらを主として手掛けていることや、国内でもサロン事業(オーダーメイドかつら販売)のサービス拡充に注力していることから推測すると、売上高比率での低下基調には一旦ブレーキがかかった可能性があると考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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