アデランス Research Memo(18):新中計を発表、国内でのシェア奪取と海外事業拡大で収益成長を目指す
[14/06/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■2015年2月期見通し及び新中期経営計画
○15/2期〜17/2期の3ヵ年中計を発表
アデランス<8170>は2014年4月に、2015年2月期から2017年2月期までの3ヵ年中期経営計画を発表した。同社は2021年2月期の売上高100,000百万円を長期目標として掲げており、今中計は、そこに至る重要なステップということになる。
○着実な増益トレンドを歩み3ヵ年累計EBITDAは26,300百万円の計画
中計の業績目標は上表の通りだ。2015年2月期について同社は、売上高74,000百万円(前期比9.2%増)、営業利益4,100百万円(同13.4%増)、経常利益4,000百万円(同10.7%減)、当期純利益4,400百万円(同2.8%増)を予想している。その後も増収増益を維持して最終年度の2017年2月期には売上高84,000百万円、営業利益6,300百万円を計画している。この計画では、3年間の累計EBITDAは26,300百万円となる。このEBITDAの水準は、リーマン・ショック直前の2006年2月期から2008年2月期の3年間の累計EBITDA29,400百万円の約90%に相当する。底は完全に脱却したと判断できよう。
一方、設備投資については、設備投資額を増額し攻めに転じてくるものと推測している。2012年2月期から2014年2月期までの3年間累計額は5,042百万円と極端に絞り込まれているが、2014年2月期の実績は2,011百万円(前期比229百万円増)と増額基調にある。2010年2月期、2011年2月期と赤字を計上して以降、店舗改修等の費用を抑えてきたこともあり、今後の設備投資の増額は店舗関係が中心になってくるものと思われる。なお、2004年2月期から2009年2月期までの6期間(業績が最高潮を迎えた2000年代前半とリーマン・ショックの影響を受けた2010年2月期以降を除外した期間)の年平均設備投資額は3,258百万円である。同社は海外事業での継続的な成長投資を掲げる一方、EBITDAの着実な回復が期待されるため、過去の平均的な設備投資額の年間3,000百万円程度の投資は、無理なく実施が可能であると弊社では考えている。
○国内市場の横ばいと海外市場での成長を前提条件のメインシナリオとする
こうした業績計画の前提として同社は、国内の男性用かつら市場が年率0.6%〜0.7%縮小し、国内女性用かつら市場で年率1%近い成長が続く、という想定をしている。ネットすれば国内市場は横ばいということであり、海外市場こそが同社にとってのブルーオーシャン市場だとの見方をしている。また、長期目標の達成に向けて、今後もM&Aは継続していく方針を表明している。
○国内男性市場については警戒が必要
かつら市場に対する上記のような会社側の考え方について、大きな違和感はない。ただ、男性市場の縮小幅はもっと大きくなる可能性があると弊社では考えている。反対に女性市場については、新たな需要掘り起こし策により、成長率をもっと高めることは十分可能であるし、今中計に限らず、5年後、10年後を見据えれば、やるべきであると考えている。同社の中計におけるロードマップには、このような視点も盛り込まれており、今後の展開に注目したい。
○中小のライバルからどれだけシェアを奪えるかが鍵とみる
中計の業績目標において、国内の売上高が毎年約2,000百万円ずつ成長するとされている。前述したように、男女を合わせた国内市場全体では横ばいとみていながらも年間2,000百万円の増収を達成するには、シェアを奪うほかはない。男性用のシェアについては、同社のシェア低下はほぼ終了したと判断しても良いだろう。アートネイチャーとの2社間比較では予断を許さないが、他の中小メーカーからシェアを奪って収益を確保していくことは十分可能とみている。大きな理由は、今後同社が広告宣伝費を増額する方針に転じたためだ。テレビ広告を始めとして、広告宣伝は新規客獲得に有効性が高く、その点では資金力のある大手企業が優位にあると考えられる。また、成長が続く女性向け市場ではトップシェア企業(シェア40%)であり、2位のアートネイチャー(シェア20%)とともに、3位以下を大きく引き離している。こうした既存の高シェアの優位性と、男性同様広告宣伝費の増額効果で、大手2社は市場全体の伸びを上回る成長が可能だと考えられる。このように、直接のライバルのアートネイチャーよりは他の中小メーカーのシェアを侵食しながら国内売上高を伸ばすことは十分可能であると弊社ではみている。
○海外ではHC社とボズレー社の動向がカギ
海外については本当にブルーオーシャン市場といえるのか(より適切には、ブルーオーシャン市場と成し得るのか)、判断は難しい。薄毛に対するニーズや消費者心理などは日本同様変化すると思われる。また、需要の価格感応度は日本以上に高く、景気変動の影響も受けやすいものと推測される。同社の海外事業において特に大きな影響を持つのはボズレー社とHC社である。前述のように、ボズレー社の2013年の業績はドルベースでは減収だった。HC社は前年の期中に同社に買収された。したがって、2014年こそが両社にとっては大きな試金石の時期となる。これまでに開示された2014年1月度の月次売上動向を見る限りは、HC社は前年比プラスで堅調な動きだが、ボズレー社は前年割れが続いており、決して楽観はできない。
○今後もM&Aによる海外拡大策を明言
同社は決算説明会の席上、海外市場では今後もM&Aを通じた成長を図っていくことを明言した。M&Aのイメージについては、同社への取材を通じて、案件の規模としてはHC社のような大型案件ではなく数十億円レベルの案件が主体になっていくだろうという感触を得た。小型案件であることで財務的なリスクは低減できる一方で、収益貢献のインパクトや本体からの経営管理の煩雑さなどには注意が必要であろう。国内の事業モデルと海外の事業モデルの大きな違いは、オーダーメイド主体の国内とレディメイド主体の海外という点にある。北米ではHC社買収によって国内と同じ事業モデルを行う体制が整った。一方欧州では、レディメイドに特化して地味ながらも着実に利益を稼いでおり、ここにオーダーメイド事業を追加することは大いに有効な戦略であると思われる。中期成長の柱の1つとして大いに期待したい分野と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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