EMシステムズ Research Memo(3):調剤システムが成長の柱、ASPモデル投入で収益構造転換
[14/07/02]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
(2)事業概要
EMシステムズ<4820>の事業セグメントは、調剤薬局向けレセプトコンピュータや開業医向け電子カルテのほかサプライ品販売などの「調剤薬局向けシステム事業及びその関連事業」(以下:システム関連事業)と、本社ビル内でスポーツジムや保育園を運営する「その他の事業」の2事業セグメントに区分され、投資案件の不動産賃貸事業は営業外収支に計上されるとともに収益は経常利益に反映される。
主力のシステム関連事業は、調剤薬局向けレセプトコンピュータの開発・販売を担う「調剤システム」のほか、開業医向け電子カルテを販売する「医科システム」、チェーン調剤薬局の本部と各店舗の日常業務をサポートする「ネットワークシステム」、薬袋や帳票などの消耗品販売を手掛ける「サプライ」、無償メンテナンス期間経過後に有償でサービスを提供する「保守サービス」など、5つのサブセグメントに分かれる。
この中で同社の成長を担うのが「調剤システム」である。なかでも2009年3月期に投入した調剤システム「Recepty NEXT」は、従来の個別ユーザー(顧客調剤薬局)ごとのパッケージ販売と違い、データセンターと薬局をVPNで結び、データやシステムの管理を行うASP(Application Service Provider)の特長を活用したモデル。「Recepty NEXT」は通常のパッケージ販売ではないため、売上高は契約一時金やハードウェアの販売に限られる。したがって1件当たりのイニシャル(一時的、初期)売上高は旧モデルの半分程度に減少するものの、月額基本料と処方箋枚数に応じた月額従量課金などのランニング(継続的)売上高が、契約件数の積み上げと共に拡大する収益構造である。同社のビジネスモデルは「Recepty NEXT」の投入で調剤システムのイニシャル売上高に頼ったフロー型から、ランニング売上高の積み上げによるストック型ビジネスモデルに転換している。
「Recepty NEXT」のメリットは、ユーザーの初期導入コストが抑えられるうえ、診療報酬改定や業務ソフトなどのアップデートを同社内のサーバで行うため、個別ユーザーごとのアップデートに比べてメンテナンスが容易であることになろう。加えて、処方データが同社サーバで管理されるため、チェーン調剤薬局の在庫管理など、データ共有・分析に強みを発揮する。半面、デメリットはインターネット経由で業務ソフトを提供するため、万全な対策を施すとは言え、セキュリティに対するリスクが拭えないことになる。
開業医向け電子カルテを扱う「医科システム」においても、2012年3月期に投入したASP活用モデル「Medical Recepty NEXT」の販売に注力している。従前の医科システムは売上規模が小さいうえ、医事会計部門システム以外はOEM供給を受けるなど、その位置付けは調剤システムの補完に過ぎなかったが、2014年3月期には電子カルテの開発・販売で業界中堅のユニコンを買収し、同社は医科システムを調剤システムと同様に中長期的な成長ドライバーに育成する方針である。
医科システムの売上高は、調剤システムと同様にイニシャル売上高とランニング売上高に分けられるが、医科システムのランニング売上高は月額基本料であり、調剤システムとは違って月額定額課金となる。
ネットワークシステムは、調剤システム「Recepty NEXT」に先駆けて2003年3月期にASPモデル「NET Recepty」を投入した。現在は、このシステムで培われたノウハウを「Recepty NEXT」で活用している。また、チェーン本部と各店舗の在庫管理や日常業務などをサポートするサービスも提供しており、調剤システムのオプション的要素が高い。したがって、ネットワークシステムは高い売上高成長こそ見込めないものの、調剤薬局業界におけるグループ化の進展等を背景に安定的な売上高成長が予想される。
消耗品販売の「サプライ」と有償メンテナンスの「保守サービス」は、ユーザー数増加を背景に堅実な売上高成長を続けており、今後も調剤薬局及び開業医ユーザーの増加で緩やかな拡大が見込まれる。
その他の事業は、100%子会社が本社ビル内でスポーツジムや保育園を運営する。セグメント利益は2011年3月期に黒字転換したものの、多店舗展開をしていないため、その他の事業の業績寄与は限定的となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 馬目俊一郎)
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