Eストアー Research Memo(4):成長シナリオを「契約顧客数の拡大」から「契約顧客の売上高の増大」へ
[14/07/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業構造転換の方向性と詳細
(1)事業構造改革
Eストアー<4304>における収益の中心は、ネットショップ総合支援サービスの「ショップサーブ」からの収入である。ネットショップを開設してeコマース(EC)に進出したいという個人店舗や中小企業向けのASPサービスで、低廉な料金設定や使い勝手の良さから、数多くの支持を集めた。この事業が同社の「システム事業」(2013年3月期までは「EC事業」と呼称)。
しかし、システム事業は2つの問題点を内包していた。1つは会社草創期に拡大した業務提携先の契約(同社ではこれをOEM契約)の低収益性の問題であり、もう1つは、「ショップサーブ」のようなEC向けASPサービスの乱立による競争環境激化の問題である。
収益源の「ショップサーブ」の契約形態には大きく2つある。1つは自社販路で、自社及び小型代理店による契約だ。もう1つはOEM契約及び大型代理店による契約で、OEM契約は業務提携先企業がそれぞれのブランドで提供しているEC向けASP契約で、同社はそのバックヤードを受け持つ形だ。当然、OEM契約は収益性が低い。そこで、OEM契約は2013年3月期から新規契約獲得を抑制し、2014年3月期には新規契約の受け入れを停止した。2014年3月期中には解約が進み、2014年3月末の契約数はついにゼロになり、契約先の整理統合が完了した。
もう1つの問題点は、EC向けASP事業の競争激化の問題である。「ショップサーブ」のようなEC向けASP事業の事業モデルは、契約企業からショッピングカートやサーバーのシステム利用料として月次料金を徴収するほか、決済代行手数料など売上高の一定割合を徴収するものだ。月次料金は固定制で安定的だが契約数を増やさないと増収とならない。しかし、競争環境が激化するなかで契約数を増やすことは簡単ではない。また、契約数の増加に対してはサーバーの容量などの点で設備投資が必要になり、ゼロコストで収入増というわけにはいかない。
そうしたなかで同社は、システム事業の利益成長シナリオを、「契約顧客数の拡大」から「契約顧客の売上高の増大」へと明確に変更した。「ショップサーブ」の契約企業から得られる、決済代行のコミッション収入や、見込み客送客サービスによる収入の増大によって、同社の収益を成長させるということだ。後者の施策自体は2006年の「ショッピングフィード」という商品検索サイトの開設や、その改良版の「park」の開設(2012年)などを通じて従来から行われてきたことだ。
こうした施策は一定の結果を出してきている。グラフにあるように、「ショップサーブ」注力契約店舗数は頭打ち感があらわれているにも関わらず、それら店舗の売上高の合計(グラフでは「流通額」と表示)は、着実に右肩上がりを続けている。
1店舗当たりの売上高の推移をみると、同社が目指す方向性がより明確にわかる。2011年3月期までは、注力契約顧客であっても売上高は1店舗当たり400万円台前半で横ばいもしくは微減といった形で停滞していた。しかし同社が「ショッピングフィード」を見直し「park」にリニューアルしたり、契約企業についても数より質を追求する方針に改めたりした2012年3月期、あるいは2013年3月期からは、明確に1店舗当たり売上高が増加に転じている。
現在、同社が注力している「マーケティング事業」というのは、ここに端を発しているが、その過程で、さらにターゲットを拡大し、「システム事業」のサポートにとどまらず「マーケティング事業」自体を独立した、同社の収益の柱に育てようとしている。これが、同社が進める事業構造改革の内容である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<FA>
(1)事業構造改革
Eストアー<4304>における収益の中心は、ネットショップ総合支援サービスの「ショップサーブ」からの収入である。ネットショップを開設してeコマース(EC)に進出したいという個人店舗や中小企業向けのASPサービスで、低廉な料金設定や使い勝手の良さから、数多くの支持を集めた。この事業が同社の「システム事業」(2013年3月期までは「EC事業」と呼称)。
しかし、システム事業は2つの問題点を内包していた。1つは会社草創期に拡大した業務提携先の契約(同社ではこれをOEM契約)の低収益性の問題であり、もう1つは、「ショップサーブ」のようなEC向けASPサービスの乱立による競争環境激化の問題である。
収益源の「ショップサーブ」の契約形態には大きく2つある。1つは自社販路で、自社及び小型代理店による契約だ。もう1つはOEM契約及び大型代理店による契約で、OEM契約は業務提携先企業がそれぞれのブランドで提供しているEC向けASP契約で、同社はそのバックヤードを受け持つ形だ。当然、OEM契約は収益性が低い。そこで、OEM契約は2013年3月期から新規契約獲得を抑制し、2014年3月期には新規契約の受け入れを停止した。2014年3月期中には解約が進み、2014年3月末の契約数はついにゼロになり、契約先の整理統合が完了した。
もう1つの問題点は、EC向けASP事業の競争激化の問題である。「ショップサーブ」のようなEC向けASP事業の事業モデルは、契約企業からショッピングカートやサーバーのシステム利用料として月次料金を徴収するほか、決済代行手数料など売上高の一定割合を徴収するものだ。月次料金は固定制で安定的だが契約数を増やさないと増収とならない。しかし、競争環境が激化するなかで契約数を増やすことは簡単ではない。また、契約数の増加に対してはサーバーの容量などの点で設備投資が必要になり、ゼロコストで収入増というわけにはいかない。
そうしたなかで同社は、システム事業の利益成長シナリオを、「契約顧客数の拡大」から「契約顧客の売上高の増大」へと明確に変更した。「ショップサーブ」の契約企業から得られる、決済代行のコミッション収入や、見込み客送客サービスによる収入の増大によって、同社の収益を成長させるということだ。後者の施策自体は2006年の「ショッピングフィード」という商品検索サイトの開設や、その改良版の「park」の開設(2012年)などを通じて従来から行われてきたことだ。
こうした施策は一定の結果を出してきている。グラフにあるように、「ショップサーブ」注力契約店舗数は頭打ち感があらわれているにも関わらず、それら店舗の売上高の合計(グラフでは「流通額」と表示)は、着実に右肩上がりを続けている。
1店舗当たりの売上高の推移をみると、同社が目指す方向性がより明確にわかる。2011年3月期までは、注力契約顧客であっても売上高は1店舗当たり400万円台前半で横ばいもしくは微減といった形で停滞していた。しかし同社が「ショッピングフィード」を見直し「park」にリニューアルしたり、契約企業についても数より質を追求する方針に改めたりした2012年3月期、あるいは2013年3月期からは、明確に1店舗当たり売上高が増加に転じている。
現在、同社が注力している「マーケティング事業」というのは、ここに端を発しているが、その過程で、さらにターゲットを拡大し、「システム事業」のサポートにとどまらず「マーケティング事業」自体を独立した、同社の収益の柱に育てようとしている。これが、同社が進める事業構造改革の内容である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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