Eストアー Research Memo(5):事業構造転換の中核としてインターネット広告事業に注力
[14/07/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業構造転換の方向性と詳細
(2)事業構造改革の内容と方向性
現在、Eストアー<4304>が進める事業構造改革は、一言で表現するならば「EC専業のネット広告代理店になる」ということであろう。インターネット広告代理店の業界にはサイバーエージェント<4751>やオプト<2389>、セプテーニ・ホールディングス<4293>など、すでに業界大手企業が名を連ねている。そこに同社が参入することについては不安を感じる向きがあるが、これらはECに特化している訳ではなく、また同社のサービスを追及していくと、ネット広告という領域は避けて通ることができないと弊社では考えている。顧客企業としてはネット上に店を出すことがゴールなのではなく、eコマースによって収益を上げることが目的だからだ。
同社のマーケティング事業(当時は「集客事業」)は、2006年の「ショッピングフィード」開設にまで遡る。これは商品検索サイトで文字通り「集客」機能にとどまっていた。いわゆるインターネット広告事業に進出したのは2011年6月にプレシジョンマーケティングを連結子会社化したことを契機としている。プレシジョン社は、eコマース企業にこだわらずむしろ一般のインターネット広告を取り扱っている。同社は、プレシジョン社のマーケティング事業を「既存マーケティング事業」という名称で社内的に区別している。
現在、同社が事業構造転換の中核として注力しているのは、同社本体によるeコマース企業のためのインターネット広告事業だ。同社は社内的にこれを「新規マーケティング事業」と称してプレシジョン社の「既存マーケティング事業」と区別している。
新規マーケティング事業の内容がインターネット広告代理店であるとはいえ、サイバーエージェントやオプトといった業界大手企業との直接競合を狙うわけではない。典型的な事業モデルは次のようなものだ。実際に業務を行うのはデータサイエンティストと呼ばれるスタッフで、彼らは担当するEC企業について、面談などを通して顧客のニーズを把握し、同時にサイトの分析を行う。そのうえで、顧客の目標を達成するための広告戦略を練る。その後はA案とB案の2パターンについて具体的に広告を出稿する。その後は、毎日広告の効果について分析を重ね、必要があればA案とB案の内容を少しずつ替えながら、当該顧客企業にとって最も有効な広告手法やメディアなどを探り出していく。
上記のような作業は、データサイエンティストの物理的な時間を消費するという意味で、労働集約的な手法ともいえる。一方で、A案とB案を同時に出稿して最適な出稿手法(公告の種類や対象となる広告メディア)を絞り込んでいくという意味では、データサイエンティストの属人的能力に依存しない事業モデルとなっている。この個人のセンスや能力への依存度が低い事業モデルというのは、非常に重要なポイントで、これは成功例の再現性や、データサイエンティストの人員確保という点で、大きな意味を持つと弊社ではみている。
同社のマーケティング手法の効果は、これまでのところ、かなり良好のようだ。同社の説明では、過去1年間の成果として、顧客企業のeコマース売上高は最少2.8倍から最大8.5倍増加し、増収幅の平均値としては5倍であったということだ。素直に考えれば、平均で売上5倍という実績は、非常に優秀で競争力の高い数値であると評価できよう。同社の現在のマーケティング事業の顧客は、個人企業や中小企業が多いと推測され、それゆえに売上高の増収率が大きく誇張されたものになりやすい傾向があることを考慮する必要はあるが、広告効果として素晴らしいトラックレコード(実績値)であることは間違いない。
マーケティング事業におけるターゲット顧客層は、システム事業におけるそれよりも事業規模の大きい企業を狙っているようだ。システム事業における「ショップサーブ」の顧客は個人商店や個人起業レベルの中小企業の比率が高い。これらの事業規模の企業を相手に、前述したような事業モデルで広告代理店サービスを行っても効率性が低くて事業として成り立たない可能性がある。また、顧客企業の立場から考えても、こうした個人商店レベルの企業に、月間20万円前後の広告宣伝費を支出することは難しいであろう。したがって、マーケティング事業におけるターゲット顧客層は年商100百万円以上の中堅企業クラスになっていくものと弊社ではみている。
もう1つ重要な視点は、マーケティング事業が軌道に乗っていく過程では、システム事業の顧客の内容も変化していく(あるいは変化させていく)可能性があるということだ。前述のように、同社のマーケティング事業がシステム事業のサポートという側面も有しているため、マーケティング事業の顧客がシステム事業の顧客にもなるという流れが当然できてくると想像される。そうした中堅企業の構成比が上昇してくると、システム事業の採算性も大きく改善する可能性が出てくると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(2)事業構造改革の内容と方向性
現在、Eストアー<4304>が進める事業構造改革は、一言で表現するならば「EC専業のネット広告代理店になる」ということであろう。インターネット広告代理店の業界にはサイバーエージェント<4751>やオプト<2389>、セプテーニ・ホールディングス<4293>など、すでに業界大手企業が名を連ねている。そこに同社が参入することについては不安を感じる向きがあるが、これらはECに特化している訳ではなく、また同社のサービスを追及していくと、ネット広告という領域は避けて通ることができないと弊社では考えている。顧客企業としてはネット上に店を出すことがゴールなのではなく、eコマースによって収益を上げることが目的だからだ。
同社のマーケティング事業(当時は「集客事業」)は、2006年の「ショッピングフィード」開設にまで遡る。これは商品検索サイトで文字通り「集客」機能にとどまっていた。いわゆるインターネット広告事業に進出したのは2011年6月にプレシジョンマーケティングを連結子会社化したことを契機としている。プレシジョン社は、eコマース企業にこだわらずむしろ一般のインターネット広告を取り扱っている。同社は、プレシジョン社のマーケティング事業を「既存マーケティング事業」という名称で社内的に区別している。
現在、同社が事業構造転換の中核として注力しているのは、同社本体によるeコマース企業のためのインターネット広告事業だ。同社は社内的にこれを「新規マーケティング事業」と称してプレシジョン社の「既存マーケティング事業」と区別している。
新規マーケティング事業の内容がインターネット広告代理店であるとはいえ、サイバーエージェントやオプトといった業界大手企業との直接競合を狙うわけではない。典型的な事業モデルは次のようなものだ。実際に業務を行うのはデータサイエンティストと呼ばれるスタッフで、彼らは担当するEC企業について、面談などを通して顧客のニーズを把握し、同時にサイトの分析を行う。そのうえで、顧客の目標を達成するための広告戦略を練る。その後はA案とB案の2パターンについて具体的に広告を出稿する。その後は、毎日広告の効果について分析を重ね、必要があればA案とB案の内容を少しずつ替えながら、当該顧客企業にとって最も有効な広告手法やメディアなどを探り出していく。
上記のような作業は、データサイエンティストの物理的な時間を消費するという意味で、労働集約的な手法ともいえる。一方で、A案とB案を同時に出稿して最適な出稿手法(公告の種類や対象となる広告メディア)を絞り込んでいくという意味では、データサイエンティストの属人的能力に依存しない事業モデルとなっている。この個人のセンスや能力への依存度が低い事業モデルというのは、非常に重要なポイントで、これは成功例の再現性や、データサイエンティストの人員確保という点で、大きな意味を持つと弊社ではみている。
同社のマーケティング手法の効果は、これまでのところ、かなり良好のようだ。同社の説明では、過去1年間の成果として、顧客企業のeコマース売上高は最少2.8倍から最大8.5倍増加し、増収幅の平均値としては5倍であったということだ。素直に考えれば、平均で売上5倍という実績は、非常に優秀で競争力の高い数値であると評価できよう。同社の現在のマーケティング事業の顧客は、個人企業や中小企業が多いと推測され、それゆえに売上高の増収率が大きく誇張されたものになりやすい傾向があることを考慮する必要はあるが、広告効果として素晴らしいトラックレコード(実績値)であることは間違いない。
マーケティング事業におけるターゲット顧客層は、システム事業におけるそれよりも事業規模の大きい企業を狙っているようだ。システム事業における「ショップサーブ」の顧客は個人商店や個人起業レベルの中小企業の比率が高い。これらの事業規模の企業を相手に、前述したような事業モデルで広告代理店サービスを行っても効率性が低くて事業として成り立たない可能性がある。また、顧客企業の立場から考えても、こうした個人商店レベルの企業に、月間20万円前後の広告宣伝費を支出することは難しいであろう。したがって、マーケティング事業におけるターゲット顧客層は年商100百万円以上の中堅企業クラスになっていくものと弊社ではみている。
もう1つ重要な視点は、マーケティング事業が軌道に乗っていく過程では、システム事業の顧客の内容も変化していく(あるいは変化させていく)可能性があるということだ。前述のように、同社のマーケティング事業がシステム事業のサポートという側面も有しているため、マーケティング事業の顧客がシステム事業の顧客にもなるという流れが当然できてくると想像される。そうした中堅企業の構成比が上昇してくると、システム事業の採算性も大きく改善する可能性が出てくると弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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