鴻池運輸 Research Memo(4):運輸・物流にとどまらない複合ソリューション提供が強み
[14/07/18]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
(3)特色、強み
○ワンストップで複合ソリューションを提供できる
鴻池運輸<9025>の運輸・物流サービスの特色は、「生産工程」に関連した運輸・物流サービスが多い点である。単に製品や原材料を右から左へ輸送するのではなく、「製造・生産」に関連しながら運輸・物流サービスを提供している点が、同業他社と比較した場合の特徴である。
さらに同社の最大の強みは、上記のように各種のサポート(請負)業務を顧客の製造工場や構内などにおいて複合的に提供できる点だろう。顧客側から見ても、それぞれの業務をアウトソーシングする場合、別々の企業に委託するよりは、ワンストップで提供してくれる企業があれば、そちらのほうが効率は良いはずだ。
○顧客との長い付き合い(信頼に基づいたパートナーシップ関係)
既述のように主要顧客である旧住金やサントリーとは既に50年以上の付き合いが続いている。このように長い取引が続いたのは、同社が提供する業務(サービス内容)に顧客が充分に満足した結果であり、それだけ顧客からは信頼されているという証でもある。顧客側から見れば、周辺業務を同社へアウトソーシングすることで、自身はコアコンピタンス事業に集中することができるのである。
一方で長い取引を続ける中から新たなサービス要求が出され、これに同社が応えてきたから同社の業務内容が現在のような規模に膨らんだのも事実である。同社にとっては、顧客の要求に応えながら業務内容を拡大したことで、これらの経験やノウハウが蓄積され新たな顧客に対しての横展開や縦展開が可能になっている。このような主要顧客との長い取引関係や厚い信頼関係は、一朝一夕で築けるものではなく、同社にとっては大きな財産であり強みである。
○「安全」と「品質」へのこだわり
安全と品質はどの企業にとっても重要なテーマだが、特に同社は経営の最重要テーマの1つと位置付けて以下のような施策を実施している。
安全・品質の研修をグループ全体が参加しやすいように「安全品質研修センター」を開設し、事故災害事例からの学習、危険予知訓練、フォークリフトに関する座学や実技研修などの研修を各地で開催している。
また生産工程における請負業務において顧客からの信頼を得るために「鴻池テクノ研修センター」を設置・運営している。ここでは実技実習を基本として、各種資格取得に向けた実技指導や生産ラインの工程管理技術習得に向けた実践的な研修を行っている。さらに「鴻池技術研究所」においては、次世代のテクノロジーに対する調査研究を行うと同時に、新たな物流技術、ロボット関連技術、冷凍関連技術など、物流の枠を越えたテーマについての研究開発、商品・サービス開発なども行っている。
このように同社では、目先の収益に直接関係ない「安全」や「品質」に関する調査、研究、開発などを積極的に行っているが、これが上記のような顧客との長い信頼関係につながっているとも言え、目に見えない同社の特色、強みであろう。
○その他各分野での強み、特色
(a)定温関連分野では、全国の主要な消費地に近い15ヶ所に拠点(冷凍・冷蔵倉庫)を有しているが、これらの倉庫は単なる「保管型」ではなく、「流通型」の倉庫である。これによって、全国規模で冷凍・冷蔵食品を輸送する大手顧客の要望に応えることが可能であり、中小業者ではできないことである。
さらに自動化が可能な作業については、積極的に自動倉庫を導入しており、作業の効率を高めているだけでなく作業者にも優しい。この結果、不特定多数の顧客の荷物を預かり、さらにこれらの荷物を仕分け地別に配送することが可能となっているが、これらの点も同社の定温関連分野の特色であり強みでもある。
(b)海外関連分野の特色は陸・海・空の国際複合一貫輸送サービスを提供できる点である。例えば、国内のバイヤーが様々な商品を海外から仕入れる場合、通常であれば生産工場が各地に点在しているため、国際物流は複数のルートをたどることになる。しかし同社グループを利用した場合には、各工場からの製品を同社倉庫で集約し、そこで国内の各仕向け地別にコンテナ化してから、海運・陸運によって効率的に国内倉庫へ輸送することができる。
また同社では、海上貨物・航空貨物の両方でフォワーディングに関わる通関や各種免税措置などに精通したスタッフを有しており、高品質かつスピーディな対応を行っている。
さらにこれらのサービスを一段と強化するために、同社では1984年のシンガポールを皮切りにアジア地域での拠点展開を積極的に行ってきた。特に近年では成長が見込まれるASEAN地域へ他社に先駆けて進出し、顧客企業の「チャイナ・プラスワン戦略」に対応したサービスを開発・提供しており、これも同社の特色、強みと言えるだろう。さらにメキシコに中南米で初めての拠点を開設予定だが、これも今後の同地域開拓のためであり、その展開が注目される。
(4)競合
「複合ソリューション事業」において同社が担う、原材料の受入れ・検査、構内輸送、製造工程、製品の保管・出荷などの分野ではそれぞれにサービスを提供している企業は多い。しかしこれら多くの業務を単独で一貫して、かつこれだけの規模で提供できる企業は見当らない。この点では、競合企業はないと言える。
一般的な物流においては多くの競合企業が存在する。例えば日立物流<9086>、山九<9065>、センコー<9069>などとバッティングする場合が多い。また定温物流においては、市場の成長が著しいだけに中小を含めて多くの競合企業が存在する。しかし既述のように、顧客の要望に応えて全国規模で定温物流サービスを提供できる企業は少なく、同社はトップクラスと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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(3)特色、強み
○ワンストップで複合ソリューションを提供できる
鴻池運輸<9025>の運輸・物流サービスの特色は、「生産工程」に関連した運輸・物流サービスが多い点である。単に製品や原材料を右から左へ輸送するのではなく、「製造・生産」に関連しながら運輸・物流サービスを提供している点が、同業他社と比較した場合の特徴である。
さらに同社の最大の強みは、上記のように各種のサポート(請負)業務を顧客の製造工場や構内などにおいて複合的に提供できる点だろう。顧客側から見ても、それぞれの業務をアウトソーシングする場合、別々の企業に委託するよりは、ワンストップで提供してくれる企業があれば、そちらのほうが効率は良いはずだ。
○顧客との長い付き合い(信頼に基づいたパートナーシップ関係)
既述のように主要顧客である旧住金やサントリーとは既に50年以上の付き合いが続いている。このように長い取引が続いたのは、同社が提供する業務(サービス内容)に顧客が充分に満足した結果であり、それだけ顧客からは信頼されているという証でもある。顧客側から見れば、周辺業務を同社へアウトソーシングすることで、自身はコアコンピタンス事業に集中することができるのである。
一方で長い取引を続ける中から新たなサービス要求が出され、これに同社が応えてきたから同社の業務内容が現在のような規模に膨らんだのも事実である。同社にとっては、顧客の要求に応えながら業務内容を拡大したことで、これらの経験やノウハウが蓄積され新たな顧客に対しての横展開や縦展開が可能になっている。このような主要顧客との長い取引関係や厚い信頼関係は、一朝一夕で築けるものではなく、同社にとっては大きな財産であり強みである。
○「安全」と「品質」へのこだわり
安全と品質はどの企業にとっても重要なテーマだが、特に同社は経営の最重要テーマの1つと位置付けて以下のような施策を実施している。
安全・品質の研修をグループ全体が参加しやすいように「安全品質研修センター」を開設し、事故災害事例からの学習、危険予知訓練、フォークリフトに関する座学や実技研修などの研修を各地で開催している。
また生産工程における請負業務において顧客からの信頼を得るために「鴻池テクノ研修センター」を設置・運営している。ここでは実技実習を基本として、各種資格取得に向けた実技指導や生産ラインの工程管理技術習得に向けた実践的な研修を行っている。さらに「鴻池技術研究所」においては、次世代のテクノロジーに対する調査研究を行うと同時に、新たな物流技術、ロボット関連技術、冷凍関連技術など、物流の枠を越えたテーマについての研究開発、商品・サービス開発なども行っている。
このように同社では、目先の収益に直接関係ない「安全」や「品質」に関する調査、研究、開発などを積極的に行っているが、これが上記のような顧客との長い信頼関係につながっているとも言え、目に見えない同社の特色、強みであろう。
○その他各分野での強み、特色
(a)定温関連分野では、全国の主要な消費地に近い15ヶ所に拠点(冷凍・冷蔵倉庫)を有しているが、これらの倉庫は単なる「保管型」ではなく、「流通型」の倉庫である。これによって、全国規模で冷凍・冷蔵食品を輸送する大手顧客の要望に応えることが可能であり、中小業者ではできないことである。
さらに自動化が可能な作業については、積極的に自動倉庫を導入しており、作業の効率を高めているだけでなく作業者にも優しい。この結果、不特定多数の顧客の荷物を預かり、さらにこれらの荷物を仕分け地別に配送することが可能となっているが、これらの点も同社の定温関連分野の特色であり強みでもある。
(b)海外関連分野の特色は陸・海・空の国際複合一貫輸送サービスを提供できる点である。例えば、国内のバイヤーが様々な商品を海外から仕入れる場合、通常であれば生産工場が各地に点在しているため、国際物流は複数のルートをたどることになる。しかし同社グループを利用した場合には、各工場からの製品を同社倉庫で集約し、そこで国内の各仕向け地別にコンテナ化してから、海運・陸運によって効率的に国内倉庫へ輸送することができる。
また同社では、海上貨物・航空貨物の両方でフォワーディングに関わる通関や各種免税措置などに精通したスタッフを有しており、高品質かつスピーディな対応を行っている。
さらにこれらのサービスを一段と強化するために、同社では1984年のシンガポールを皮切りにアジア地域での拠点展開を積極的に行ってきた。特に近年では成長が見込まれるASEAN地域へ他社に先駆けて進出し、顧客企業の「チャイナ・プラスワン戦略」に対応したサービスを開発・提供しており、これも同社の特色、強みと言えるだろう。さらにメキシコに中南米で初めての拠点を開設予定だが、これも今後の同地域開拓のためであり、その展開が注目される。
(4)競合
「複合ソリューション事業」において同社が担う、原材料の受入れ・検査、構内輸送、製造工程、製品の保管・出荷などの分野ではそれぞれにサービスを提供している企業は多い。しかしこれら多くの業務を単独で一貫して、かつこれだけの規模で提供できる企業は見当らない。この点では、競合企業はないと言える。
一般的な物流においては多くの競合企業が存在する。例えば日立物流<9086>、山九<9065>、センコー<9069>などとバッティングする場合が多い。また定温物流においては、市場の成長が著しいだけに中小を含めて多くの競合企業が存在する。しかし既述のように、顧客の要望に応えて全国規模で定温物流サービスを提供できる企業は少なく、同社はトップクラスと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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