城南進学研究社 Research Memo(3):乳幼児向け教育を主たる成長エンジンに位置付け
[14/07/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■乳幼児向け教育
城南進学研究社<4720>は少子化による対象人口の減少が避けられない状況において、乳幼児期からの顧客囲い込みを強化する方針を明確にした。現在同社の乳幼児対応としては乳幼児教室の「くぼたのうけん」、英語教育の「ズー・フォニックス・アカデミー」、認証保育所の「城南ルミナ保育園」がある。このうち、保育園は多分に実験的な要素もあって、当面は事業拡張の計画はないが、くぼたのうけんとズー・フォニックス・アカデミーについては積極的に展開する方針を掲げている。
(1)くぼたのうけん
くぼたのうけんは脳科学者久保田競博士の夫人・久保田カヨ子氏が考案・実践した0歳児からの育児教室だ。いわゆる「お受験」(幼稚園・小学校の受験)を対象としたものではなく、「賢い脳を育て、頭が良い子を育てる『育脳教室』」という性格のものだ。
同社は2009年からくぼたのうけんの教室を展開し、現在、目黒、自由が丘、横浜の3校を運営(すべて直営)している。事業規模は年間入会者数が約600人、年商が90百万円で安定的に推移している。採算的にも黒字が確保されている模様だ。
過去5年間で3校の展開というペースからは、同社が「くぼたのうけん」ブランドを大切に育て上げようとしてきたことがうかがえる。コンセプトが「お受験」とはまったく異なるため、効果(結果)が「お受験」の幼児教室ほど明確ではなく、良さを理解してもらうことに、じっくりと時間をかけてきたものと弊社ではみている。同社は久保田夫妻の講演会やセミナーを随時開催して知名度向上やコンセプトの浸透を図ってきた。
今回、同社は機が熟したと見て、フランチャイズ(FC)展開化を明言した。一気に数を追うような形での展開ではなく、あくまで「くぼたのうけん」のクオリティとブランドを維持することを優先しながらのFC展開というスタンスだ。したがって、現状、理想的なフランチャイジーとしては、地方の有力企業によるメガフランチャイジーを1つの典型例としてイメージしている。人材確保やその教育のためにある程度の資金力が必要となると考えていることが背景にあると思われる。
(2)英語教育ズー・フォニックス・アカデミー
同社は2013年10月に(株)ジー・イー・エヌを連結子会社化した(株式保有比率75%)。ジー・イー・エヌは「Zoo-phonics method」に基づいた英語教室を、直営・FC合わせて16校を展開している。また、米国の権利元から「ズー・フォニックス(Zoo-phonics)」の日本での使用権を取得しており、国内で唯一、「Zoo-phonics」の名称の利用が許されている。
ズー・フォニックス・アカデミーは乳幼児及び小学生を対象とした英語教室であり、くぼたのうけんと同様、長期的な顧客囲い込み戦略の有効な武器となることが期待されている。小学校の英語教育の低年齢化や、バイリンガル育成に大きな潜在需要があることから、この分野は数少ない成長分野とされている。
ジー・イー・エヌの業況は、直営4校(うち1校はプリスクール)とFC12校で合計1,600名の在籍者を擁し、年商は232百万円(2015年3月期予想ベース)だ。採算的には黒字が確保されているが、利益額は数百万円の規模で、今後の改善余地は大きい状況にある。
城南進研グループとしては、ズー・フォニックス・アカデミーについてもFC展開を強化し、年間3教室のペースでの拡大を計画している。これにおいても、くぼたのうけん同様、有力企業によるメガフランチャイジー展開を理想と考えているようだ。外国人教師の採用、育成や設備投資などで、初期投資額が比較的大きくなることが背景にあると考えられる。また、同社グループから見ても、ノウハウの伝授や経営管理の面で、複数のFC教室をバラバラに管理するよりも、メガフランチャイジー企業の本体を一括で管理する方が効率的になるというメリットがあると言えよう。現状では具体的なFC展開等についての開示はないが、現在のFCの分布などを見ると、中部・関西の大都市圏など未開拓のエリアが広く残されており、潜在的需要はかなり大きいと期待される。
弊社では、くぼたのうけんやズー・フォニックス・アカデミーを活用して、子供の低年齢時から長期顧客として囲い込もうという戦略には説得力があり、有効であると評価している。また、くぼたのうけん及びズー・フォニックス・アカデミーのブランド力の高さや、競合相手との相対的な立ち位置の違いが差別化要因となっている点も、大きな武器になると考えている。したがって、それぞれの事業において集客を実現し業容を拡大させるという点においては成功可能性が高いと思われる。
しかし、長期囲い込みという戦略については、その実効性において、若干の疑問を抱いている。それは、乳幼児向けの「くぼたのうけん」「ズー・フォニックス・アカデミー」と、同社の小中学生向けプログラム(城南コベッツ)との間に、関連性がないためだ。例えば、ズー・フォニックス・アカデミーで英語の基礎を身に着けた小学生がもっと英語を磨きたいと思っても同社にはその受け皿が用意されていない。くぼたのうけんで頭脳の基礎を磨いた子供にとって、(トップクラスの中学受験生をカバーするのではなく)「学校の授業をしっかり理解したい」という生徒をメインのターゲットとする城南コベッツ(個別指導塾)は、ニーズがかみ合わない可能性がある。長期囲い込み戦略を画に描いた餅に終わらせないための対応が不可欠だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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城南進学研究社<4720>は少子化による対象人口の減少が避けられない状況において、乳幼児期からの顧客囲い込みを強化する方針を明確にした。現在同社の乳幼児対応としては乳幼児教室の「くぼたのうけん」、英語教育の「ズー・フォニックス・アカデミー」、認証保育所の「城南ルミナ保育園」がある。このうち、保育園は多分に実験的な要素もあって、当面は事業拡張の計画はないが、くぼたのうけんとズー・フォニックス・アカデミーについては積極的に展開する方針を掲げている。
(1)くぼたのうけん
くぼたのうけんは脳科学者久保田競博士の夫人・久保田カヨ子氏が考案・実践した0歳児からの育児教室だ。いわゆる「お受験」(幼稚園・小学校の受験)を対象としたものではなく、「賢い脳を育て、頭が良い子を育てる『育脳教室』」という性格のものだ。
同社は2009年からくぼたのうけんの教室を展開し、現在、目黒、自由が丘、横浜の3校を運営(すべて直営)している。事業規模は年間入会者数が約600人、年商が90百万円で安定的に推移している。採算的にも黒字が確保されている模様だ。
過去5年間で3校の展開というペースからは、同社が「くぼたのうけん」ブランドを大切に育て上げようとしてきたことがうかがえる。コンセプトが「お受験」とはまったく異なるため、効果(結果)が「お受験」の幼児教室ほど明確ではなく、良さを理解してもらうことに、じっくりと時間をかけてきたものと弊社ではみている。同社は久保田夫妻の講演会やセミナーを随時開催して知名度向上やコンセプトの浸透を図ってきた。
今回、同社は機が熟したと見て、フランチャイズ(FC)展開化を明言した。一気に数を追うような形での展開ではなく、あくまで「くぼたのうけん」のクオリティとブランドを維持することを優先しながらのFC展開というスタンスだ。したがって、現状、理想的なフランチャイジーとしては、地方の有力企業によるメガフランチャイジーを1つの典型例としてイメージしている。人材確保やその教育のためにある程度の資金力が必要となると考えていることが背景にあると思われる。
(2)英語教育ズー・フォニックス・アカデミー
同社は2013年10月に(株)ジー・イー・エヌを連結子会社化した(株式保有比率75%)。ジー・イー・エヌは「Zoo-phonics method」に基づいた英語教室を、直営・FC合わせて16校を展開している。また、米国の権利元から「ズー・フォニックス(Zoo-phonics)」の日本での使用権を取得しており、国内で唯一、「Zoo-phonics」の名称の利用が許されている。
ズー・フォニックス・アカデミーは乳幼児及び小学生を対象とした英語教室であり、くぼたのうけんと同様、長期的な顧客囲い込み戦略の有効な武器となることが期待されている。小学校の英語教育の低年齢化や、バイリンガル育成に大きな潜在需要があることから、この分野は数少ない成長分野とされている。
ジー・イー・エヌの業況は、直営4校(うち1校はプリスクール)とFC12校で合計1,600名の在籍者を擁し、年商は232百万円(2015年3月期予想ベース)だ。採算的には黒字が確保されているが、利益額は数百万円の規模で、今後の改善余地は大きい状況にある。
城南進研グループとしては、ズー・フォニックス・アカデミーについてもFC展開を強化し、年間3教室のペースでの拡大を計画している。これにおいても、くぼたのうけん同様、有力企業によるメガフランチャイジー展開を理想と考えているようだ。外国人教師の採用、育成や設備投資などで、初期投資額が比較的大きくなることが背景にあると考えられる。また、同社グループから見ても、ノウハウの伝授や経営管理の面で、複数のFC教室をバラバラに管理するよりも、メガフランチャイジー企業の本体を一括で管理する方が効率的になるというメリットがあると言えよう。現状では具体的なFC展開等についての開示はないが、現在のFCの分布などを見ると、中部・関西の大都市圏など未開拓のエリアが広く残されており、潜在的需要はかなり大きいと期待される。
弊社では、くぼたのうけんやズー・フォニックス・アカデミーを活用して、子供の低年齢時から長期顧客として囲い込もうという戦略には説得力があり、有効であると評価している。また、くぼたのうけん及びズー・フォニックス・アカデミーのブランド力の高さや、競合相手との相対的な立ち位置の違いが差別化要因となっている点も、大きな武器になると考えている。したがって、それぞれの事業において集客を実現し業容を拡大させるという点においては成功可能性が高いと思われる。
しかし、長期囲い込みという戦略については、その実効性において、若干の疑問を抱いている。それは、乳幼児向けの「くぼたのうけん」「ズー・フォニックス・アカデミー」と、同社の小中学生向けプログラム(城南コベッツ)との間に、関連性がないためだ。例えば、ズー・フォニックス・アカデミーで英語の基礎を身に着けた小学生がもっと英語を磨きたいと思っても同社にはその受け皿が用意されていない。くぼたのうけんで頭脳の基礎を磨いた子供にとって、(トップクラスの中学受験生をカバーするのではなく)「学校の授業をしっかり理解したい」という生徒をメインのターゲットとする城南コベッツ(個別指導塾)は、ニーズがかみ合わない可能性がある。長期囲い込み戦略を画に描いた餅に終わらせないための対応が不可欠だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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