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アールシーコア CORPORATE RESEARCH(3/9):41の展示場(拠点)は全て単独展示場

注目トピックス 日本株

■定性アプローチ

◆展示場の“異端”

41の展示場(拠点)は全て単独展示場であり、いわゆる合同の住宅展示場、住宅公園などにBESSの家はない。

2014年4月末時点での展示場(拠点)数は41。展示されているログハウス・自然派住宅は175棟で1拠点あたりの平均棟数は4.3。ここ2年間で新たに展示場として加わったのは、富山(富山県)(販社・4棟)、藤沢(神奈川県)(直販・5棟)、福岡西(福岡県)(販社・5棟)、熊谷(埼玉県)(販社・4棟)、高松(香川県)(販社・3棟)、東葛(千葉県)(販社・3棟)である。

藤沢展示場を開くまで、関東地方には茨城県(2拠点)、栃木県、群馬県(各1拠点)に展示場があったものの、東京圏と呼ばれる東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県には、代官山の「BESSスクエア」(直販・6棟)1か所しか無かった。ここ2年間でこのエリアに3拠点が新設されたことは特徴的である。尚、アールシーコア<7837>は販社及び拠点数の拡大を重点項目の一つと考えており、独自に104のエリアを拠点及び拠点候補エリアと選定している模様。

また、昨年度、それまであった小規模販社を意味した特約店制度を廃止し、特約店も拠点における棟数増加などを条件に販社に格上げを推進している。これは、販社の営業体質の強化、効率強化を意図したものである。現在、具体的な開設スケジュールの決定した拠点、スケジュールは未確定ながらも開設が決定している拠点が4拠点あり、その段階で拠点数は45と、中期経営計画の50に近づくことから、拠点数という体制項目の目標達成の蓋然性は高まったといえる。

現在の展示場(拠点)数41という数字が大きいか小さいかの判断についてであるが、筆者は相対的な売上に占める数としては大きいと考えている。

SC社の調べによると全国の合同住宅展示場数は2014年4月末時点で全国に401か所(うち全国住宅展示場協議会加盟は216か所)存在するが、そのうち37か所は棟数が1棟であり、実際に合同展示場と認識できるのは364か所である。BESSの41拠点という数字はその11%程度に相当する。この拠点数は、同社の売上規模との比較で、とても大きいものだということが分かる。また都道府県のカバー率であるが、合同展示場は47都道府県のうち45都道府県に存在するが、BESSの展示場も33都道府県を既にカバーしている。

住宅販売大手3社の2014年4月末時点での合同展示場への出展棟数は、SC社の集計によると、大和ハウス223棟(うち、木造14棟)、積水ハウス287棟(うち、木造127棟)、住友林業296棟(全て木造)となっており、BESSの175棟という数字の大きさが分かる。(大和ハウスは他に「まちなかジーヴォ」という販売目的の単独モデルルームを75棟所有している。)


◆営業姿勢の“異端”

通常、他社が行う展示場に出向いた顧客に対するアプローチは、できるだけ成約までの時間(リードタイム)を短くすることを目的として行われるが、BESSのアプローチは全く同業他社と異なる。何度も単独展示場に足を運んだ家族が、その家の中での暮らし、生活というものを十分にイメージして「ここで暮らしたい」と思い、営業員に相談したところからそれは始まる。同社の調査によると、「BESS」契約者の44%が同社の展示場を訪れた時点では「(住宅購入の)計画はあるがかなり先」と考えていたという。また、「2〜3年のうちに建てる計画」も28%、つまり、72%の契約者は具体的な購入計画のないままに“展示場に遊びに来た人”であったのだ。

そのため、同社の調査によると、初めて展示場を訪れてから成約までに至るリードタイムが2年以上かかった契約者が20%、1年超〜2年以内の契約者が13%いたという。他社では考えられないこのリードタイムの長さを何も問題とせず、むしろ喜んできたふしがある。「農耕型営業」と自らが呼ぶその姿勢がここにある。

また、この営業姿勢は単独展示場の在り方とも大きく関わっている。ログハウス、自然派住宅を木々や草花が取り囲む展示場は、テーマパークのような趣(おもむき)がある。その中に建つBESSの家を好きになるかどうかという「感性」の判断が全てであると同社は考えている。

合同展示場とはつまるところ、「住宅の比較をしに行く場所」である。そのため、営業者はその機能性、細部の他社との差別化をアピールすることに注力する。しかし、RCC社は他社との相対的な比較や細部の機能説明というアプローチを行うことは同社の営業スタイルではないということを、教育を通じて営業員に教えている。単独展示場は比較をする場所ではない。そこに流れる全体的な雰囲気・時間を訪問者が好きになれるか、この家で暮らしを楽しむイメージが沸いてくるかが最も重要なことになる。実際に同社の調査によると62%の契約者が、「(住宅購入に際して)他社と比較しなかった」と答えている。これが単独展示場形式にこだわる理由であろう。

この営業スタイルは一見、非効率的なのでないかと思われるが、同社の資料によるとBESSの営業員一人あたりの年間契約件数は2014年3月期に平均7.0棟であったという(2013年3月期は平均8.0棟)。同社資料には住宅産業研究所の調査数字として、業界の平均数は4.5棟(2012年度住宅メーカー平均)とある。リードタイムの長さと平均契約件数が逆相関という興味深い数字である。


◆ビジネス・フレームワークの確立

BESSの契約者に共通している価値観とは「家を富の象徴や資産価値として考えていない」ということである。そして、家は暮らしを楽しむための道具に過ぎないという、本来は当たり前のことを認識している。同社の資料によると5割ほどの契約者が薪ストーブをオプションで購入するという。メンテナンスに手間のかかる同オプションを購入するというのは、自ら掃除をしてくれるエアコンや床に置いておけば勝手に動き回ってくれる掃除機がある現代において、そのような「機能主義」に価値を置かない人達が「BESSの家」を求めるということであろう。

ここに、「単独の展示場(拠点)を増やし、新規来場者数を増加させる→そこで「農耕型営業」を行う→RCC社が提唱する価値観に共鳴する人間が新規来場者数の中に一定割合で存在し、契約に結びつく」という非常にシンプルなビジネス・モデルがある。

このモデルが奏功しているのかどうかを、過去10年間の新規来場者数と契約高から推察する。

このグラフを分布図にして近似線を求めると、決定係数(R2)が0.89と10個のサンプルでは考えられないくらいの高い数値が計測される。同社がここまでの連関を意図した、しないに関わらず、結果的に両者には極めて高い相関が存在し、このビジネス・フレームワークはこの10年間十分に機能したことが考えられる。


◆フレームワークを支えた2つの要因

新規来場者が最終的に一定の成約率で契約にまで結びついたこのフレームワークを支えた他の要因としては、完成保証、受け渡し後の保証という「保証制度の充実」と規格型住宅の採用により、カタログに価格が明示されているという「価格透明性」が考えられる。


◆カタログによるキット価格の開示

BESSの家は、商品ラインナップそれぞれが土地の広さに応じられるよう、3〜5種類のバリュエーションがあるが、それらの標準価格がカタログに記されている。他のハウスメーカーにおいても「規格商品」として土地の間取りに合わせたさまざまなバリュエーションを坪当たりの価格別に分けてカタログに載せているところが多いが、標準仕様からフローリング、壁紙、キッチンや浴室回りを変更することにより、結局は予定していた金額を大きく超過してしまう場合が多いと思われる。対して同社の商品は、商品カタログのラインナップの中からユーザーに選んでもらう規格商品が中心(「ワンダーデバイス」についてはデバイスの組み合わせが可能)であり、「標準モデル」の採用により、変更の余地があまりない。そのため、予定していた金額と最終の出来上がり価格に差が生じないという透明性がある。(2013年度の標準モデル採用率は99%)

スプリングキャピタル株式会社 井上 哲男



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