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きちり Research Memo(2):「KICHIRI」など自社ブランド店舗と提携企業のブランド活用店舗を展開

注目トピックス 日本株
■事業概要

きちり<3082>の事業セグメントは、飲食事業とその他事業に区分されており、現時点では売上高の99%を飲食事業で占めている。主な店舗には関西、首都圏で展開する居酒屋「KICHIRI」と首都圏のショッピングモール内で展開するレストラン「いしがまやハンバーグ」などの自社ブランド店舗のほか、後述するPFS事業で提携した企業のブランドを活用した店舗が含まれる。2014年6月末時点の地域別店舗数では、関西で42店舗(前期末比1店舗減)、首都圏で28店舗(同3店舗増)とまだ関西のほうが多いが、売上高ベースでは関西と首都圏でほぼ半々の比率となっている。

主力店舗である「KICHIRI」は女性客を主要ターゲットに、高品質な料理とおしゃれ感を演出した店舗づくり、「おもてなし」の接客を重視することで、関西圏で高い支持を得たあと、2006年より東京に進出を果たしている。また、平均予算で3,500円前後と比較的低価格帯で若者客を主要ターゲットとした店舗となる「Casual Dining KICHIRI」と、平均予算5,000円前後でラグジュアリー感を持たせ、企業の接待ニーズなどにも応えることができる「新日本様式 KICHIRI」と2つの業態で展開している。

その他事業の売上高の大半は今後の成長が期待されるPFS事業となる。PFS事業は、ブランド・コンテンツ活用型とクラウドサービス展開型の2つの事業モデルに分けられている。

○ブランド・コンテンツ活用型事業

ブランド・コンテンツ活用型事業とは、健康分野やエンターテイメント、第1次産業分野などで強いブランド・コンテンツを持った企業と業務提携し、レストランビジネスを展開することによって、当該ブランド価値を高めていく新たな販促手法。2012年に東京丸の内でオープンした「タニタ食堂」の成功で一躍脚光を浴びた。提携先企業にとっては店舗運営を同社に任せることで、店舗運営リスクを抱えることなく、ブランド力の向上が期待できることになる。

店舗運営に関しては、既存のKICHIRIプラットフォームを活用するため、業務管理コストや食材の仕入コストなどを独力で店舗運営するよりも低く抑えられること、また、ブランド価値訴求型の店舗であるため、価格も維持しやすく、収益を維持しやすいビジネスモデルになっているのも同事業の特徴となっている。

2013年6月期はタニタ食堂の2店舗目を東京・五反田(NTT東日本関東病院内)に開店したほか、イタリアのファッションブランド「Orobianco(オロビアンコ)」と本格イタリアンレストランを、精米機で世界トップシェアのサタケと「おむすびのGABA」を、福岡「はかた地鶏」の生産者である福栄組合とアンテナショップ「福栄組合」のプロデュース並びに店舗運営で提携した。

契約内容は一律ではないが、店舗運営コストなど1店舗目について提携先が負担するケースが多い(同社の売上高としてはプラットフォームの使用料を計上)。また、2店舗目以降はきちりが直営店舗として展開していくことも可能となっている。提携先企業にとっては店舗を増やして収益を拡大するのが目的ではなく、あくまでもブランドの価値向上が目的である場合が多いためだ。なお、売上高に関しては、きちりが直営で店舗運営費用を負担する場合は、飲食事業に含まれることになる。

○クラウドサービス展開型事業

クラウドサービス展開型事業とは、きちりがすでに自社で構築しているバックオフィス(会計処理、給与管理等)やバックヤード(仕入・物流システム)、バックアップ企業(銀行や取引企業等)などのプラットフォームを、「外食向けクラウド」として安価な料金で提供するサービスのこと。自社のプラットフォームを同業他社に貸し出すビジネスモデルは業界でも同社が初めてとされる。

同サービスを利用するメリットは、自社で同様のシステムを構築するよりも低コスト・低リスクで利用できるため、安定収益を迅速に確立することができる点が挙げられる。例えば、30〜50店舗規模の飲食チェーン店が独自で食材を調達するよりも、きちりのプラットフォームを利用して共同調達をしたほうが調達コストは低くなる。プラットフォーム参画企業店舗数分のスケールメリットが生かせるためだ。特に、人件費だけでなく、食材、物流コストの上昇が続くなかで、中小規模の外食チェーン店の収益環境は厳しさを増しており、PFS事業の潜在需要は大きいと思われる。

2014年6月末で契約店舗数は首都圏を中心に約100店舗(社数では5社)となっており、きちりの直営店舗70店舗と合わせて約170店舗のバイイングパワーを備えたプラットフォームとなっている。同プラットフォームシステムに関しては300店舗程度までの処理能力があるため、追加コストも発生せず、利益率の高いビジネスモデルになっているのが特徴と言える。なお、サービス料金に関しては各企業によって店舗数やニーズが変わってくるため、個別対応での料金体系となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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