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アイ・エス・ビー Research Memo(12):「ITサービス事業へのシフト」を中計の最重要課題と位置付け【2】

注目トピックス 日本株

■中期経営計画と次代の成長を担う新事業

(2)新事業の動向

(c)L‐Share(エル・シェア)

医療現場ではCTやMRI、内視鏡など様々な機器を通じて画像が撮影され、診断・治療に活用されている。これら医療現場で利用されるデジタル画像については、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)という標準規格がある。また、この画像をオンラインでやり取りするためのDICOM準拠のサーバーとビューアを軸に構成される医療用画像保管・通信システムとしてPACS(Picture Archiving and Communication System)というものが運用されている。たとえば、MRIで撮影した画像は、病院内に設置されたサーバー(PACSサーバー)に保存され、院内LANでネットワーク化され活用されている。現状、各医療機器においてはDICOM化するためのライブラリソフトは、サードパーティのソフトや医療機器メーカーの自社製ソフトなどがそれぞれの医療機器に組み込まれているため、価格、汎用性、サポート体制、カスタマイズ性などの面で多々問題が指摘されている状況だ。また、同じ医療機器であっても眼科系、歯科系機器はDICOM化対応が進んでいない分野となっている。

同社では、医療用画像データに関する各種ITソフト/サービスを「L-Share」というブランド名で展開している。これは、画像ビューワー(閲覧ソフト)やライブラリ、ゲートウエイ、サーバーなどのシステムを構築する製品群の総称である。

同社はこれらL-Share製品群について、「Small Medical Solution」をコンセプトに、医療機器メーカーにL-Shareライブラリの販売攻勢をかけている。L-Shareの特徴は安価、サービスの即時性、必要な部分のみの提供、迅速なサポート、カスタマイズ性などである。例えばDICOMについては、前述したように価格、汎用性、サポート体制、カスタマイズ性などの面で問題点が指摘されている。L-Shareライブラリは、これらの問題点の克服を目指して開発されている。PACS自体は画像の管理・通信システムであるがL-Share pPACSはPACSの改善を目指すものではない。しかし、L-Share pPACSサービスの場合は、そのコンパクトさから可搬性に優れ、災害現場や検診車、在宅医療などのネットワークレス環境での利用を目的としている。

L-Share viewerはタブレットの閲覧ソフトだが、DICOM規格準拠であっても元の撮影機器よって閲覧ソフトが異なるような現状に対して、DICOM規格画像であればすべて閲覧可能な環境を提供できる。

同社が「Small」というコンセプトでL-Shareを打ち出している意味合いとしては、安価にサービスを提供という意味の他に、DICOM化へのSmall Startという意味が込められている。具体的には、小規模クリニックで、非DICOM機器が多く設置されている場合でも、L-Share製品を導入することで低コストかつ簡単にDICOM化が実現可能となる。また、前述した眼科系や歯科系装置のメーカーにとっても、より低コストでDICOMライブラリの供給が受けられることになる。さらには、災害時のオンサイトの救護所や検診車、救急車といった閉鎖系の状況下でもL-Share製品の適用でDICOM化が図れることになる。

L-Share事業の収益モデルは、「販売+エンジニアリング+保守」という、3つの組み合わせから成り立つ見通しだ。最初のステップとして現状取り組んでいるのはL-Shareライブラリの販売だ。これは医療機器への組込みソフトであり、現在複数の医療機器メーカーと商談が進んでいる模様だ。課金方式としては、ソフトウェアの売切りや台数に応じた従量制課金など、顧客ニーズに合わせて柔軟に対応可能となっている。また、L-ShareGateWayやL-SharepPACSなどを組み合わせた病院内のDICOM化サービスがある。

次のステップとしてはクラウドサービスがある。これはL-Share pPACSを活用した画像の保守管理及びタブレットへの画像提供というものであるが、クラウドサービスの段階では、エンジニアリングと保守の収益が入ってくることになる。クラウドサービスの活用のされ方としては、在宅医療を念頭に開発・改良・販売が進められている状況だ。在宅医療は国の医療費負担の軽減や病床数の問題などを解決するための有効な方策として推進されているが、市場としての本格拡大はこれからだが、中長期的には大きな市場に成長するとみられている。L-Share viewerは無償でApple Storeなどで配布されている。viewerだけでは課金できないが、これでL-Shareの認知度が高まり、他のL-Share製品への需要につながるという効果は期待できよう。

L-Share製品の販売目標は2014年12月期が5,600千円、中期的には50,000千円〜80,000千円としている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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