朝日ライフアセット速水氏、「無印良品」は成熟化する先進国だけでなく新興国でも共感(3)
[14/10/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
朝日ライフ アセットマネジメントの『SRI社会貢献ファンド(愛称「あすのはね」)、チーフファンドマネージャー速水禎氏は、同投資の先駆けとして、R&I(格付け投資情報センター)が毎年発表するファンド大賞で、SRI・環境関連ファンドにおいて最優秀ファンド賞2014年まで5年連続を受賞している。8月末現在での過去1年のパフォーマンスも+22.7%と好調で、同期間のTOPIX+15.5%を上回って推移している。
「あすのはね」の好パフォーマンスの理由は事業の魅力度を徹底的に分析すること、その事業の中での競争優位性がどこにあるのかを見出す力量と言えそうだ。また、ビジネスを通じて社会貢献できる企業の中にこそ、高い収益性を持続できる企業でを見いだせるという独特の視点は、このファンドの真骨頂であろう。
2014年8月末現在の「あすのはね」組み入れ比率2.9%%の良品計画<7453>。速水氏は同社が過去の二度のV字回復で培った、小売業としての真の競争力について、以下のように分析している。
■良品計画がV字回復で培った真の競争力
良品計画は1990年代における国内の消費不況の中で、数少ない勝ち組企業と評価され、「無印神話」とまで言われながら成長を続けましたが、2001年2月期に会社設立以来初の減益となり、翌年には利益半減といった業績不振に陥りました。木内前社長からバトンを渡された松井社長(当時)の下で経営改革に取り組み、2008年2月期には売上・利益ともに過去最高となるV字回復を遂げることに成功しました。しかし、2009年2月期に起きたリーマンショックによる消費不振の影響を受け、その後2年間再び業績低迷が続きました。松井氏の後任となった金井社長(現任)の指揮の下、2011年2月期には再び売上・利益ともに最高となり、2度目のV字回復を実現しました。業績不振からの脱却を2度経験することで、同社には業績回復を再現する仕組みが出来上がりつつあると考えられます。
業績不振に陥った原因には、過去の成功体験によるおごり、社内の縦割り組織構造、業績不振による目先の対応、ブランドの弱体化、店舗の過度の大型化、組織を動かす仕組みと風土の欠如、強力な競合店の台頭などがあげられています。これに対して、松井、金井両社長は、従来現場担当者の経験と勘に頼っていた業務運営方法を、「仕組化」「標準化」「見える化」といった方法に改革していくことで、業績回復を遂げていきました。具体的には、商品開発の一元管理と商品開発期間の短縮化、出店基準の明確化、店舗運営の効率化、生産・在庫管理プロセスの改善、情報システムの構築、全社的コスト構造の抜本的見直しなどです。同社では業績不振に陥るたびに、小売業として当たり前のことを実直に積み重ねていくことで、業績回復につなげていきました。
近年、良品計画が注力しているのは、国内だけでなく海外も含めたグローバルでの製造・調達・物流・在庫管理の強化です。小売業の経営にとっては売れ筋商品の見極めと同時に、在庫管理能力が極めて重要です。同社では消費者の嗜好の多様化や商品の陳腐化が早い事業環境の中で、売れる商品を、売れるときに、売れる場所で、売れる価格で、売れる数量を提供してくために、ITシステムや物流の分野に重点投資を行い、小売業としての基礎体力を着実に向上させてきました。売れ筋商品の欠品による機会損失を減らし、売れ残り在庫を減らし、値下げを抑制することによって、業績を着実に向上させています。
良品計画の経営改革の特徴は、社外の優れた経営手法を取り入れながら、学んだ知恵を自社流に進化させていくことにあります。例えば、社外取締役として招聘した衣料品小売業の経営者からは、店舗開発などの業務の標準化を学び、また製造業の経営者からは工場見学などを含め、生産工程での効率化などについて学んでいます。良品計画の現在の取締役会は、社内取締役6名と社外取締役3名から構成されています。社外取締役の本来の役割は、他の取締役が会社内部の論理を優先するなど株主の利害と一致しないような意思決定をしないか、経営を監督することにあります。同社の社外取締役は本来の機能に加えて、業績回復に向けた経営改革プロセスで重要なアドバイザー役も果たしており、他社の知恵に学ぶ仕組みが同社のコーポレートガバナンスの中に組み込まれ、同社の競争力を支えていると言えるでしょう。
地球上の人口増加と経済がグローバル化する中で、地球環境、食糧、水資源など多くの課題を抱える現代社会にあって、簡素な生活美を追求する「無印良品」のブランド価値は、成熟化する先進国だけでなく新興国でも共感をもって受け入れられていく余地が大きいと考えられます。経営改革によって小売業の基礎的体力を着実に向上させている良品計画は、中長期的に持続的な成長が見込まれる企業のひとつになると考えられます。
<FA>
「あすのはね」の好パフォーマンスの理由は事業の魅力度を徹底的に分析すること、その事業の中での競争優位性がどこにあるのかを見出す力量と言えそうだ。また、ビジネスを通じて社会貢献できる企業の中にこそ、高い収益性を持続できる企業でを見いだせるという独特の視点は、このファンドの真骨頂であろう。
2014年8月末現在の「あすのはね」組み入れ比率2.9%%の良品計画<7453>。速水氏は同社が過去の二度のV字回復で培った、小売業としての真の競争力について、以下のように分析している。
■良品計画がV字回復で培った真の競争力
良品計画は1990年代における国内の消費不況の中で、数少ない勝ち組企業と評価され、「無印神話」とまで言われながら成長を続けましたが、2001年2月期に会社設立以来初の減益となり、翌年には利益半減といった業績不振に陥りました。木内前社長からバトンを渡された松井社長(当時)の下で経営改革に取り組み、2008年2月期には売上・利益ともに過去最高となるV字回復を遂げることに成功しました。しかし、2009年2月期に起きたリーマンショックによる消費不振の影響を受け、その後2年間再び業績低迷が続きました。松井氏の後任となった金井社長(現任)の指揮の下、2011年2月期には再び売上・利益ともに最高となり、2度目のV字回復を実現しました。業績不振からの脱却を2度経験することで、同社には業績回復を再現する仕組みが出来上がりつつあると考えられます。
業績不振に陥った原因には、過去の成功体験によるおごり、社内の縦割り組織構造、業績不振による目先の対応、ブランドの弱体化、店舗の過度の大型化、組織を動かす仕組みと風土の欠如、強力な競合店の台頭などがあげられています。これに対して、松井、金井両社長は、従来現場担当者の経験と勘に頼っていた業務運営方法を、「仕組化」「標準化」「見える化」といった方法に改革していくことで、業績回復を遂げていきました。具体的には、商品開発の一元管理と商品開発期間の短縮化、出店基準の明確化、店舗運営の効率化、生産・在庫管理プロセスの改善、情報システムの構築、全社的コスト構造の抜本的見直しなどです。同社では業績不振に陥るたびに、小売業として当たり前のことを実直に積み重ねていくことで、業績回復につなげていきました。
近年、良品計画が注力しているのは、国内だけでなく海外も含めたグローバルでの製造・調達・物流・在庫管理の強化です。小売業の経営にとっては売れ筋商品の見極めと同時に、在庫管理能力が極めて重要です。同社では消費者の嗜好の多様化や商品の陳腐化が早い事業環境の中で、売れる商品を、売れるときに、売れる場所で、売れる価格で、売れる数量を提供してくために、ITシステムや物流の分野に重点投資を行い、小売業としての基礎体力を着実に向上させてきました。売れ筋商品の欠品による機会損失を減らし、売れ残り在庫を減らし、値下げを抑制することによって、業績を着実に向上させています。
良品計画の経営改革の特徴は、社外の優れた経営手法を取り入れながら、学んだ知恵を自社流に進化させていくことにあります。例えば、社外取締役として招聘した衣料品小売業の経営者からは、店舗開発などの業務の標準化を学び、また製造業の経営者からは工場見学などを含め、生産工程での効率化などについて学んでいます。良品計画の現在の取締役会は、社内取締役6名と社外取締役3名から構成されています。社外取締役の本来の役割は、他の取締役が会社内部の論理を優先するなど株主の利害と一致しないような意思決定をしないか、経営を監督することにあります。同社の社外取締役は本来の機能に加えて、業績回復に向けた経営改革プロセスで重要なアドバイザー役も果たしており、他社の知恵に学ぶ仕組みが同社のコーポレートガバナンスの中に組み込まれ、同社の競争力を支えていると言えるでしょう。
地球上の人口増加と経済がグローバル化する中で、地球環境、食糧、水資源など多くの課題を抱える現代社会にあって、簡素な生活美を追求する「無印良品」のブランド価値は、成熟化する先進国だけでなく新興国でも共感をもって受け入れられていく余地が大きいと考えられます。経営改革によって小売業の基礎的体力を着実に向上させている良品計画は、中長期的に持続的な成長が見込まれる企業のひとつになると考えられます。
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