伊藤忠エネクス Research Memo(8):ROEは過去2年間で急速に改善
[14/10/16]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■財務分析と業績見通し
(1)財務分析
伊藤忠エネクス<8133>のROE及びROAの過去の推移を見ると、ROEは6%台で推移していたが、リーマンショックの影響などで4%台前半に落ち込んだ。そこから過去2年間は急速に改善し、2014年3月期実績では7.4%に達し、過去10年間で最高値を更新した(2005年3月期は当期利益がマイナス)。同期間のROA(総資産経常利益率)も、変化幅こそROE(自己資本利益率)に比べて小さいものの、変化の方向性はほぼROEと重なり、2014年3月期はROE同様に過去10年間で最高値となった。
ROEを売上高当期純利益率、売上高/総資産(資産回転率)、及び総資産/自己資本(財務レバレッジ)の3要素に分解し、その推移を下のグラフに掲げた。資産回転率と財務レバレッジが比較的安定的に推移しており、同社のROEの変化は主として売上高当期純利益率に影響されていることが明確に読み取れる。
同社の財務分析指標の中で、弊社では資産回転率が緩やかではあるが着実に上昇している点に注目している。同社は事業買収や企業買収などを繰り返しつつ成長してきたが、その過程で財務面での管理が行き届いていることの1つの証左であると考えられるからだ。商社という事業の特性上、売上高利益率はどうしても低くなりがちであるが、バランスシートのコントロールは自社努力である程度可能であり、それによって財務指標を改善させることは十分可能だ。これまでのところ同社は、そのバランスシートの管理に成功しており、今後もこの努力を継続させることで、ROEの持続的上昇も十分に可能であると弊社では考えている。
同社は2014年3月期有価証券報告書から国際会計基準(IFRS)に準拠した連結財務諸表を開示した。弊社では同社の今期業績予想に基づいて、2015年3月期のROEを試算したところ、7.8%という試算結果を得た。2014年3月期実績のIFRSベースのROEが7.7%だったので、改善幅は0.1%となる。試算の前提となるバランスシート項目について、総資産は回転率が2014年3月期の4.73回/年から変わらないという仮定で算出し、自己資本については1株当たり22円の配当金支払いだけを社外流出として算出している。同社が総資産抑制策や、財務レバレッジ拡大策などの施策をとれば、ROEの改善幅は一段と高まることも予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<FA>