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THEグローバル社 Research Memo(4):2015年6月期は建築コスト上昇が響くが、戸建事業は拡大へ

注目トピックス 日本株

■業績動向

(2)2015年6月期業績見通し

2015年6月期の業績に関しては、売上高が前期比9.6%減の33,896百万円、営業利益が同35.5%減の1,542百万円、経常利益が同35.5%減の1,168百万円、当期純利益が同32.4%減の705百万円と2期ぶりの減収減益に転じる見通しだ。

事業セグメント別で見ると、戸建事業の売上高は前期比30.0%増と拡大基調を見込んでいるものの、マンション事業が同41.5%減と大きく落ち込むことが、減収減益要因となっている。また、今期は収益用不動産の売却を計画しており、その他の収益が大きく伸びる見通しとなっている。

○マンション事業
2015年6月期のマンション事業の売上高は前期比41.5%減の12,749百万円、営業利益は同62.6%減の885百万円となる見通し。

THEグローバル社<3271>が事業エリアとする首都圏においては、地価の上昇や建築コストの上昇によって、新築マンションの収益性が低下している状況にあり、同社においてもこうした影響を受ける格好だ。

不動産経済研究所の調べによると、2014年の首都圏における新築マンション供給戸数は消費増税の反動減に加えて、建築コスト上昇の影響が大きい郊外型マンションを中心に、前年比15%減の48,000戸と3年ぶりの減少が予測されている。契約率に関しては75%以上を超える水準で推移しており、需要が減少しているというよりも、供給側の問題(=建築コスト、地価上昇などによる収益性低下)が大きいと言える。

同社の調べによると、マンションの建築コスト(土地を除く)は2010年頃までは、一戸あたり(65平方メートル換算)約1,500万円程度であったのに対して、2011年以降は現場の建設作業員・管理者不足や建設資材高騰の影響もあって上昇傾向となっている。2014年もこの傾向は続いており、前年比で1割程度の上昇が続く見通し。一方で、建築コスト上昇分を価格転嫁できる余地は限られているため、必然的に新築マンションの供給戸数は減少するといった構図になっている。こうした市場環境において、マンション開発のための仕入用地候補先も、必然的に都心部の人気エリアに集中する格好となっており、当該エリアの地価上昇にもつながっている。

同社は従来、こうした都心部の人気エリアを中心にマンション開発を行ってきたため、競争激化により用地確保も厳しい状況になっている。収益性を重視しながら慎重に用地仕入れを行ってきた結果、今期の新築マンション販売戸数は約300戸と前期の596戸から大幅減少することになる。なお、8月末時点での年間販売計画戸数に対する契約率は60%超の水準となっており、現在販売中の物件に関しては順調に推移しており、今期はほぼ計画どおりで推移する可能性が高い。

○戸建事業
2015年6月期の戸建事業の売上高は前期比30.0%増の19,143百万円、営業利益は同108.5%増の1,060百万円を見込んでいる。

戸建事業に関しては、自社施工により建築費高騰の影響がマンションと比較すると小さいことから、請負事業も含めて積極的な事業拡大を進めていく戦略となっている。特に今期は価格志向から商品力重視への転換をより一段と進め、低価格戦略を展開する競合他社との差別化戦略を図っていく。

具体的には、仕入れに関しては少々割高であっても好立地物件(都心部、駅近、前面道路の広い物件等)の仕入れを強化し、また、商品企画面では「Only One」となる独創性のある住宅づくりを提案していく。前述したとおり、現在の住宅市場は、特徴のない物件は安くても売れにくく、逆に好立地物件や顧客ニーズに合致した特徴のある物件は多少、販売価格が高くても売れる市場環境にある。例えば、一般的な90平方メートルの物件に10平方メートル面積を広げて「+α」の提案を行っていく。キッチン食品庫や玄関倉庫、ペットの足洗い場など特徴を持たせた住宅を提案することで、顧客を獲得していく戦略だ。

今期はこうした戦略により建売の販売戸数を約450戸(請負を除く)と前期の374戸から一気に拡大する見込み。また、同時に事業者からの請負事業も強化していく方針を打ち出している。請負事業は在庫リスクを抱える必要がなく、また、自社施工で季節変動の大きい同事業において、人的稼働率の平準化につながるなど、収益の安定性向上に寄与するとみられるためだ。受注量の拡大に対応するため、設計人員に関して不足する部分に関しては、マンション事業からの人員シフトなどで対応していく。

請負戸数は前期の36戸から今期は約100戸を見込んでいる、来期はさらに2倍増を目指している。売上高としては今期12億円から来期は24億円に伸ばしたい考えだ。請負事業の強化にあたって、2014年秋に新宿にショールームを開設し、受注拡大に取り組んでいく。また、セミカスタムオーダー商品となる「HOUSTYLE」の販売強化も同時に進めていく。

戸建事業に関してはそのほか、節税対策や投資用としてニーズが拡大している低層階アパート建築への進出を計画しており、3年後には年間で50件程度の案件を手掛けていきたい考えだ。

また、注文建築に関しても拡大していく方針で、2015年春頃に住宅展示場への出店を予定している。当初は年間20棟程度の受注を目指している。注文住宅に関しては大手ハウスメーカーの収益性も高く、同社では参入余地が大きいとみている。

○販売代理事業、建物管理事業、その他
2015年6月期の販売代理事業は前期比24.1%減の1,068百万円、営業利益は同90.1%減の46百万円を見込んでいる。マンション事業の減収が主因となっている。また、今期は他社物件も減少する計画となっている。

また、ストック型ビジネスモデルとなる建物管理事業に関しては、管理戸数の増加に伴い売上高が前期比19.5%増の348百万円、営業利益が同8.4%増の46百万円と増収増益基調が続く見通しだ。

その他は前述したように収益用不動産の売却に伴って、売上高は前期比8.9倍の1,168百万円、営業利益は同4.9倍の352百万円を見込んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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