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ソフトバンテク Research Memo(3):グループ外の受注が拡大、独自技術や社員数の増加にも注目

注目トピックス 日本株

■2015年3月期の第2四半期決算

(2)2015年3月期第2四半期のトピックス(売上高とEBITDAの増加要因)

ソフトバンク・テクノロジー<4726>の売上高と減価償却費やのれん償却費の影響を除いた利益の増加は、以下のような要因による。上半期のトピックスにも関連することでもあり、トピックスと一緒に以下に解説する。

(a)ソフトバンクグループ以外からの受注の拡大

顧客別の売上高では、ソフトバンクグループ以外からの売上高が前年同期比49.9%増の5,910百万円となった。グループ内からの売上高も通信事業向けの開発プロジェクトなどを中心に同35.4%増の5,740百万円と好調だったが、それ以上の伸びを示し、第2四半期ベースでは初めてグループ内からの売上高を越えた。一般消費者向けの「シマンテックストア」などに代表されるEC販売は同1.0%減の8,020百万円であることからも、グループ外からの受注が増収に大きく貢献したと言える。

グループ外からの受注拡大は、後に説明する独自技術による新サービスの発売や、社員数の増加による営業力・技術力両面の強化が要因である。

また、グループ外からの受注では、公共団体からのプロジェクトが数多く取得できた点が大きなトピックスと言えよう。公共団体向けは、2014年3月期からソフトバンクグループと共同で営業を開始したもので、プラットフォームソリューションやシステムインテグレーションなどの受注を目指している。2013年8月には静岡県浜松市から緊急時の情報発信環境の強化を実現するクラウドネットワークソリューションを受注した。

15年3月期上半期は、プラットフォームソリューション分野で、中央省庁2件、県3件、政令指定都市1件、市町村6件、団体3件の受注を獲得。これら公共団体からの受注はまだ利益貢献するまでの規模には至っていないというが、下半期からはシステムインテグレーション分野の受注も拡大するとみられ、そう遠くない時期に利益貢献する可能性が高い。

(b)独自技術による新サービスの発売

独自技術を用いたサービスは、他社が真似しにくいため、売上のけん引役になり得るうえに利益率も高い。このため、M&Aに際しては独自技術を持っているかどうかを重視している。フォントワークスはネットの書体、(株)環はウェブ解析、サイバートラストはSSLサーバー認証及びスマートフォン向け認証、ミラクル・リナックスはオープンソースソフトウェアを活用したソリューション、M-SOLUTIONS(株)はiPad1台で無人受付業務ができる「Smart at reception」に代表される、モバイル端末に特化した業務支援アプリケーションで独自技術を保有している。

ソフトバンク・テクノロジー単体においてもビッグデータ向けのデータ収集・蓄積・解析ツール「4D Pocket」を始め、独自サービスの開発を積極的に推進している。社内には専任の「ビジネスディベロップメント」部門を設置し、M&A、新規事業開発、最先端ICT技術の社内への導入を行っている。

2015年3月期上半期及び決算発表までの間も、独自技術による新サービスの投入を積極的に行った。特に力を入れている分野は、セキュリティ関連とデータアナリティクス関連である。マイクロソフトソリューションに関して中核となるのは、セキュリティ技術であるため、実質的にはセキュリティ関連の技術に含まれる。以下に代表的なサービスを説明する。

Online Service Gate

6月16日に発表。社外からのアクセス制限やシングルサインオン環境を実現するといった、クラウドへの柔軟なアクセスコントロールを実現するサービスに新しいラインアップを加えた。今まではオプションだった、モバイル端末からのアクセス制御を標準化した「Professional版」、接続先サービスの数を無制限にした「Enterprise版」の2種類を加えた。このサービスは好調な販売を維持しており、11月下旬には、累計で10万ユーザー数を越えた。

マイクロソフト Azure ワンストップ支援サービス

9月18日に発表。マイクロソフトのクラウドソリューションを導入する企業に対し、クラウドへの移行計画を支援する「アセスメントサービス」、導入支援を行う「構築サービス」、移行後の運用及び改善を支援する「マネージドサービス」の3サービスを一括して提供する。

クラウド化といってもすべてのシステムをクラウド上に移せるわけではない。一部のシステムはクライアント企業にサーバーなどを置いて運営するほうが効率的で安全な場合もある。ワンストップ支援サービスにより、各企業の実情に対応した最適なシステム環境を提供できる。

Active Directory(アクティブ・ディレクトリー)診断サービス

10月10日に発表。日本で唯一の製品である。アクティブ・ディレクトリーに対するセキュリティ診断を行うサービスで、“攻撃型”と言われる情報漏えいへの脆弱性を診断し、対応策を提案する。

アクティブ・ディレクトリーは多くの企業で一般的に使われており、サーバー、クライアント、ユーザー情報の管理と、それらに連携する各サービスに対する認証を行っている。今、情報漏えいをもたらす不正なアクセスの中で、攻撃型は最も多いものの1つであるが、これはアクティブ・ディレクトリーを攻撃して、アカウント情報を盗み出すというパターンが多い。同社では、ネットワーク経由とサーバーの設定情報の両方から問題点を検出し、実際の攻撃に対する耐性をシステムの内部と外部の両方から調べる。そのうえで、適切な対応策を提示する。

sibulla for 自治体

9月25日に発表。これも、国内で初めてのサービスである。子会社である環の持つ、独自技術のアクセス解析ソリューション「sibulla(シビラ)」を自治体向けに改良した。自治体のホームページの利用者がどのようなページを閲覧し、どのようにサイト内を回遊しているかを簡単に解析できる。自治体の広報担当者や、自治体向けにサービスを提供している企業向けに販売している。

各市町村には、住民サービスの向上のためにCIO(最高情報責任者)が置かれることが多くなっている。その際には、このソリューションが非常に役立つため、引き合いが多いという。ユーザーにとっては、純国産品であることも安心できる大きな理由となっている。

サイジニアとの提携

10月27日に発表。サイジニア<6031>(代表取締役社長:吉井伸一郎(よしいしんいちろう)氏、本社:東京都品川区)は、共通の趣味や嗜好を持つユーザー情報を結び付けることによって、最適なお薦め(レコメンデーション)広告を配信する、独自開発のレコメンデーションエンジン「デクワス」を展開している。サイジニア社のこの技術をベースにオムニチャンネルから得たデータを統合的に管理・分析できるデータマネージメントプラットフォームを提供するとともに、両社共同で広告から販売促進までを横断的に連動させた効果的なマーケティング支援サービスを提供する。

これらのほかにも、自社開発ではないが、標的型攻撃への対応サービスである「Fire Eye」(ファイア・アイ社)、WAF/データベースセキュリティサービス「Imperva SecureSphere」(インパーバ社)といった独自技術を搭載した新サービスも一次代理店となって発売した。

(c)社員の増加と社員のスキルの向上、スキルの高い社員の確保

連結ベースの社員数は、2014年9月末時点で815人となった。2014年3月期末に比べ191人の増加となっている。サイバートラストの子会社化がもっとも大きな要因ではあるが、ソフトバンク・テクノロジー単体も、4月に20人の中途採用を含めた規模の大きな人員増強を行っている。単体の社員数は9月末時点で3月末に比べて59人増の601人となった。

同社は社員数1,000人を目標としている。1,000人という数字は利益率の高い大型のサービス案件が受注できる規模であると同時に、データアナリスティクス、セキュリティソリューション、マイクロソフトソリューションの注力3分野の成長を加速できる規模でもある。特にマイクロソフトソリューションの受注拡大が期待できるとしている。目標の1,000人は2015年の秋口には達成が視野に入ろう。

人員の拡充によって、外注の割合が減り、従来以上に利益率の向上が図れるというメリットも期待されている。同社が経営指標として重視するものに限界利益があるが、15年3月期第2四半期は、前年同期比40.3%増の5,101百万円となった。限界利益率も同3.6ポイント増の25.9%にまで上昇した。人員拡充による内製化により、マイクロソフトソリューション、プラットフォームソリューションとシステムインテグレーションの3事業で、限界利益率が上昇した。

また、子会社の貢献も顕著である。セキュリティソリューションの限界利益の上昇分は、ほとんどがサイバートラストによるものである。また、ECサービス全体では限界利益が減少したものの、フォントワークスが貢献したことで減少幅が大きく縮小した。

人員の増強とともに、社員スキルの高度化、スキルの高い人材の確保も着実に進んでいる。社員スキルの高度化では、高度技術者資格の取得数の増加が挙げられる。資格取得者は、2015年3月期の第2四半期末で前期末比19件増の163件となった。現在、特に大型プロジェクトのマネージメント資格である「プロジェクトマネージメントプロフェッショナル資格」の取得者を増やしている。2015年3月期末には、この資格を含めて、高度技術取得数を200件以上にする計画となっている。

また、スキルの高い人材の確保としては、人員の増強を進めるなかで以下のような人材の獲得に成功している。

セキュリティエンジニアの辻伸弘(つじのぶひろ)氏(2014年入社)は、NTTデータ先端技術から移籍した。独自技術を使った新サービスで説明したアクティブ・ディレクトリー診断サービスの開発者である。「ハッカー側の視点に立って考えた」というユニークな発想で、わが国初のサービスを誕生させた。

PMパートナー本部の技術統括である江尾一郎(えおいちろう)氏(2013年入社)は、情報セキュリティ事業会社からセキュリティ関連の様々な実績を積み、日本で初めてサイバーセキュリティの24時間監視サービスをスタートさせた経験を持つ。同社移籍後は、セキュリティ・コンサルタント及びセキュリティ事業の新しいサービス企画立案、セキュリティ性能の高いインフラ構築に携わっている。

スマートフォン向けのアプリケーション開発エンジニアの田中隆裕(たなかたかひろ)氏(2008年入社)は、法学部出身。ソフト制作の趣味が高じて入社した。プログラミング言語「Ruby」の生みの親でもある。

また、同社の社員ではないが、環が事務局を務める「データ解析士」の育成も進んでいる。2014年10月末時点で、初級・上級・マスターのうち初級の累計受講者は9,176人となった。ビッグデータ分野の要となるデータ解析のスキルに対する資格であり、世界的に人材不足が深刻な状況だが、同社は解析士資格を通じて、解析士の確保がしやすい環境にある。また、取得者が10,000人を越えれば、事実上の業界標準の位置付けになる期待もあるという。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)



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