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EMシステムズ Research Memo(3):主力のシステム関連事業において調剤システムが成長を担う

注目トピックス 日本株

■会社概要

(2)事業概要

EMシステムズ<4820>の事業セグメントは、調剤薬局向けレセプトコンピュータや開業医向け電子カルテのほかサプライ品販売などの「システム事業及びその関連事業」(以下:システム関連事業)と、本社ビル内でスポーツジムや保育園等を運営する「その他の事業」の2事業で構成されるほか、営業外収支に計上される不動産賃貸事業の収益は経常利益に反映される。

主力のシステム関連事業は、調剤薬局向けレセプトコンピュータの開発・販売を担う「調剤システム」のほか、開業医向け電子カルテを販売する「医科システム」、チェーン調剤薬局の本部と各店舗の日常業務をサポートする「ネットワークシステム」、薬袋や帳票などの消耗品販売を手掛ける「サプライ」、無償メンテナンス期間経過後に有償でサービスを提供する「保守サービス」など、5つのサブセグメントに分かれる。

この中で同社の成長を担うのが調剤システムである。なかでも2009年3月期に投入した調剤システム「Recepty NEXT」は、ソフトウェアを個別ユーザー(顧客調剤薬局)に販売する従来からのパッケージ販売と違い、自社のデータセンターから通常のインターネットよりセキュリティを高めたVPN(Virtual Private Network)でソフトウェアを提供するASP(Application Service Provider)モデルである。ASPモデルの売上高は契約一時金やハードウェア販売に限られるため、1件当たりのイニシャル売上(初期売上)はパッケージ販売の1/2程度に減少するものの、月額基本料と処方箋枚数に応じた従量課金などのランニング売上(継続売上)は契約件数の積み上げと共に拡大する収益構造である。ASPモデルの投入で同社のビジネスモデルは、イニシャル売上に頼るフロー型ビジネスモデルから、ユーザー数の積み上げをベースにしたランニング売上のストック型ビジネスモデルに転換した。

ASPモデルのメリットは、ユーザーの初期導入コストが抑えられるうえ、診療報酬改定や業務ソフトなどのアップデートを同社内のサーバで行うため、個別ユーザーごとのアップデートに比べてメンテナンスが容易であることであろう。加えて、処方データが同社サーバで管理されるため、チェーン調剤薬局の在庫管理など、データ共有・分析に強みを発揮する。

開業医向け電子カルテを扱う医科システムにおいても、2012年3月期にASPモデルの「Medical Recepty NEXT」を投入した。それまでの医科システムは売上規模が小さいうえ、医事会計部門システム以外はOEM供給を受けるなど、その位置付けは調剤システムの補完に過ぎなかったが、2014年3月期に電子カルテの開発・販売で業界中堅のユニコンを買収し、同社は調剤システムと同様に医科システムを中長期的な成長ドライバーに育成する方針である。

医科システムの売上高は、調剤システムと同様にイニシャル売上とランニング売上に分けられるものの、医科システムのランニング売上は調剤システムとは違い月額定額課金となる。

ネットワークシステムは、調剤システムの「Recepty NEXT」に先駆けてASPモデル「NET Recepty」を2003年3月期から投入し、培われたノウハウを「Recepty NEXT」に活用している。ネットワークシステムの主なサービスは、チェーン本部と各店舗の在庫管理や日常業務などのサポートだが、これらは既に「Recepty NEXT」に移植されたことから、契約期間の満了に合わせ売上高は漸減していくと考えられる。

消耗品販売のサプライと有償メンテナンスの保守サービスは、ユーザー数の増加を背景に堅実な売上高成長を続けており、今後も調剤薬局及び開業医ユーザーの増加で緩やかな拡大が見込まれる。

その他の事業は、本社ビル内でスポーツジムや貸会議室、保育園等を運営する。セグメント利益は2011年3月期に黒字転換したものの、新規出店などの多店舗展開を行わないため、その他の事業の業績寄与は限定的であろう。

(a)ビジネスモデル
同社のビジネスモデルは、2009年3月期からストック型に転換している。旧来のビジネスモデルは、5年間無償保証をセールスポイントに新規導入や他社リプレース(入れ替え)を獲得。5年後の自社リプレースを漏れなく取り込むなど、単年度売上高主体のフロー型(売切り型)ビジネスモデルだった。そのため、診療報酬改定など外部環境変化の影響を受けやすく、調剤報酬などがマイナス改定になると、ユーザーの投資マインド低下で減収減益に陥るリスクの高いビジネスモデルだった。

これに対し、処方箋枚数に応じた月額従量課金のストック型ビジネスモデルは、ハードウェア販売等のフロー売上高に加え、ユーザー数の積み上げ(=処方箋枚数拡大)によるストック売上高が成長をけん引する。このベースとなる国内の調剤薬局数と処方箋枚数は、医薬分業率アップや高齢化による薬局調剤医療費の増加とともに拡大を続けており、ストック売上高の成長性は高いと考えられる。

同社は旧モデルからASPモデルへの自社リプレースを進めるとともに、新規導入と他社リプレースでユーザー数の積み上げを強化している。2012年3月期からは医科システムでもASPモデルの拡販にも乗り出しており、中長期的にはユーザー数の積み上げが同社の業績指標と考えられる。

(b)業界環境
同社のユーザーである調剤薬局は、医薬分業率(調剤薬局の処方箋受取率)の上昇とともに年々増加している。そもそも「医薬分業」とは、診察(医師)と投薬(薬剤師)を分離して、相互にチェック機能を持たせると同時に、医師の潜在的収入源だった薬価差益に頼る経営体質からの脱却と、薬剤費圧縮による医療費抑制が目的である。

厚生労働省によると、処方箋を扱う保険調剤薬局は国の方針のもと1990年度の3.1万件から2012年度には5.4万件に増加。このほか、調剤薬局業界内の再編や流通大手やドラッグストアなどの新規参入に加え、大病院門前の「点分業」から生活地域への「面分業」の進展など、調剤薬局業界はプレーヤーやロケーションの多様化で店舗数が増加している。

加えて、同社のストック型ビジネスのベースとなる処方箋枚数も、高齢化による患者数の増加などを背景に増加を続けていることから、処方箋枚数に応じた従量課金型の同社の調剤システムには、調剤薬局数の増加と同様に高齢化が追い風となっている。

一方、調剤薬局向けレセプトシステムにおける競合は、パナソニック(旧三洋電機)<6752>や三菱電機<6503>、日立メディコ(子会社日立メディカルコンピュータ)などが挙げられる。この中にあって同社は業界トップクラスのシェアを誇るとともに、唯一のASPモデルベンダーでもある。

開業医向け電子カルテ市場は、2000年代に入り誕生した新しい市場であるがゆえ、普及率の低さから中長期的には伸びしろの大きい有望市場と考えられる。保健医療福祉情報システム工業会によると、国内の診療所(開業医)約10万件における電子カルテ普及率は、わずか12.8%(2010年)に過ぎない。電子カルテの普及が進まない要因として、高い導入コストや過去分手書きカルテの入力労力、トレーニングに要する時間などが考えられるものの、地域医療における病院と開業医との連携(病診連携)や、重複検査・投薬防止など診療行為の効率化による医療費抑制には電子カルテが欠かせないことから、開業医向け電子カルテ市場は社会的ニーズの高まりとともに緩やかな拡大が予想される。

開業医向け電子カルテの競合としては、パナソニック、ビー・エム・エル<4694>などが挙げられ、同社は売上高規模が小さいもののASP活用モデル投入では先行している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 馬目 俊一郎)



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