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サン電子 Research Memo(12):ニッチ市場におけるグローバル展開で成長加速へ

注目トピックス 日本株

■成長戦略

サン電子<6736>の中期的な成長戦略は、情報通信分野のニッチ市場におけるグローバル展開によって、成長を加速させることである。具体的な注力分野としては、モバイルデータソリューション事業とM2M事業のほか、新機軸インターネットサービスの3つが挙げられている。

(1)モバイルデータソリューション事業の拡大

セレブライト社製品を軸としたモバイルデータソリューション事業の拡大策として、新機種への移行によるリプレース需要の取り込み、グローバル展開、犯罪捜査用(フォレンジック)の拡販、新たな機能(用途)による需要創出などに取り組む。

a)新機種への移行によるリプレース需要の取り込み
セレブライト社製品は携帯ショップにおけるデータ転送(リテイル)において、最大の市場である米国で既にシェア90%を占めているが、新機種への移行によるリプレース需要や追加需要の取り込みにより、販売台数を確保する方針。2012年末に販売を開始した新機種「Cellebrite TOUCH」(犯罪捜査用は「UFED TOUCH」)は、タッチパネルによる操作性の向上に加え、データ伝送速度を5倍に高速化するなど性能を高めている。

b)グローバル展開による販路拡大
同社は米国だけでなく、欧州やアジア、中南米など、世界規模で販路拡大を進めている。欧州では、2008年にドイツに子会社を設立し、シェアを伸ばしている。また、2013年には、日本を除くアジア、オセアニアを統括するシンガポール、及び中南米の市場開拓を目的としてブラジルに販売拠点を開設すると、今年2月も英国に販売拠点を開設した。現在、リテイルは200キャリア、フォレンジックは全世界100ヶ国以上で採用されているが、更なる販路拡大によりシェアを高めている方針である。国内においても、大手キャリア1社が2013年9月から導入を開始しており、国内市場においても普及段階にある。

世界の携帯電話市場は、年間販売台数で米国の10倍程度の大きさがあると推定されるが、世界各国におけるスマートフォンの普及が、同機器に対する需要を後押しする可能性は高い。ただ、急速に普及した米国では、データの移行作業を有料で行っていることから、同機器を導入しやすい状況にあったことを勘案すれば、各国の事情によって市場開拓の確度やペースは異なると考えられる。しかし、後述する機能充実(診断機能等)による需要創出を含め、潜在市場は大きいと言っていいだろう。

c)犯罪捜査用にも注目
最近では、犯罪捜査用としても利用されている。携帯電話を使った犯罪が世界的に増加傾向にある中で、犯罪捜査解決の糸口として携帯電話が重要な証拠資料となっていることによる。犯罪捜査用の機種は、通常機種に専用のソフトウェアを付加したものとなっている。通常機種との大きな違いは、消去されたデータの復元が可能なこと、交信履歴のある複数の端末とデータのやり取りや、発着信履歴などの解析が可能なことなどが挙げられる。同機器によって解析されたデータ分析レポートは国内外の裁判所で公式記録として認定されるなど、信頼性に関しても高い評価を受けている。米国を中心に海外の捜査・調査機関での導入が進んでいるが、新機種に関しては、日本の捜査機関が世界に先駆けて導入したようである。

d)新たな機能による需要創出
新たな機能(用途)による需要創出にも取り組んでいる。具体的には、携帯電話端末診断機能の提供や自動化された中古携帯買取システム「BuyBack」などが挙げられる。

なお、「BuyBack」については、携帯電話販売店が、持ち込まれた中古携帯電話のコネクタに同機器をつなぐだけで買取相場が表示される仕組みとなっている。携帯電話販売店では、顧客の持ち込む携帯電話の買取相場をリアルタイムで把握することが可能となり、接客時間の短縮だけでなく、データを提供する仲介業者への売値価格もあらかじめ把握できるため、安心して売買に応じられるメリットがある。また、仲介業者にとっては、データを提供することによって、携帯電話端末の仕入ルートを確保することができる。この仕組みを可能としたのは、コネクタに差し込むだけで機種を判別できる技術によるものであり、モバイルに特化してきたセレブライト社ならではのソリューションと言えるだろう。同社にとっては、新たな機能を備えた新機種へのリプレース需要が期待できるほか、売買仲介業者から携帯電話の仕入台数に応じた定率のコミッション収入を得る収益モデルとなっている。販売実績はまだこれからのようであるが、仲介業者を含めた業界を束ねる新たなビジネスモデルとして期待できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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