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極洋 Research Memo(5):円安、市況変動、魚価の低迷が影響、四半期純利益は増益を確保

注目トピックス 日本株
■業績動向

(1)2015年3月期第2四半期(2014年4月-9月)の業績(実績)

●損益状況

極洋<1301>の2015年3月期第2四半期(2014年4月-9月)決算は表のように売上高102,476百万円(前年同期比8.9%増)、営業利益721百万円(同48.6%減)、経常利益686百万円(同54.2%減)、四半期純利益2,265百万円(同20.5%増)となった。円安やロシアの輸入禁止による市況変動等により主力の水産商事部門が増収ながら減益となったこと、魚価の低迷によって鰹・鮪部門が赤字となったことなどから営業利益、経常利益は前年同期比で減益となった。一方で四半期純利益は、特別利益(厚生年金基金代行返上益3,521百万円)の計上によって増益となった。

このように2015年3月期の第2四半期(2014年4月-9月)の業績は、前年同期比で見ると厳しい結果となったが、前年同期(2013年4月-9月)が通常を上回る好決算であったことから、同社はこの第2四半期(2014年4月-9月)については期初から減益(期初予想:営業利益1,100百万円、経常利益1,000百万円)を予想していた。したがって、期初予想比で見れば、営業利益は379百万円、経常利益は314百万円下回っただけである。

さらにその主要因は、下記に述べるような外部要因(世界的な市況の影響や急激な円安)によるもので、会社の内部要因によるものではない。そのため会社は、この2015年3月期の第2四半期(2014年4月-9月)の結果について表面的な数字(減益額)ほど悲観はしておらず、むしろオペレーション的には想定通り順調に進んだとみているようだ。

●部門別状況

各部門別の状況は以下のようであった。

(水産商事事業)
水産商事事業の業績は、セグメント別売上高が51,507百万円(13.6%増)、営業利益が999百万円(同37.5%減)となった。水産物市況、特に鮭鱒、北洋魚、カニの価格が上昇したこと、仕入れ・在庫管理を徹底したこと、製品加工とのシナジーが出たことなどから大幅な増収を達成した。一方利益面では、円安の進行、ロシアの輸入禁止による市況変動、原料相場の高止まりによる加工コストアップなどにより全体として原価が上昇し、営業利益は前年同期比で大幅な減益となった。

(冷凍食品事業)
冷凍食品事業の業績は、売上高は28,422百万円(同11.4%増)、営業利益は242百万円(前年同期は219百万円の赤字)となり、前年同期から大幅に改善した。水産冷凍食品では寿司生食用商材が順調に拡販出来たことに加え、「だんどり上手」シリーズ製品を中心とした切身、煮魚等の加熱用商材も順調であった。調理冷凍食品では、エビフリッターの販売が不振であったが、主力の白身フライやカニ風味かまぼこなどが量販店や外食向けに好調に推移した。家庭用冷凍食品では、関東甲信越の有力量販店への導入が始まり、販売店舗数は順調に拡大している。

(常温食品事業)
常温食品事業の業績は、売上高が9,009百万円(同4.1%増)、営業利益が144百万円(前年同期は33百万円の赤字)となった。さけの中骨水煮缶詰の自主回収やクレーム処理などで一時的に商談がストップしたが、前年同期比では増収となった。また利益面では、原料価格高騰に対応した価格改訂や規格変更等のコストアップ対策を実施したこと、CVS向けPB商品や海産珍味類の販売が順調に増加したことなどから全体の利益率が改善し、部門として営業利益を計上した。

(物流サービス事業)
物流サービス事業の業績は、売上高が1,604百万円(同6.7%増)、営業利益が71百万円(同77.5%増)と増収・増益を達成した。冷蔵倉庫では新設した城南島事業所が売上増に寄与したことに加え、再保管貨物の集荷を強化、畜産品での新規貨物の取扱い増などにより増収増益となった。

一方で冷蔵運搬船事業も、円安のプラス効果、船隊のスリム化に加え、子会社の極洋海運を吸収合併したことで合理化が進み、増収・増益に寄与した。

(鰹・鮪事業)
鰹・鮪事業の業績は、売上高が11,874百万円(同9.1%減)、営業損益は289百万円の損失(前年同期は393百万円の利益)となった。

海外まき網事業は、水揚げ量は17千トン(同2千トン増)であったが、平均単価(Kg当たり)が159円(前年同期は200円)と下落したことから、水揚金額は27億円(前年同期比2億円減)となった。加えて燃油などが高騰したことから赤字となり、部門収益の足を引っ張った。

加工及び販売事業では、赤身商品の収益力が低下し、回転寿司大手取引先の取扱いが減少したことなどから利益率は低下した。

養殖事業は順調に拡大しているが、今後は種苗の新規仕入れルートの開拓と品質や歩留まりの維持向上が課題になる。今年最大のニュースとしては、既述のようにクロマグロの完全養殖魚の沖出しに成功したことだ。これにより、完全養殖のビジネスモデルが確立され、3年後の本格出荷が見えてきたようで、今後の展開が楽しみな分野である。

●財政状況

2015年3月期第2四半期末(2014年9月末)の財政状況は下表のようになった。流動資産は74,824百万円(前期末比11,791百万円増)となったが、増収に伴い売掛債権が27,460百万円(同3,067百万円増)となったこと、年末商戦に向けて棚卸資産が38,560百万円(同7,217百万円増)となったことが主要因。固定資産は20,897百万円(同389百万円減)となった。有形固定資産は185百万円増加したが、投資その他の資産が9,674百万円(同571百万円減)となったことが主要因。この結果、総資産は95,721百万円(同11,402百万円増)となった。

負債合計は、「退職給付に関する会計基準の変更」に伴い、退職給付に係る負債が減少したものの、仕入債務(支払手形及び買掛金)や短期借入金、コマーシャルペーパーなどの増加により、73,383百万円(同8,995百万円増)となった。純資産は、利益剰余金の増加等により、22,338百万円(同2,408百万円増)となった。この結果、自己資本比率は22.9%(前期末比0.5ポイント減)となった。

●キャッシュ・フローの状況

2014年3月期のキャッシュ・フローは下表のようであった。営業活動によるキャッシュ・フローは4,772百万円の支出となった。主な収入は、税金等調整前四半期純利益3,897百万円、減価償却671百万円、仕入債務の増加などであったが、支出として売上債権の増加3,006百万円、厚生年金基金代行返上益3,521百万円、棚卸資産の増加7,207百万円、法人税等の支払額435百万円等があった。

投資活動によるキャッシュ・フローは1,529百万円の支出となったが、主な支出は固定資産の取得707百万円、貸付金946百万円があった。財務活動によるキャッシュ・フローは6,896百万円の収入となったが、主な収入は短期借入金の増加4,871百万円、コマーシャルペーパーの増加3,000百万円。

この結果、現金及び現金同等物は577百万円増加し、期末の同残高は3,964百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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