セプテーニHD Research Memo(2):発展期を迎えたネット広告市場全体に対しアウトパフォーム継続
[14/12/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ネットマーケティング事業
セプテーニ・ホールディングス<4293>の2つの事業のうち、主力となるのはインターネット広告の販売を手がけるネットマーケティング事業だ。2000年代に入ってインターネット広告市場が本格的に発展期を迎えて以後、同市場は急速な成長を続けている。同様に、同社の広告事業売上高も右肩上がりで推移している。
下のグラフは、セプテーニグループの広告事業売上高の伸び率と、インターネット広告市場全体の成長率を比較したものだ。ある程度伸び率が落ち着いてきた2005年を起点に、2013年までの各年を比較した。2010年を除いてセプテーニの伸び率が市場の伸び率を上回っていることがわかる。特に2012年、2013年と、セプテーニの伸び率が市場の伸び率をアウトパフォームする(上回る)度合いが大きくなっていることが注目される。
この理由は、同社が「モバイル」「ソーシャル」「グローバル」という、インターネット広告の中でも成長性が特に高い分野に強みを持ち、そこにフォーカスして事業を展開しているためだ。
「モバイル」というのは、インターネット利用端末のうちパソコン(PC)以外の携帯端末(スマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン等)のことを意味している。中でも中核はスマートフォンだ。現在、個人が最も利用する情報端末がスマートフォンになりつつあることについて説明は不要であろう。広告は人の目に触れてこそ意味があるため、広告の出稿先もおのずとPCからスマートフォンへと需要の中心が移っている。スマートフォンとPCでは画面の大きさはもちろん、利用形態も変わってくるので、広告の種類も変わってくる。同社は、いち早くスマートフォン向け広告に軸足を移し経営資源を投入、ノウハウを蓄積してきた。同社のネットマーケティング事業売上高に占めるスマートフォン広告売上の比率は、四半期ベースで見ると右肩上がりで推移しており、2014年9月期第4四半期においては53.6%に達した。
同社では、スマートフォン向け広告売上高の高成長が今後も続くとみており、更なる拡大に向けて様々な取り組みを続けている。具体的な施策の1つにはニュースアプリの「グノシー」やファッションアプリの「iQON」におけるネイティブ広告商品の開発・販売サポートがある。ネイティブ広告とは、広告をメディアの記事と同様のデザインやスペースで掲載することにより、記事と広告を溶け込ませ、ユーザーにストレスを与えず情報を届けるタイプの広告だ。スマートフォンでは、ニュースの見方ひとつをとっても、PCとは異なっている。PCではヤフー<4689>などのポータルサイトからニュースを見ることが多いが、スマートフォンではスマートフォン上でニュースを見るのに適したアプリが開発されており、それを通じてニュースを見ることが多い。上記の「グノシー」はその代表例であり、現在急成長中のメディアである。同社はこの分野でトップクラスの実績を有しており、スマートフォン広告の先駆企業としての強みを存分に発揮している。
「ソーシャル」というのはSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)上に掲載される広告の販売を中心としたマーケティング支援ビジネスのことで、Facebook(フェイスブック)とTwitter(ツイッター)が主要メディアである。同社はこれら両メディアにおけるインターネット広告事業で収益を伸ばしており、2014年9月期第4四半期の売上高は1,658百万円と前年同期の818百万円から2倍以上に増加した。
同社の収益がこのような急拡大を続ける背景には、SNS市場、特にFacebookユーザーの規模の大きさと成長性の高さがある。世界のユーザー数は2014年9月時点で13.5億人(前年同期比14%増)、そのうち11.2億人(前年比29%増)がスマートフォンでのユーザーとなっている。
弊社では、同社がFacebook広告の取扱い実績で国内トップシェアを獲得していると推測している。その理由としては、同社が他社に先駆け2010年7月からFacebook広告に参入していること、Facebookからマーケティング関連で複数の認定を受けていること、広告出稿や運用の生産性を高める独自ソフト「PYXIS(ピクシス)」を有していること、などを挙げることができる。
SNSではTwitterにも期待が寄せられている。SNSとしてのユーザー数がFacebookには及ばないため、Twitter関連売上がFacebook並みにまで成長すると期待するのは早計だが、成長率としてはFacebookよりも高いとみられる。同社は、Twitterからもマーケティング関連の認定を取得しており、広告販売において競争上優位なポジションにある。
「グローバル」というのは、海外事業のことである。PCからスマートフォンの変化は世界的な潮流であり、Facebookに代表されるSNSサービスは世界をまたぐサービスである。すなわち、同社が注力する「モバイル」と「ソーシャル」というインターネット広告領域も、当然のように「グローバル」なニーズが出てくることになる。それをきっちり取り込んで収益化すべく、同社は米国、韓国、シンガポール及び英国に営業拠点を展開している。韓国では2014年7月に韓国のネット広告企業JNJ INTERACTIVE Inc.を子会社化した。(連結対象となったのは2014年9月末)
同社の海外事業モデルは、広告商品のラインナップをはじめ提供するサービスそのものは国内とほぼ同様だが、その取引形態に特徴がある。「クロスボーダー取引」と呼ばれるもので、主に海外企業による日本向け広告や、日本企業による海外向け広告を取り扱っている。現在は米国拠点が収益の中心であるが、韓国、シンガポールといったアジア地域での売上高も順調に伸びている状況。下のグラフは海外事業売上高の推移であり、2013年9月第1四半期の売上高を100として指数で表現した。売上高の実数値は開示されていないものの、直近の2014年9月期第4四半期の段階で10億円を超えているものと弊社では推測している。海外案件は国内よりもスマートフォン比率が高く、同社の得意とする領域でもあるため、海外事業は同社の中でもさらに高成長が期待される分野と弊社ではみている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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