ウィルグループ Research Memo(8):M&Aや社内提案制度を活用した新しい成長エンジンを立ち上げ
[15/02/18]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■トピックス
(3)新分野への事業拡大
ウィルグループ<6089>は上記の3つの成長戦略の他にプラスαの成長戦略として、新分野への事業拡大を掲げている。セグメントでは「その他事業」である。海外への展開、人材派遣や業務請負といった既存事業のすそ野を広げるといったことはもちろんだが、「ヒトに関わるあらゆるサービス」という、より広いカテゴリーでの新規事業も進めている。
この戦略を推進する理由は、既存の主要3事業だけではいつか成長が頭打ちになると考えているからである。新規事業を育成し、新しい成長エンジンとしていく。M&Aを駆使するほか、社内においても社員全員が参加できる新規ビジネスの提案大会「ビジネスモデルグランプリ(BMG)」を毎年開催し、優れた提案の場合、翌年度末までに事業立ち上げを行っている。BMGには毎年、50〜60件の応募があるほど盛況だという。2015年3月期の第3四半期は、「その他事業」の育成が進んだうえに矢継ぎ早に複数の新事業が立ち上がった。
「その他事業」の育成が進んだという点では、決算ですでに説明したとおり、介護士派遣、ネット人材紹介、海外事業が大きな成長を遂げている。
新たに立ち上がった事業としては、「シンガポールの人材紹介会社STC社の買収」、「シェアハウス事業」、「スマートフォンアプリ開発技術検定試験を活用した転職支援事業」「遠隔農場との業務・資本提携」などがある。これらのうち、シェアハウス事業はBMGからの新規事業である。以下にこれら新規事業に関して説明する。
「シンガポールの人材紹介会社STC社の買収」
8月にシンガポールの海外事業統括会社である「WILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd. (WAP社)」を通じて現地の人材紹介会社「Scientec Consulting Pte. Ltd.(STC社)」の株式の60%を3,978シンガポールドル(約322百万円)で取得した。STC社は2001年10月に創業、シンガポールに地域統括会社を設置している大手多国籍企業を対象にエクゼクティブリサーチや人材紹介、人材派遣を手掛けている。特にヘルスケアやライフサイエンス産業の人材供給に強みを持つ。2013年12月期の売上高は日本円で約450百万円、営業利益は約63百万円、当期純利益は約58百万円となっている。
ウィルグループは、経済成長率が高く、日本からの進出も増加傾向が続くアセアン地域を海外事業の中核に位置付けている。今回の買収は、海外事業の拡大はもとより、STC社の持つヘルスケアやライフサイエンス産業への人材サービスのノウハウを得ることを目的としている。アセアンは特にホワイトカラーにおいて人材派遣よりも人材紹介が多いといった市場構造への対応という側面もある。
WAP社は今後3年間で、STC社の全株式を取得する計画となっている。ちなみに今回の事業拡大に先立ち、ウィルグループからの出資で7月に7,400千シンガポールドル(約599,400千円)の増資を実施し、資本金は7,700千シンガポールドル(約623,700千円)となった。
「シェアハウス事業」
「ヒトに関わるあらゆるサービス」を事業の対象とする同社らしい新規事業である。シェアハウスは赤の他人同士が1つの家をシェアして生活することを指すが、同社は、ITエンジニアもしくは、それを目指している人だけを対象としたシェアハウスを運営している。2014年11月に東京・渋谷区神宮前に「テックレジデンス表参道」をオープン。共有スペースには専門書、テスト用実機、プロジェクター、ホワイトボードなどが備えられており、自宅で開発できる環境になっている。さらに同社は、定期的に勉強会などのイベントを実施し、住民同士の勉強の機会やコミュニティを形成する。
2016年に公共団体や金融機関でシステム改修が集中することが予想され、IT技術者が不足する恐れがあるという「2016年問題」が話題となっている。同社は、シェアハウスを通じてIT技術者のスキル向上や育成を行う。
2016年2月には、教育事業を展開する(株)ビジネス・ブレークスルー(代表取締役社長 大前研一(おおまえけんいち)氏、本社:東京都千代田区)が運営する「ビジネス・ブレークスルー大学」との協業イベントを実施。イベントでは「ビジネス・ブレークスルー大学」の学生とテックレジデンス表参道の住人が交流した。このように、単純に住居を提供するだけではないのが同社の運営するシェアハウスの特長だ。
併せて「ITエンジニアのみ」というコンセプトにとどまらず、様々なコンセプトのシェアハウスへと拡大していく。将来的には、安定した売却収入が得られるような事業になることを目指している。
シェアハウスは、不動産業界で最も注目されているビジネスの1つである。不動産業ではない同社が今後、どのようなユニークなビジネスモデルを展開してくれるか注目されよう。
「スマートフォンアプリ開発技術検定試験を活用した転職支援事業」
同社の子会社である(株)セントメディアが展開する、「ネット人材紹介事業」を通じて求人に応募する際、デジタル広告/マーケティング会社の(株)D2C(代表取締役社長 宝珠山卓志(ほうしゅやまたかゆき)氏、本社:東京都港区)が運営する「スマートフォンアプリ開発技術検定試験(スマ検)」で一定の点数以上を取得した応募者には書類選考を省いて面接試験から選考する権利が与えられる、というサービス。求人企業と求職者双方にとって無駄なく、合理的な採用ができる。第1弾として、このほど、システム開発の(株)グッドワークス(代表取締役 須合憂(すごうゆう)氏、本社:東京都千代田区)の採用で実施された。
「遠隔農場との業務・資本提携」
パソコンや携帯端末、ゲーム端末などで農場を結び、有機野菜の遠隔栽培をしている(株)テレファーム(代表取締役 遠藤忍(えんどうしのぶ)氏、本社:愛媛県松山市)と業務・資本提携を締結した。
テレファームは、農場の利用者がネットから作物や栽培法、使用資材を農場に指示し、栽培された野菜を受け取るというビジネスモデルを展開している。ウィルグループは、農場利用者の開拓と利用者が増加した際に必要になる人材の採用・育成を行う。これに伴い、テレファームの第三者割当増資を引き受けた。持分比率は10.7%となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤邦光)
<FA>