ソフトバンテク Research Memo(6):公共機関向けビジネスは好調、受注件数を着実に積み上げ
[15/04/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■2015年3月期第3四半期決算
(4)2015年3月期第3四半期トピックス
構造改革を進める同社には、2015年3月期第3四半期においても今後の成長への寄与が期待できるトピックスがいくつかある。以下に説明する。
(a)公共機関からの受注拡大
官公庁など公共機関向けビジネスは、新マーケットへの進出という側面のほかに、ソフトバンクグループとの“付き合い方”を少し変えるという大きな目的がある。
具体的には、ソフトバンクグループと営業面の連携を強化し、グループ内のサービスを組み込むなど、シナジーを活かすことによって、公共案件の受注につなげていくという考えである。
付き合い方を多少変更する理由は、以前から経営方針として進めている「グループ外からの受注拡大」を推進することで、グループの収益拡大に貢献するという意味もある。しかし、他にも理由がある。それは収益力の向上である。ソフトバンク・テクノロジー<4726>は明らかにしていないが、ソフトバンクグループ向けのビジネスはグループ外のビジネスに比べて限界利益率が低くなる模様である。
今まではソフトバンクグループ通信事業の業務支援を通じて、最先端の情報技術とノウハウを蓄積し、利益率の高いグループ外のビジネスに横展開するメリットを重視していた。しかし、同社自身の構造改革も進み、上場企業として独自の収益力の向上を意識しなければならない規模にまで成長した。顧客としてのソフトバンクグループも大切なことに変わりなく、新技術の吸収というメリットはもちろん、これからも享受するが、今後は、併せて収益力の向上も図ろうというのである。
同社の公共機関向けのビジネスは非常に好調に進んでいるようである。中央官庁などの国の行政機関のほか、県や政令指定都市、その他の公共機関に幅広く食い込んでいる。受注件数は30件弱と着実に積み上がっており、2015年3月期はプロジェクト総額の合計で数十億円規模になる可能性が高い。
これらの売上及び利益は第3四半期までに一部が計上されている模様だが、年度末にあたる第4四半期に集中する傾向があるため、第4四半期決算への収益貢献が期待される。また、一度、受注に成功し、実績を収めれば、その後は別の案件で随意契約になる可能性も期待できる。そういう意味で、公共機関の顧客を増やすことは、長期的に収益を支えることにもつながる。
ただ、公共機関向けのビジネスは、ジョイントベンチャーでの受注となるため、主幹事としてプロジェクトを受注しても、実際の同社の売上はプロジェクトの総額よりもかなり少なくなる。また、プロジェクトの期間が複数年に渡るため、各年度の売上への計上額はさらに少なくなる。足元においても収益貢献することは間違いないが、今後はソフトバンクグループ各社と手を携えて顧客基盤の拡大をさらに図るとともに、超大型の案件も受注できるような信頼を積み重ねることが課題となろう。
(b)独自開発商品(サービス)やオンリーワンサービスの大ヒット
2015年3月期第3四半期にも独自開発商品(サービス)やオンリーワンサービスの発売が進んだ。また、既存のオンリーワンサービスにも、同社創業以来の大ヒットとなるサービスが登場した。以下に説明する。
【ファイア・アイのメール専用標的型攻撃対策クラウドサービス「FireEye Email Threat Prevention(ETP)」】
メールによるサイバー攻撃は最も広く使われる攻撃手段のひとつである。特に特定のターゲットの重要なデータや個人情報を奪おうとする標的型サイバー攻撃「スピア・フィッシング攻撃」は従来型のセキュリティ対策では十分にカバーできない問題があった。
ETPは、このようなメールによる高度な標的型サイバー攻撃からネットワークを保護できるクラウドサービスである。米国ファイア・アイ社(本社:カリフォルニア州)の製品をソフトバンク・テクノロジーが日本で初めて発売した。
導入すると、メールが自動的にETPに転送され、すべてのメール添付ファイルと本文中のURLを解析し、攻撃だった場合にはリアルタイムで防御する。ファイア・アイ社の特許技術である「MVXエンジン」を活用して既存の攻撃型とは違う攻撃型であっても、防御できるのが最大の特徴となっている。
新規事業の目玉として、2015年1月下旬からサービスを開始した。本来は2014年7月にスタートする予定だったが、サービスの立ち上がりが遅れたという。後に説明する2015年3月期通期の業績予想にも影響を与えた。
初年度は、20社の導入を目指すという。料金は利用企業の規模で異なるが、従業員1,000名で5年間使った場合で、売上高は累計2,600百万円となる。ETPは、クラウド環境下ならば、簡単に導入できる。そのため、ソフトバンク・テクノロジーが導入を行った約30万に上るOffice 365のユーザーや、グループ企業のソフトバンクテレコムが保有する約80万のグーグルアップスユーザーへの展開が期待できる。そう遠くない将来に大型商品になる可能性が極めて高い。
【データアナリティクス事業で新サービスを発売】
ビッグデータに代表されるデータアナリティクス事業は、注力3事業の中でもこれから特に市場の急成長が期待される分野である。同社も2015年1月にクラウド型自社サービスである「4DP Log Search」、自社開発サービスの「AdMetrics」を発売した。
「4DP Log Search」は複数のサーバーやネットワーク機器からログを自動的に収集し、高速での検索ができるうえ、収集したログの分析結果を可視化できる。「AdMetrics」は、広告が実際の商品の売上に与えた効果を同社の専門分析官が最先端の統計手法で分析し、その分析結果をもとに広告への投資金額のポートフォリオ最適化を実現する。
【「Online Service Gate」の累計ユーザー数10万件を突破】
売上高の分析でも触れたが、マイクロソフトソリューション事業における自社開発のクラウドサービスである「Online Service Gate」と「ADFS on Cloud」が大ヒット商品となった。特に「Online Service Gate」は2014年11月に累計導入数が10万ユーザーを越えた。2014年3月期比90%を越える伸び率である。
「Online Service Gate」はクラウドネットワークのアクセスコントロールサービスである。オプションなしでモバイルファーストに対応できる「Professional版」と接続先サービスを無制限にした「Enterprise版」の2つのラインナップがある。2010年の発売以来、顧客の視点に立った機能拡張や、連携サービスの拡大を進め続けた点などが顧客から高い評価を受けたものと思われる。
【ミラクル・リナックスとユビキタス共同開発による車載機器向けLinux統合ソリューション】
ミラクル・リナックス(株)と、ユビキタス<3858>が2015年1月に車載機器向けのLinux統合ソリューションを開発した。電源が切れた後に再起動すると、通常は、数十秒かかるが、この統合ソリューションを使うと、数秒で起動する。世界の大手自動車メーカーや電機メーカーが参加している自動車関連システム構築のための共同ワーキンググループである「Automotive Grade Linux(AGL)」が採用している車載情報機器向けプラットフォーム「Tizen IVI 3.0」をベースに構築されている。まだプロトタイプではあるが、自動車分野への進出の第一歩として今後の展開が注目される。
(c)サイバートラストがRenazon Technology社と資本業務提携
2014年11月、サイバートラスト(株)がシンガポールのシステムインテグレーターであるRenazon Technologyの発行済み株式の50%を取得した。Renazon社はシンガポールに拠点を持つグローバル企業や地元の有力企業に対し、セキュリティ及びITサービスを展開しており、サイバートラストの持つセキュリティ技術とRenazonが持つ顧客基盤とを融合させてシンガポールを中心とした東南アジアエリアへのセキュリティ関連サービスの提供を行うことが目的である。収益への貢献はまだ先だが、海外への進出という面で、エポックメイキングと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)
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