ソーバル Research Memo(2):カスタマイズ性の高い特殊なソフトウェア開発受託が主力
[15/04/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■2015年2月期連結決算
(1)概要
ソーバル<2186>は、ファームウェアという、電機機器の性能向上に不可欠なうえ、カスタマイズ性の高い特殊なソフトウェアの開発受託を主力業務にしている。同分野で唯一の上場企業である。また、近年は、業務系やWeb系のソフト開発にも力を入れるとともに、M&Aにも積極的に取り組み、事業領域を着々と拡大している。また、経営の基本方針として「安定成長の継続」を掲げ、着実な業績向上を実現している。2015年2月期決算も、この基本方針どおりに事業が運営されていることを裏付ける結果となった。
2015年2月期の売上高は前年同期比4.5%増の6,920百万円、営業利益は同6.4%増の551百万円、経常利益は同8.5%増の560百万円、当期純利益は同10.3%増の333百万円となった。本社移転のための一時的な経費48百万円を計上したにも関わらず、この費用を吸収した。同社の業績予想に比べて売上高・利益ともに上振れし、5期連続の増収・増益となった。特に売上高は過去最高を更新した。リーマンショック後の2010年2月期で減益となって以降、右肩上がりの成長を続けている。
売上高に関しては、同社予想比で3.3ポイントの上振れとなった。要因は、3つ挙げられる。第1は、新規顧客の開拓が順調に進んだ点である。例えば、リクルートホールディングス<6098>グループや、東芝<6502>及び同グループ各社からの受注を獲得した。さらに、注目ポイントとして、既存顧客でも従来とは別の部署からの受注獲得に成功したことが挙げられる。同社が長年にわたり培ってきた顧客からの信頼が受注に結び付いたと言えよう。
第2は、本社の移転である。移転によって、作業効率が大きく向上し、より多くの案件に対応できるようになった。同社は、2014年6月に本社を東京都大田区から品川区北品川に移転した。同時に大田区に2ヶ所、神奈川県川崎市の川崎区と幸区に1ヶ所ずつあった事業所のうち、川崎市の2ヶ所を本社に集約した。これによって、エンジニアや営業社員など約200人が1ヶ所で業務を行う体制となり、情報・ノウハウの共有化が急速に進み、ソフトウェア開発の受託案件の作業が想定を上回って効率化された。同社はすでに人員の年間平均稼働率が97%という高い状況が続いており、今までの体制のままでは、更なる作業の効率化は困難だった。
第3は、2012年9月に子会社化した組込システムインテグレーターのMCTECが収益貢献を果たせるようになった点である。2014年2月期までは、売上高は事業計画を下回り、損益面では赤字の状況だったが、事業再構築がうまく進んだことによって、売上高が計画を上回り、黒字化も達成できた。同社にとって大きな懸念材料の1つだったMCTECが収益貢献できるようになったことは大きな意味があると言えよう。すでに収益に大きく貢献している子会社の(株)コアードと、ソーバル本体の3社の協業が、収益拡大を加速させることも期待できよう。
一方、利益面では、営業利益が当初予想比2.0ポイント、経常利益が同2.4ポイント、当期純利益が同4.1ポイントそれぞれ上振れした。この要因としては、以下の3点が挙げられる。
第1は、売上高の上昇に伴う利益の押し上げと、高付加価値案件の増加である。高付加価値案件の増加の背景には、デジタル機器の性能競争の激化がある。メーカー各社は生き残りのためにより高い性能を持つ機器の開発を進めており、その中核となるファームウェアも従来以上に高付加価値化が求められるようになってきている。
ただ、こういった背景による恩恵だけで増益となったわけではない。売上増加要因でも説明した本社移転による作業の効率化が増益を支えた点が大きい。また、同社が長年培ってきた高い技術力と、エンジニアが顧客の要求に応えられる技術力を保有しているからこそ、高付加価値化の要求に応えられたという点も忘れてはなるまい。
第2は、新卒者が戦力になるまでの期間の短さである。同社は新卒といってもスキルを重視した採用を行い、かなりレベルの高い人材のみを採用している。そのうえ、現場での作業を通じてスキルを磨かせる同社独自の教育システムによって、無理なく早期にスキルを身に着けられるようになっている。そのため、14年春の49人の新卒採用のうち、一部は入社2ヶ月程度で収益貢献できるようになるまでにスキルを体得したという。また、同社によれば、1年以内に全員が収益貢献できるレベルに成長することが期待できるという。新卒採用を積極的に行っている企業の場合、ベテラン技術者の定年などで本来はマンパワーが一時的に不足し、利益の圧縮要因になるのが普通のはずだが、同社は、新卒を早期に戦力化することによって、このようなことが起こりにくい体制となっている。
そして、第3は、子会社2社が利益貢献している点が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)
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(1)概要
ソーバル<2186>は、ファームウェアという、電機機器の性能向上に不可欠なうえ、カスタマイズ性の高い特殊なソフトウェアの開発受託を主力業務にしている。同分野で唯一の上場企業である。また、近年は、業務系やWeb系のソフト開発にも力を入れるとともに、M&Aにも積極的に取り組み、事業領域を着々と拡大している。また、経営の基本方針として「安定成長の継続」を掲げ、着実な業績向上を実現している。2015年2月期決算も、この基本方針どおりに事業が運営されていることを裏付ける結果となった。
2015年2月期の売上高は前年同期比4.5%増の6,920百万円、営業利益は同6.4%増の551百万円、経常利益は同8.5%増の560百万円、当期純利益は同10.3%増の333百万円となった。本社移転のための一時的な経費48百万円を計上したにも関わらず、この費用を吸収した。同社の業績予想に比べて売上高・利益ともに上振れし、5期連続の増収・増益となった。特に売上高は過去最高を更新した。リーマンショック後の2010年2月期で減益となって以降、右肩上がりの成長を続けている。
売上高に関しては、同社予想比で3.3ポイントの上振れとなった。要因は、3つ挙げられる。第1は、新規顧客の開拓が順調に進んだ点である。例えば、リクルートホールディングス<6098>グループや、東芝<6502>及び同グループ各社からの受注を獲得した。さらに、注目ポイントとして、既存顧客でも従来とは別の部署からの受注獲得に成功したことが挙げられる。同社が長年にわたり培ってきた顧客からの信頼が受注に結び付いたと言えよう。
第2は、本社の移転である。移転によって、作業効率が大きく向上し、より多くの案件に対応できるようになった。同社は、2014年6月に本社を東京都大田区から品川区北品川に移転した。同時に大田区に2ヶ所、神奈川県川崎市の川崎区と幸区に1ヶ所ずつあった事業所のうち、川崎市の2ヶ所を本社に集約した。これによって、エンジニアや営業社員など約200人が1ヶ所で業務を行う体制となり、情報・ノウハウの共有化が急速に進み、ソフトウェア開発の受託案件の作業が想定を上回って効率化された。同社はすでに人員の年間平均稼働率が97%という高い状況が続いており、今までの体制のままでは、更なる作業の効率化は困難だった。
第3は、2012年9月に子会社化した組込システムインテグレーターのMCTECが収益貢献を果たせるようになった点である。2014年2月期までは、売上高は事業計画を下回り、損益面では赤字の状況だったが、事業再構築がうまく進んだことによって、売上高が計画を上回り、黒字化も達成できた。同社にとって大きな懸念材料の1つだったMCTECが収益貢献できるようになったことは大きな意味があると言えよう。すでに収益に大きく貢献している子会社の(株)コアードと、ソーバル本体の3社の協業が、収益拡大を加速させることも期待できよう。
一方、利益面では、営業利益が当初予想比2.0ポイント、経常利益が同2.4ポイント、当期純利益が同4.1ポイントそれぞれ上振れした。この要因としては、以下の3点が挙げられる。
第1は、売上高の上昇に伴う利益の押し上げと、高付加価値案件の増加である。高付加価値案件の増加の背景には、デジタル機器の性能競争の激化がある。メーカー各社は生き残りのためにより高い性能を持つ機器の開発を進めており、その中核となるファームウェアも従来以上に高付加価値化が求められるようになってきている。
ただ、こういった背景による恩恵だけで増益となったわけではない。売上増加要因でも説明した本社移転による作業の効率化が増益を支えた点が大きい。また、同社が長年培ってきた高い技術力と、エンジニアが顧客の要求に応えられる技術力を保有しているからこそ、高付加価値化の要求に応えられたという点も忘れてはなるまい。
第2は、新卒者が戦力になるまでの期間の短さである。同社は新卒といってもスキルを重視した採用を行い、かなりレベルの高い人材のみを採用している。そのうえ、現場での作業を通じてスキルを磨かせる同社独自の教育システムによって、無理なく早期にスキルを身に着けられるようになっている。そのため、14年春の49人の新卒採用のうち、一部は入社2ヶ月程度で収益貢献できるようになるまでにスキルを体得したという。また、同社によれば、1年以内に全員が収益貢献できるレベルに成長することが期待できるという。新卒採用を積極的に行っている企業の場合、ベテラン技術者の定年などで本来はマンパワーが一時的に不足し、利益の圧縮要因になるのが普通のはずだが、同社は、新卒を早期に戦力化することによって、このようなことが起こりにくい体制となっている。
そして、第3は、子会社2社が利益貢献している点が挙げられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)
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