トライステージ Research Memo(5):主力TV事業は、2018年2月期に売上高370億円を見込む
[15/05/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期計画
(2)事業別戦略
○TV事業
トライステージ<2178>の主力事業であるTV事業では、バリューチェーンごとに収益拡大施策を推進していく。その基盤となるのは、前期までにほぼ完成した月間2〜3万枠に上る放送枠の対費用効果に関するデータベースとなる。
TV番組枠・広告枠の仕入れ面においては、データベースによる販売予測枠効果実績に基づく最適な仕入れが可能となったほか、放送局や広告代理店と仕入価格の交渉ができるようになり、収益性を落とすことなく仕入枠の拡大を進めていくことが可能となった。
また、番組制作においては従来、インフォマーシャル型の制作が中心であったが、今後は販売効果の高い自社通販番組の制作も行っていく。時間枠としては30分程度と短時間から始め、番組内容は健康食品や化粧品など業種を絞った専門通販番組としていく予定だ。
TV番組枠・広告枠の販売に関しては、データベースの完成により販売最低価格の設定が可能となったほか、顧客に最適な放送枠の提案を行えるようになるなど、従来よりも営業提案力が格段に向上したことで、「映像でモノを売る力」がより強化された格好となり、既存顧客の販売拡大だけでなく、新業種、新規顧客の獲得も加速化していくものとみられる。
これら施策を推進していくことで、売上高は2018年2月期で370億円と前期比52%増を見込んでいる。課題となるのは、売上拡大を進めていくための営業リソースの拡充となる。同社の主力顧客であるダイレクトマーケティング企業への営業は、経験・ノウハウなどが必要なため、人材育成には最低でも1年はかかるためだ。このため、同社ではダイレクトマーケティングを得意とする中小規模の広告代理店を取得し、人材をまとめて確保することも検討している。
一方、仕入面に関しても従来は広告代理店から放送枠を仕入れてきたが、今後は放送局からの直接仕入れも進めていきたい考えで、新たに放送枠の仕入れを専門とする子会社をつくる可能性もある。
○DM事業
子会社のMCCのDM事業に関しては2013年2月期の子会社化以降、のれん償却前営業利益率で1%程度と伸び悩みが続いている。子会社化以前は営業利益率で1%以下であったことから、子会社化で若干は収益性も改善しているが、当初想定していたよりも向上していないのが実情だ。最大の要因は、売上高の8割が代理店経由でのビジネスで占められていることにある。
このため今後は直販比率を上げていくほか、従来の「発送・作業」サービスだけでなく、新たに高付加価値サービス(制作・印刷・データ処理作業等)へ事業領域を拡大し、2018年2月期の売上高は前期比32%増の100億円を目指していく。2015年2月より、Web印刷通販サービス「メルプリ」を開始しており、直販の顧客を中心にサービスを展開し、今後は新規顧客の開拓も含めて売上げの拡大を進めていく方針だ。
なお、同社とMCCとのシナジーについてはまだ不十分であり、今後の継続課題となっている。MCCの主力サービスが「発送・作業」とDM事業の中でも川下分野が中心であり、CRM(顧客管理)やDM制作、印刷など川上分野が弱かったことで、トータルで見たコストメリットを提案できていないことが要因の1つと考えられる。このため、新たにCRM分野などのノウハウを持つ企業をM&Aで取得することも検討している。
○海外事業
海外事業では前期までに、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、インドネシア、台湾の6ヶ国でテストマーケティングを実施し、本格的な事業化に向けた準備を進めてきた。今期より日本企業向けのマルチチャネル型通販支援事業※を本格展開していくほか、顧客企業に代わってBtoCビジネスも本格的に開始していく予定となっている。2018年2月期の売上高は前期の3千万円から55億円を目指していく。
※マルチチャネル型通販支援・・・TVインフォマーシャルだけでなく、アウトバウンズ、EC、リテール(店舗流通)を含めたサービス
なお、今期中にも海外事業を統括する持株会社と、各国に現地法人を順次設立していく予定のほか、BtoC事業を行うためのインフラ構築のため、現地通販企業をM&Aで取得していくことも検討している。同事業を拡大していくためには、人的リソースが課題となるため、今期より人員増強も進めていく。
○Web広告事業
Web広告事業については、TV広告のアセット、強みを活かした新サービスを近々にリリースするほか、TVとWeb連動型広告、動画広告などの取り組みを推進していく。
TVとWebの連動型広告とは、同社がここ1〜2年取り組んできたオフラインアトリビューションサービスで蓄積したデータ、ノウハウを活かした広告となる。オフラインアトリビューションサービスとは、通販企業が売上げの最大化を実現するために媒体ごとに投下しているマーケティング費用のROIの全体最適化を実現するサービスのことで、現在はWebデータを定期的に提供する企業向けに無料でサービス提供している。
テレビの通販番組を視聴して商品を注文する場合は、従来は大半が電話での注文であったが、インターネットの普及によって最近では全体の約2割がWeb経由での注文になっており、これらはWeb注文としてカウントされている。このため、媒体別マーケティング費用のROIを算出した場合、実態よりもテレビ媒体の価値が低くなる傾向となり、これがここ数年のテレビ媒体への出稿費用抑制の一因につながったとみている。
同社はこうしたWeb経由での商品購入者のうち、テレビなどのオフラインメディアを見てWeb注文をした件数を捕足し、この分析結果をもとにWebとTVのマーケティング費用配分を最適化(テレビ向けの配分比率を引き上げ)することで、売上げの最大化につなげていく取り組みを進め、実際こうした予算配分の最適化を行ったことで、従来よりも約4割売上げが伸びるケースも出ている。
今回は同サービスを無料化する代わりに、通販企業から定期的にWebデータを収集・蓄積していくことで、今まで以上に効果的なTVとWeb連動型広告を提供していくことが可能になると同社ではみている。
その他、ネットの動画広告に関しては徐々に普及し始めているが、通販企業の動画広告に関してもテレビのクリエイティブ制作能力を活かして新たに取り組んでいく予定にしている。ネットの動画広告に関しては新規参入となるため、ノウハウを持つ最適なパートナー企業を探索中であるほか、Web広告に詳しい人材を3名ほど採用する予定としている。
同社ではこうした取り組みを推進していくことで、Web広告事業の売上高を前期の1.2億円から2018年2月期には30億円を目指していく計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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