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ダイナムジャパンHD Research Memo(3):大規模な店舗リニューアルと顧客還元の増加

注目トピックス 日本株
■2014年度の業界環境

ダイナムグループのチャレンジ

同社グループは、前述の負の連鎖を断ち切るべく、2015年3月期第4四半期に思い切った施策を打った。それは大規模な店舗リニューアル及び顧客還元の増加である。結論から言えば、これらの施策の効果は明白であった。以下、ダイナムグループの施策を詳述する。

(1)店舗リニューアル

同社グループが客足回復のために行ったことは、店舗のリニューアルである。高貸玉店舗40店について短期集中的にリニューアルを行った。

高貸玉店舗をリニューアル対象にしたのは2つの理由があると考えられる。1つは、ここ数年、低貸玉店舗中心の出店が続いているため、相対的に高貸玉店舗に店舗年数の古い店舗が多くなってきたということである。もう1つは、高貸玉店舗の方が低貸玉店舗に比較して店舗営業利益が高いため、客足が戻った際の営業増益効果が大きいということである。

リニューアル項目は、床、壁クロス、トイレ、外壁、外周、広告塔、駐車場(舗装・線引き)、椅子等、内外装の主要部分すべてが対象とされた。店舗の直近のメンテ状況に応じてリニューアルの内容は差があるが、全40店がクロスを貼り換えたほか、半数以上ではトイレを一新し、10店舗近くでは床の張り換えを行った。また、ほぼ全店で外壁・外周・広告塔をリニューアルしたほか、8〜9割の店舗で、椅子、幕板、妻板を更新した。このような大規模リニューアルによって、店舗のイメージを新築に近いところまで仕上げることに成功した。

店舗リニューアルにかかった費用は、店舗によって様々であるが、1店舗当たり平均50百万円とすれば総額2,000百万円ということになる。このうちの一部が2015年3月期中の費用として計上され、残りは資産計上されて、その分についての減価償却費が同様に費用として計上された。また、リニューアル期間中の休業による機会損失も利益押し下げ要因となった。

同社グループはまた、上記の特別店舗リニューアルのほかにも、店舗人件費削減の効果があるパーソナルシステムの導入、人気機種の導入、販促強化などの店舗投資の諸施策を行った。上記の店舗リニューアルとこれらの店舗投資の総額の減益要因として、約1,500百万円の影響があったと弊社では試算した。

(2)顧客還元の増加

もう1つの施策は、顧客還元の増加である。出玉率が比較的低い店舗には客足が向かわない傾向になるのは当然であるが、店側にも客足が鈍ってくると粗利益率上昇させることで利益を確保せざるを得ないという状況がある。前述のように、業界全体としては出玉率低下(=店の粗利益率上昇)⇒客足鈍化⇒粗利益率引き上げ⇒客足さらに鈍化・・・という負の連鎖に陥り、その連鎖から抜け出せないという状況である。

それに対してダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は、機種構成の変更で顧客還元を増加させる手段に打って出た。具体的にはパチンコで1.3%ポイント、パチスロで0.7%ポイント、それぞれ出玉率を向上させ、顧客還元を増やした。顧客還元の増加による営業利益への減益インパクトについて、弊社では約3,000百万円と推定している。

(3)効果

客足の落ち込みに対し、同社は身を切る努力を行ったわけであるが、その効果は顕著であった。店舗の稼働状況に指数であるパチンコ稼働数(機械1台の1日当たり玉打出し数)は、2015年第3四半期は21,000発前後に低迷していたが、第4四半期には23,000発を超えて期中の最高水準にまで回復した。出玉率引き上げによる効果が大きいと考えられるが、リニューアルを実施した40店舗の個店毎の状況でも、リニューアル前後ではほとんどの店舗で明確に客足が回復したことが確認できている模様である。

同社グループでは、リニューアル及び顧客還元の増加による集客回復効果が明確に認められるとして、2016年3月期に入っても同様の施策を継続して行う方針である。具体的には、2015年4月〜5月にかけて約50店舗のリニューアルを実施しているほか、6月以降もリニューアルを継続する予定である。

(4)他社との競争優位性について

同社グループが行った施策の効果がひとまずは確認できたことは、ポジティブに評価できる。ただし、これらの施策はパチンコ参加人口を増加に転じさせるほどのインパクトがあるとは言い難いため、他社が同社の施策に追随した場合、同社の競合優位性がどうなるか、がポイントとなってくる。

結論から言えば、弊社では、一部の体力のある競合店との関係では優位性が薄れる可能性は否定できないが、大多数を占める中小ホール会社との関係では、競争優位性は保たれるであろうと考えている。

そのように考える理由は、企業としての体力差にある。前述のように、同社グループは顧客還元を増加させたが、それは同社の営業利益に大きな減益インパクトをもたらした。同社グループはそれをやる余裕があったが、大多数の中小ホールはそうした思い切った施策を打つ余裕はないのではいかとみられる。

また、店舗リニューアルについても、同社グループの店舗当たりのリニューアル費用は他社に比べて大きく圧縮されていると推測される。それは、かねて同社がチェーンストア理論に基づいて経営を行ってきたなかで、店舗の標準化も進めて来たためである。同社グループは店舗のデザイン及び仕様を標準化し、リニューアルについても、工事業者に複数店舗のリニューアルをまとめて発注することによる、スケールメリットを獲得している。このように同社グループはスケールメリットによるリニューアル費用の圧縮を前提にリニューアル計画を立てて実行できるが、スケールメリットを享受できない中小の競合ホールの中には、費用対効果を考えた場合にリニューアルを断念せざるを得ないケースも多いと考えられる。ましてや、同社グループのように、顧客還元の増加及びリニューアルの2つの施策を同時に打てる企業はかなり限定的なのではないかと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)




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