キトー Research Memo(4):ピアレス社買収等で大幅増収
[15/06/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
(1)2015年3月期(実績)
●ピアレス(PEERLESS)社買収の概要
キトー<6409>は2014年8月に北米最大のチェーン製造会社であるピアレス社(PEERLESS INDUSTRIAL GROUP, INC)の全株式を取得して完全子会社化した。会社によれば、この買収の目的は、同社グループの最大の売上地域である北米事業を強化するため、及びチェーン製品の品揃えを拡充するため、重要部品であるチェーン製造機能を強化するためである。
ピアレス社の2013年6月期の実績は、連結売上高 118 百万ドル(11,800 百万円)、連結総資産 97 百万ドル(9,700 百万円)、連結純資産 25 百万ドル(2,500 百万円)であった。主要製品は、1.ホイスト機器向けチェーン(前年度売上構成比率約25%)、2.積荷用、牽引用、固定用のチェーン(同20%)、3.タイヤチェーン(同25%)、4.ハードウェアチェーン(同15%)、5.海洋用(錨用、係留用)チェーン(同10%)、6.その他(同5%)となっており、1および2の製品は同社製品と重複するが、3〜6の製品は同社が持っていない製品であることから、この買収によって製品ラインアップが強化される。
株式取得額は77百万USドル、ピアレス社の借入金の肩代わりを含めた買収総額は約120百万USドルであったが、すべて邦銀からの借入れで調達した。のれん代として 約 5,000百万円を計上し、これを10年間で償却する予定である。ピアレス社の売上高(前年度実績)は円換算で約11,800百万円、営業利益(同)は約1,000百万円であったが、2015年3月期は下半期から連結決算に反映された。そのため半期の業績寄与は、売上高で約6,800百万円であった。
●損益状況
2015年3月期は売上高で49,968百万円(前期比19.4%増)、営業利益で3,395百万円(同15.2%減)、経常利益で3,423百万円(同16.4%減)、当期純利益で2,026百万円(同14.2%減)となった。売上高は円安効果及び買収した子会社の影響で大幅増収となったが、中国での予想以上の低迷及びタイでの不採算案件が発生したことなどにより、営業利益以下は前期比で減益となった。
セグメント別の状況は以下のようであった。(注:売上高は決算説明会資料ベース、営業利益は決算短信ベースとなっている。)
(日本)
日本は売上高で11,702百万円(前期比0.7%増)、営業利益で4,726百万円(同12.7%増)となった。民間設備投資向けの需要はゆるやかに拡大したが、一方で建築土木関連工事は遅れが出ており、需要は予想したほど伸びなかった。利益面においては、利益率の高い米国子会社向け販売が好調に推移したことから2桁の増益となった。増収・増益ではあったが、「当初期待したほどではなかった」と会社は述べている。
(米州)
米州は売上高で21,888百万円(同67.9%増)、営業利益で744百万円(同17.6%減)となった。売上高が大幅増となったのは主にピアレス社の影響によるが、ピアレス社分を除いても6%増となった。特に米国は製造業、エネルギー関連を中心とした需要が期を通して堅調に推移したことから、ピアレス社分を除いても9%増となった。その一方でカナダでは対照的に、石油投資関連(オイルシェール等)の影響を受けて不振であり、売上高は前期比で約8%減となった。
セグメント利益が前期比で減益となっているが、これはカナダ子会社が不振であったことに加え、好調であった米国子会社では在庫の評価替え(親会社から仕入れた製品の未実現利益の消去)によって会計上の利益が減少したためで、内容的には決して悪いものではなかった。
(中国)
中国では同社製品に対する評価は高く市場シェアは高まっているが、経済減速による市場全体の落ち込みの影響を受けて同社製品への需要も低迷した。売上高は8,198百万円(同4.7%減)であったが円安によって底上げされており、現地通貨ベースでは2桁のマイナスとなった模様である。営業利益は836百万円(同12.4%減)となり、売上高の減少に伴い減益となった。
(アジア)
アジアは売上高で5,676百万円(同8.0%減)、営業損益で374百万円の損失(前期は459百万円の利益)となり、差引き833百万円の減益となった。このアジアの不振が今期減益の最大要因であるが、特にタイが大きく足を引っ張った。
タイが不振であった第一の理由は、政情不安の影響を受けて需要が急激に落ちこんだのちも、需要が回復しなかったことであり、第二の理由は主力のクレーン事業の収益性が悪化したことである。同社は2年前に第2工場を建設しており、クレーン需要が落ち込むなかで工場の稼動を上げるべくトップラインの確保に注力したものの、受注案件には採算性に劣るプロジェクトなどあり、全体の収益を押し下げる結果となった。アジア事業が急成長するなかで、案件毎の採算管理などが後手になったのは否めないものの、既に利益管理の徹底策と、クレーン事業に加えて巻き上げ機の流通販売を強化するなど、既に打つべき手を打っているとのこと。期央にはタイの体制を立て直し、不採算案件を完工し終えることから、今期(2016年3月期)には黒字に転換する見込みである。
(欧州・その他)
欧州の売上高は1,823百万円(同9.5%増)とまずまずであったが、中身は明暗が分かれている。中心となるドイツの状況は厳しく減収となったが、その他(イタリア等)で補いセグメントとしては増収を確保した。
●財政状況
2015年3月期末の財政状況は下表のようになった。流動資産は40,478百万円(前期末比12,558百万円増)となった。主要科目では現預金9,792百万円(同3,562百万円増)、受取手形及び売掛金12,593百万円(同3,179百万円増)となった。固定資産は22,703百万円(同9,522百万円増)となり、内訳は有形固定資産12,161百万円(同2,158百万円増)、無形固定資産9,009百万円(同7,815百万円増)、投資その他資産1,532百万円(同450百万円減)となった。この結果、資産合計は63,138百万円(同22,075百万円増)と大幅増となったが、主にピアレス社買収による。
流動負債は17,093百万円(同4,565百万円増)となったが、主な変動は買掛債務の増加864百万円、短期借入金の増加312百万円などである。固定負債は20,464百万円(同13,888百万円増)と大幅に増加したが、ピアレス社買収などにより 長期借入金が13,220百万円増加したことが主な要因である。純資産は25,626百万円(同3623百万円増)となったが、主に当期純利益の計上による利益剰余金の増加1,878百万円及び、為替換算調整勘定の増加1,752百万円による。
●キャッシュフローの状況
2015年3月期のキャッシュフローは下表のようであった。営業活動によるキャッシュフローは3,338百万円のプラス(前期4,056百万円)となったが、主な収入はたな卸資産の減少1,004百万円(同535百万円)、仕入債務の減少916百万円(同284百万円)などである。投資活動によるキャッシュフローは8,402百万円のマイナス(同2,729百万円)となったが、主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出7,840百万円による。財務活動によるキャッシュフローは7,050百万円のプラス(同465百万円)となったが、主に長期借入金の増加15,824百万円による。この結果、期末の現金及び現金同等物の残高は9,777百万円(前期末比3,558百万円増)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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(1)2015年3月期(実績)
●ピアレス(PEERLESS)社買収の概要
キトー<6409>は2014年8月に北米最大のチェーン製造会社であるピアレス社(PEERLESS INDUSTRIAL GROUP, INC)の全株式を取得して完全子会社化した。会社によれば、この買収の目的は、同社グループの最大の売上地域である北米事業を強化するため、及びチェーン製品の品揃えを拡充するため、重要部品であるチェーン製造機能を強化するためである。
ピアレス社の2013年6月期の実績は、連結売上高 118 百万ドル(11,800 百万円)、連結総資産 97 百万ドル(9,700 百万円)、連結純資産 25 百万ドル(2,500 百万円)であった。主要製品は、1.ホイスト機器向けチェーン(前年度売上構成比率約25%)、2.積荷用、牽引用、固定用のチェーン(同20%)、3.タイヤチェーン(同25%)、4.ハードウェアチェーン(同15%)、5.海洋用(錨用、係留用)チェーン(同10%)、6.その他(同5%)となっており、1および2の製品は同社製品と重複するが、3〜6の製品は同社が持っていない製品であることから、この買収によって製品ラインアップが強化される。
株式取得額は77百万USドル、ピアレス社の借入金の肩代わりを含めた買収総額は約120百万USドルであったが、すべて邦銀からの借入れで調達した。のれん代として 約 5,000百万円を計上し、これを10年間で償却する予定である。ピアレス社の売上高(前年度実績)は円換算で約11,800百万円、営業利益(同)は約1,000百万円であったが、2015年3月期は下半期から連結決算に反映された。そのため半期の業績寄与は、売上高で約6,800百万円であった。
●損益状況
2015年3月期は売上高で49,968百万円(前期比19.4%増)、営業利益で3,395百万円(同15.2%減)、経常利益で3,423百万円(同16.4%減)、当期純利益で2,026百万円(同14.2%減)となった。売上高は円安効果及び買収した子会社の影響で大幅増収となったが、中国での予想以上の低迷及びタイでの不採算案件が発生したことなどにより、営業利益以下は前期比で減益となった。
セグメント別の状況は以下のようであった。(注:売上高は決算説明会資料ベース、営業利益は決算短信ベースとなっている。)
(日本)
日本は売上高で11,702百万円(前期比0.7%増)、営業利益で4,726百万円(同12.7%増)となった。民間設備投資向けの需要はゆるやかに拡大したが、一方で建築土木関連工事は遅れが出ており、需要は予想したほど伸びなかった。利益面においては、利益率の高い米国子会社向け販売が好調に推移したことから2桁の増益となった。増収・増益ではあったが、「当初期待したほどではなかった」と会社は述べている。
(米州)
米州は売上高で21,888百万円(同67.9%増)、営業利益で744百万円(同17.6%減)となった。売上高が大幅増となったのは主にピアレス社の影響によるが、ピアレス社分を除いても6%増となった。特に米国は製造業、エネルギー関連を中心とした需要が期を通して堅調に推移したことから、ピアレス社分を除いても9%増となった。その一方でカナダでは対照的に、石油投資関連(オイルシェール等)の影響を受けて不振であり、売上高は前期比で約8%減となった。
セグメント利益が前期比で減益となっているが、これはカナダ子会社が不振であったことに加え、好調であった米国子会社では在庫の評価替え(親会社から仕入れた製品の未実現利益の消去)によって会計上の利益が減少したためで、内容的には決して悪いものではなかった。
(中国)
中国では同社製品に対する評価は高く市場シェアは高まっているが、経済減速による市場全体の落ち込みの影響を受けて同社製品への需要も低迷した。売上高は8,198百万円(同4.7%減)であったが円安によって底上げされており、現地通貨ベースでは2桁のマイナスとなった模様である。営業利益は836百万円(同12.4%減)となり、売上高の減少に伴い減益となった。
(アジア)
アジアは売上高で5,676百万円(同8.0%減)、営業損益で374百万円の損失(前期は459百万円の利益)となり、差引き833百万円の減益となった。このアジアの不振が今期減益の最大要因であるが、特にタイが大きく足を引っ張った。
タイが不振であった第一の理由は、政情不安の影響を受けて需要が急激に落ちこんだのちも、需要が回復しなかったことであり、第二の理由は主力のクレーン事業の収益性が悪化したことである。同社は2年前に第2工場を建設しており、クレーン需要が落ち込むなかで工場の稼動を上げるべくトップラインの確保に注力したものの、受注案件には採算性に劣るプロジェクトなどあり、全体の収益を押し下げる結果となった。アジア事業が急成長するなかで、案件毎の採算管理などが後手になったのは否めないものの、既に利益管理の徹底策と、クレーン事業に加えて巻き上げ機の流通販売を強化するなど、既に打つべき手を打っているとのこと。期央にはタイの体制を立て直し、不採算案件を完工し終えることから、今期(2016年3月期)には黒字に転換する見込みである。
(欧州・その他)
欧州の売上高は1,823百万円(同9.5%増)とまずまずであったが、中身は明暗が分かれている。中心となるドイツの状況は厳しく減収となったが、その他(イタリア等)で補いセグメントとしては増収を確保した。
●財政状況
2015年3月期末の財政状況は下表のようになった。流動資産は40,478百万円(前期末比12,558百万円増)となった。主要科目では現預金9,792百万円(同3,562百万円増)、受取手形及び売掛金12,593百万円(同3,179百万円増)となった。固定資産は22,703百万円(同9,522百万円増)となり、内訳は有形固定資産12,161百万円(同2,158百万円増)、無形固定資産9,009百万円(同7,815百万円増)、投資その他資産1,532百万円(同450百万円減)となった。この結果、資産合計は63,138百万円(同22,075百万円増)と大幅増となったが、主にピアレス社買収による。
流動負債は17,093百万円(同4,565百万円増)となったが、主な変動は買掛債務の増加864百万円、短期借入金の増加312百万円などである。固定負債は20,464百万円(同13,888百万円増)と大幅に増加したが、ピアレス社買収などにより 長期借入金が13,220百万円増加したことが主な要因である。純資産は25,626百万円(同3623百万円増)となったが、主に当期純利益の計上による利益剰余金の増加1,878百万円及び、為替換算調整勘定の増加1,752百万円による。
●キャッシュフローの状況
2015年3月期のキャッシュフローは下表のようであった。営業活動によるキャッシュフローは3,338百万円のプラス(前期4,056百万円)となったが、主な収入はたな卸資産の減少1,004百万円(同535百万円)、仕入債務の減少916百万円(同284百万円)などである。投資活動によるキャッシュフローは8,402百万円のマイナス(同2,729百万円)となったが、主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出7,840百万円による。財務活動によるキャッシュフローは7,050百万円のプラス(同465百万円)となったが、主に長期借入金の増加15,824百万円による。この結果、期末の現金及び現金同等物の残高は9,777百万円(前期末比3,558百万円増)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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