アドバネクス Research Memo(1):競争力のある精密ばねに事業を集約、今期も増収増益へ
[15/06/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
アドバネクス<5998>は、1946年11月に設立された大手精密ばねメーカー。2001年7月に、社名を(株)加藤スプリング製作所から現在の名称に変更した。また、2004年3月に、上場市場を東証2部から1部へ指定替えした。
優れた技術力と開発力により、1980年代から2000年度にかけて国内もしくは世界市場でトップシェアを獲得する製品を輩出した。それらには、音楽テープ用テープパッド、ビデオテープ用リーフスプリング、3.5インチフロッピーディスク用シャッター、携帯電話用ヒンジ、光ディクス用センターハブなどがある。その後、対象市場を、日本のセットメーカーが競争力を失ったAV機器や通信端末から、より安定的な需要が見込める市場に移行している。その1つである医療機器分野では、採血・点滴をする際に使用される医療器具に内蔵される留置針用コイルばねで、60%の国内シェアを持つ。また、NAS3350(米国宇宙航空規格)に準拠しているばね「ロックワン(旧商品名タモント)」は、鉄道総研が行った鉄道レールのボルト・ナットの緩み止め器具のテストで最高の結果を出した。
2008年9月に起こった世界的金融危機「リーマン・ショック」が引き金となって、日本の製造業はおしなべて赤字に転落した。2011年には為替レートが1米ドル80円を切る円高に見舞われ、極めて厳しい事業環境となった。同社は、2011年以降、工場の閉鎖、子会社の売却を含む構造改革を断行し、業績の改善、黒字化に成功した。2015年3月末には、プラスチック事業を行う第一化成ホールディングス(株)の株式を台湾の能率集団(ABICO Group)に譲渡した。この結果、2016年3月期以降は、本業の精密ばね事業に特化することになった。
2016年3月期の業績は、プラスチック事業がなくなることから、売上高は19,800百万円(前期比32.9%減)、営業利益が880百万円(同18.6%減)の減収減益予想となっている。ただし、プラスチック事業を除く精密ばね事業のみの比較では、12.3%の増収、14.4%の増益となる。
プラスチック事業は売却したものの、金属プレスと樹脂射出成形を組み合わせて製造するインサート成形部品の事業は残した。また、2014年4月に、金属プレス加工分野で日本一の細物深絞り加工技術を有する船橋電子(株)を買収、子会社化した。その後、2015年4月に同社の事業を譲り受ける形で事業統合を行った。現在、同技術をテコに、グループの経営リソースを活用して買収効果が国内ばかりか海外まで広がるよう活動している。
2015年度から2019年度をカバーする中期経営計画“Breakthrough to 2020”では、「金属加工総合メーカーへの挑戦」をメインテーマとする。最終年度の2020年3月期の数値目標として、連結売上高35,000百万円、営業利益4,000百万円を掲げている。注力領域は、市場の成長性が高く、同社の競争力が強い自動車機器、医療機器、インフラ/住設機器となる。現在、埼玉県本庄市に省力化と自動化を図った自動車部品専用の「スマートファクトリー」を建設中で、来年始めには稼働する予定だ。
■Check Point
・中期計画は売上高350億円、営業利益40億円、ROE22%
・自動車用精密ばねは同社経営体質に最適
・配当性向の目標30%で増配へ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<YF>
優れた技術力と開発力により、1980年代から2000年度にかけて国内もしくは世界市場でトップシェアを獲得する製品を輩出した。それらには、音楽テープ用テープパッド、ビデオテープ用リーフスプリング、3.5インチフロッピーディスク用シャッター、携帯電話用ヒンジ、光ディクス用センターハブなどがある。その後、対象市場を、日本のセットメーカーが競争力を失ったAV機器や通信端末から、より安定的な需要が見込める市場に移行している。その1つである医療機器分野では、採血・点滴をする際に使用される医療器具に内蔵される留置針用コイルばねで、60%の国内シェアを持つ。また、NAS3350(米国宇宙航空規格)に準拠しているばね「ロックワン(旧商品名タモント)」は、鉄道総研が行った鉄道レールのボルト・ナットの緩み止め器具のテストで最高の結果を出した。
2008年9月に起こった世界的金融危機「リーマン・ショック」が引き金となって、日本の製造業はおしなべて赤字に転落した。2011年には為替レートが1米ドル80円を切る円高に見舞われ、極めて厳しい事業環境となった。同社は、2011年以降、工場の閉鎖、子会社の売却を含む構造改革を断行し、業績の改善、黒字化に成功した。2015年3月末には、プラスチック事業を行う第一化成ホールディングス(株)の株式を台湾の能率集団(ABICO Group)に譲渡した。この結果、2016年3月期以降は、本業の精密ばね事業に特化することになった。
2016年3月期の業績は、プラスチック事業がなくなることから、売上高は19,800百万円(前期比32.9%減)、営業利益が880百万円(同18.6%減)の減収減益予想となっている。ただし、プラスチック事業を除く精密ばね事業のみの比較では、12.3%の増収、14.4%の増益となる。
プラスチック事業は売却したものの、金属プレスと樹脂射出成形を組み合わせて製造するインサート成形部品の事業は残した。また、2014年4月に、金属プレス加工分野で日本一の細物深絞り加工技術を有する船橋電子(株)を買収、子会社化した。その後、2015年4月に同社の事業を譲り受ける形で事業統合を行った。現在、同技術をテコに、グループの経営リソースを活用して買収効果が国内ばかりか海外まで広がるよう活動している。
2015年度から2019年度をカバーする中期経営計画“Breakthrough to 2020”では、「金属加工総合メーカーへの挑戦」をメインテーマとする。最終年度の2020年3月期の数値目標として、連結売上高35,000百万円、営業利益4,000百万円を掲げている。注力領域は、市場の成長性が高く、同社の競争力が強い自動車機器、医療機器、インフラ/住設機器となる。現在、埼玉県本庄市に省力化と自動化を図った自動車部品専用の「スマートファクトリー」を建設中で、来年始めには稼働する予定だ。
■Check Point
・中期計画は売上高350億円、営業利益40億円、ROE22%
・自動車用精密ばねは同社経営体質に最適
・配当性向の目標30%で増配へ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<YF>