アドバネクス Research Memo(2):プラスチック事業の譲度で精密ばね専業へ
[15/06/29]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
○事業内容
精密ばねの大手であるアドバネクス<5998>は、2015年3月期の売上高が29,487百万円、事業別構成比は精密ばね事業が59.8%、プラスチック事業が40.2%であった。しかし、期末にプラスチック事業を行う第一化成ホールディングスの残りの保有株式を譲渡したため、2016年3月期からは精密ばね事業専業となる。
○会社沿革と事業の経緯
1930年に初代社長が東京都にスプリング専門工場を設立して創業した。1946年に株式会社に改組し、社名を株式会社加藤スプリング製作所に、2001年に現在の株式会社アドバネクスに変更した。1964年に東証2部へ新規上場を果たし、2004年に東証1部へ指定替えとなった。
生産拠点としては、1976年に現在の主力工場となっている柏崎工場(現新潟工場)を建設した。その後、2008年に大分工場、2009年に青森工場、2015年に千葉工場と宮城工場を開設した。現在、自動車向けの専門工場を埼玉県本庄市に建設中だ。埼玉工場は2015年10月に竣工し、2016年1月の稼働を予定している。
1980年代以降、世界的なヒットを飛ばし、トップシェア製品を輩出した。音楽テープ用テープパッド(国内シェア70%)、ビデオテープ用リーフスプリング(世界シェア50%)、3.5インチフロッピーディスク用シャッター(世界シェア80%)、携帯電話用ヒンジ(世界シェア50%)、光ディスク用センターハブ(国内シェア90%)などである。現在は、医療用の留置針用ばねで国内シェア60%を獲得している。
海外への進出も早く、1971年に米国に子会社を設立した。その後、海外子会社は、シンガポール、英国、香港、タイ、中国、ベトナムに開設された。1988年に設立された英国の子会社は、圧倒的な世界シェアを誇ったフロッピーディスク用シャッターの欧州向け生産拠点の役割を与えられた。同子会社は、英国国内の有力ばねメーカーを買収し、2工場体制をとっている。現在の主力製品は、医療機器用の精密ばね製品及び航空機産業や自動車市場向けの締結用補強部品になる。グループ会社の中で、最も高い収益性を上げている。
同社の事業部を切り出し、独立させた(株)ストロベリーコーポレーションは、携帯電話用のヒンジが当たり、2001年にJASDAQ市場に上場した。2005年3月期に連結売上高11,000百万円、経常利益900百万円を計上した。しかし、スマートフォンの台頭に伴い2つ折りの携帯電話の市場が大幅に縮小したことから赤字に転落し、2011年3期は売上高が2,500百万円へ激減し、経常損失が1,000百万円、当期損失は1,800百万円となり、債務超過に転落した。2011月10月に、同子会社は上場廃止となった。
1984年に、モーター部品の製造・販売を行うフジマイクロ(株)を買収した。また、2007年10月に自動車用プラスチック部品などを製造・販売する第一化成ホールディングスの株式を取得した。その結果、2008年3月期の同社連結売上高は38,892百万円となった。事業別売上高構成比は精密ばね事業が52.5%、ヒンジ事業が17.4%、モーター事業が15.3%、プラスチック事業が14.8%であった。その後、前述したように市場がほぼ消滅してしまったことから、ヒンジ事業から撤退した。モーター事業は、十分なシナジー効果が創出できなかったことから、2011年に株式の大半を譲渡し、持分法適用会社に移行した。第一化成ホールディングスの買収は、同社にインサート成形技術の向上をもたらしたが、主体となる大型単体のプラスチック事業は国内外のコスト競争により収益性が厳しかった。また、競争力を維持するには、同社にとっては大きな設備投資を継続する必要があった。このため、2014年7月に台湾の能率集団(ABICO)Groupへ持株の49%を譲渡し、2015年3月に残りの51%を売却し、本業の精密ばね事業に特化する選択をした。台湾企業は、製造拠点を世界15ヶ所に持ち、20ヶ国に販売拠点を有し、従業員は15,000人超と事業規模が大きい。
2008年9月に発生した世界的金融危機「リーマン・ショック」が引き金となって、日本の製造業はおしなべて赤字に転落した。同社も2009年3月期は3,595百万円の当期純損失を計上した。精密ばね事業、ヒンジ事業、モーター事業、プラスチック事業のすべての事業が営業赤字に陥った。翌年度の2010年3月期に精密ばね事業とモーター事業が黒字転換をしたものの、ヒンジ事業の赤字が拡大した。プラスチック事業は、2011年3月期にようやく収益性を回復した。
ヒンジ事業、モーター事業、プラスチック事業から撤退もしくは事業を売却してきたが、コアの精密ばね事業は強化している。2014年4月に、船橋電子を子会社化した。船橋電子は金属プレス加工分野において優れた技術を有しており、同技術を新設する埼玉工場のみならず、中国やタイなどの海外工場でも展開する。同社グループの金型技術機械設備の相互利用、営業力や資材調達力を活用することによりグループ・シナジーを創出する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<YF>
○事業内容
精密ばねの大手であるアドバネクス<5998>は、2015年3月期の売上高が29,487百万円、事業別構成比は精密ばね事業が59.8%、プラスチック事業が40.2%であった。しかし、期末にプラスチック事業を行う第一化成ホールディングスの残りの保有株式を譲渡したため、2016年3月期からは精密ばね事業専業となる。
○会社沿革と事業の経緯
1930年に初代社長が東京都にスプリング専門工場を設立して創業した。1946年に株式会社に改組し、社名を株式会社加藤スプリング製作所に、2001年に現在の株式会社アドバネクスに変更した。1964年に東証2部へ新規上場を果たし、2004年に東証1部へ指定替えとなった。
生産拠点としては、1976年に現在の主力工場となっている柏崎工場(現新潟工場)を建設した。その後、2008年に大分工場、2009年に青森工場、2015年に千葉工場と宮城工場を開設した。現在、自動車向けの専門工場を埼玉県本庄市に建設中だ。埼玉工場は2015年10月に竣工し、2016年1月の稼働を予定している。
1980年代以降、世界的なヒットを飛ばし、トップシェア製品を輩出した。音楽テープ用テープパッド(国内シェア70%)、ビデオテープ用リーフスプリング(世界シェア50%)、3.5インチフロッピーディスク用シャッター(世界シェア80%)、携帯電話用ヒンジ(世界シェア50%)、光ディスク用センターハブ(国内シェア90%)などである。現在は、医療用の留置針用ばねで国内シェア60%を獲得している。
海外への進出も早く、1971年に米国に子会社を設立した。その後、海外子会社は、シンガポール、英国、香港、タイ、中国、ベトナムに開設された。1988年に設立された英国の子会社は、圧倒的な世界シェアを誇ったフロッピーディスク用シャッターの欧州向け生産拠点の役割を与えられた。同子会社は、英国国内の有力ばねメーカーを買収し、2工場体制をとっている。現在の主力製品は、医療機器用の精密ばね製品及び航空機産業や自動車市場向けの締結用補強部品になる。グループ会社の中で、最も高い収益性を上げている。
同社の事業部を切り出し、独立させた(株)ストロベリーコーポレーションは、携帯電話用のヒンジが当たり、2001年にJASDAQ市場に上場した。2005年3月期に連結売上高11,000百万円、経常利益900百万円を計上した。しかし、スマートフォンの台頭に伴い2つ折りの携帯電話の市場が大幅に縮小したことから赤字に転落し、2011年3期は売上高が2,500百万円へ激減し、経常損失が1,000百万円、当期損失は1,800百万円となり、債務超過に転落した。2011月10月に、同子会社は上場廃止となった。
1984年に、モーター部品の製造・販売を行うフジマイクロ(株)を買収した。また、2007年10月に自動車用プラスチック部品などを製造・販売する第一化成ホールディングスの株式を取得した。その結果、2008年3月期の同社連結売上高は38,892百万円となった。事業別売上高構成比は精密ばね事業が52.5%、ヒンジ事業が17.4%、モーター事業が15.3%、プラスチック事業が14.8%であった。その後、前述したように市場がほぼ消滅してしまったことから、ヒンジ事業から撤退した。モーター事業は、十分なシナジー効果が創出できなかったことから、2011年に株式の大半を譲渡し、持分法適用会社に移行した。第一化成ホールディングスの買収は、同社にインサート成形技術の向上をもたらしたが、主体となる大型単体のプラスチック事業は国内外のコスト競争により収益性が厳しかった。また、競争力を維持するには、同社にとっては大きな設備投資を継続する必要があった。このため、2014年7月に台湾の能率集団(ABICO)Groupへ持株の49%を譲渡し、2015年3月に残りの51%を売却し、本業の精密ばね事業に特化する選択をした。台湾企業は、製造拠点を世界15ヶ所に持ち、20ヶ国に販売拠点を有し、従業員は15,000人超と事業規模が大きい。
2008年9月に発生した世界的金融危機「リーマン・ショック」が引き金となって、日本の製造業はおしなべて赤字に転落した。同社も2009年3月期は3,595百万円の当期純損失を計上した。精密ばね事業、ヒンジ事業、モーター事業、プラスチック事業のすべての事業が営業赤字に陥った。翌年度の2010年3月期に精密ばね事業とモーター事業が黒字転換をしたものの、ヒンジ事業の赤字が拡大した。プラスチック事業は、2011年3月期にようやく収益性を回復した。
ヒンジ事業、モーター事業、プラスチック事業から撤退もしくは事業を売却してきたが、コアの精密ばね事業は強化している。2014年4月に、船橋電子を子会社化した。船橋電子は金属プレス加工分野において優れた技術を有しており、同技術を新設する埼玉工場のみならず、中国やタイなどの海外工場でも展開する。同社グループの金型技術機械設備の相互利用、営業力や資材調達力を活用することによりグループ・シナジーを創出する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<YF>