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テクマトリックス Research Memo(2):前期の売上高は過去最高、利益はクラウド化の推進で一時的に停滞

注目トピックス 日本株
■2015年3月期の決算

(1)概要

2015年3月期の連結決算は、売上高が前期比6.1%増の18,417百万円、営業利益が同1.0%増の1,130百万円、経常利益が同2.7%減の1,132百万円、当期純利益が同26.3%減の584百万円となった。売上高は過去最高を更新した。同社が本社移転に伴う特別損失を計上することから2015年3月期第3四半期に行った修正後の業績予想と比べると売上高で0.6ポイント上振れとなったが、営業利益で2.6ポイント、経常利益で2.4ポイント、当期純利益で5.8ポイントの下振れとなった。しかし、利益面の未達はごくわずかであり、後に詳細に説明するが、減益要因はすべて一時的なものであることから想定どおりの着地と見てよかろう。

売上高の詳細
テクマトリックス<3762>の事業は、「情報基盤事業」と「アプリケーション・サービス事業」の2つのセグメントで構成される。情報基盤事業は、クライアントの情報システム基盤の構築、保守、運用・監視サービスを一貫して提供する。アプリケーション・サービス事業は、特定市場、特定業界向けにシステム開発、アプリケーション・パッケージ、クラウドサービス、テストツールなど、付加価値の高いアプリケーション・サービスを提供している。

事業セグメントに基づき、2015年3月期の売上高を見ると、両セグメントとも増加した。情報基盤事業が前期比7.6%増の12,044百万円、アプリケーション・サービス事業が同3.5%増の6,373百万円となった。情報基盤事業の売上高は過去最高を更新した。連結子会社5社もすべて黒字を達成できた。

情報基盤事業においては、今までの主力だった負荷分散装置の販売がやや頭打ちになっている半面、セキュリティ関連の製品、サービスが拡大した。また、次世代ファイアウォールが官需、民需ともに大幅に拡大した。サイバー攻撃の脅威の高まりに伴い、市場が急拡大している分野でもあり、従来製品からのリプレース需要も旺盛だった。官需では初めて中央官公庁から大型案件を直接入札によって獲得した。

具体的な製品、サービスとしては、同社が日本で一次代理店を務める、米国パロアルトネットワークス社(カリフォルニア州サンタクララ)の次世代ファイアウォール製品や、マカフィー社のアンチウィルスライセンス、URLフィルタリングアプライアンス、EMC社のフォレンジック製品などが好調だった。

アプリケーション・サービス事業においては、インターネットサービス分野ではスマートフォン関連のシステム開発といった従来顧客からの受注が堅調に推移した。さらに、eコマース(電子商取引)やBI(ビジネスインテリジェンス)開発の関連で大型案件を受注、ネットショップの受注管理を効率化する「楽楽バックオフィス」の機能強化も進めた。

CRM(顧客関係管理)分野ではNTTデータ<9613>や伊藤忠テクノソリューションズ<4739>といった大手システムインテグレーターとのアライアンス、クラウド案件の増加によって、大型案件の受注も拡大した。製品としては、後のトピックスでも触れるが、新発売したコンタクトセンター向けの次世代CRMシステム「FastHelp5」が発売当初から高評価を得た。海外でのクラウド案件もインドネシアでの第1号案件が稼働した。

その他、製造業や金融機関向けの組み込みソフトウェアの品質保証、テストツールの販売も伸びた。医療機器分野における組み込みソフトウェアの医療機器コンプライアンス、機能安全対策コンサルティングなども受注が拡大した。

さらに、アプリケーション・サービス事業で同社が現在注力している医療分野におけるクラウド化に関しては、計画を上回る着地となった。医用画像システム(PACS)クラウドサービス「NOBORI(のぼり)」の新規契約施設件数は約150件となり、総契約件数を約300件と一気に倍増させた。矢野経済研究所の予測数値では2015年3月期のPACSクラウドの国内新規需要は416施設と予想されている。あくまでも予想値ではあるものの、「NOBORI」の市場占有率は断トツだと言えそうである。また、遠隔画像診断クラウドサービスを提供している子会社の「合同会社 医知悟(いちご)」も医療検診施設の取り込みが進み、契約施設数、読影依頼件数、従量課金額ともに増加、売上・営業利益ともに計画を上回る結果となった。

総括すれば、分野ごとの売上高の増加要因は、機器販売のみならず、サービス分野が大きく拡大し、確実に受注を積み上げているためだということが理解できよう。

さらに付け加えれば、クラウド化に伴い、今後最も市場が拡大すると期待される分野で売上を伸ばした点にも注目すべきであろう。同社は受注金額を公表していないが、この度の取材で14年12月に単月として過去最高金額を更新したことを明らかにした。同社の受注は、企業の期末に当たる3月が年間で最も多いのが普通だが、「NOBORI」の受注拡大とセキュリティ分野の大型案件獲得が更新の要因だという。大型案件を始め受注の一部は第4四半期(15年1〜3月)で売上計上されたが、12月は年末年始の長期休暇があるため、医療機関や行政機関が休みとなり、その間に導入作業が行えることから受注が増えたと考えられる。

これは、同社が掲げる構造改革の到達点である「次世代のITサービスクリエイター」及び「次世代のITサービスプロバイダー」への変革が着実に進んでいるということの証左でもある。ちなみに、「次世代のITサービスクリエイター」とは、従来のSIerのような労働集約型の請負サービスから脱却し、自らがITサービスを創造、顧客に提案するビジネスモデルを指している。

利益の詳細
セグメント別の営業利益は、情報基盤事業が前期比17.4%増の1,029百万円、アプリケーション・サービス事業が同58.3%減の101百万円となった。情報基盤事業は、円安による輸入機器類の円建てでの値上がりというマイナス要因があったにもかかわらず、売上高と利益率の高い高度なサービスの増加が利益を押し上げた。

アプリケーション・サービス事業の減益要因は、クラウド化を進めているためである。特に医療分野において先行しており、システム構築というフロービジネスからシステムの利用料というストックビジネスに転換する過程にある。クラウドサービスの売上と利益は、サービスを提供する期間に応じて案分して計上することになるため、従来のシステム構築に比べ、1件当たりの売上高も利益もシステム構築に比べれば短期的には減少する。金額は明らかにされていないが、医療分野だけでは赤字だった模様である。

したがって、既に説明したように売上高が増加している点を考慮すると、この減益は想定内の結果であり、むしろ順調に医療分野のクラウド化への転換が進んでいると評価できよう。実際、同社によれば、2015年3月期に赤字は底を打ち、2016年3月期は赤字幅が大きく縮小し、2017年3月期には黒字化すると自信を深めている。

一方、経常利益が減益になったのは、前期に保険払戻金27百万円を計上したことに加え、投資事業組合運用損を計上したためである。

当期純利益の減益幅が大きいのは、前年同期に繰延税金資産の追加計上による法人税等調整額△165百万円を計上したことに加え、本社の移転に伴う経費を特別損失として前倒しで一括計上したためである。本社の移転に関しては、トピックスで簡単に触れる。

以上のように経常利益と当期純利益の減益要因はすべて一時的な要因であり、問題視する必要はない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)



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