ソフト99 Research Memo(5):営業と開発部門の一体感が醸成され、業績は拡大局面に
[15/08/04]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(1)売上成長に向けた意識改革が浸透
ソフト99コーポレーション<4464>はここ数年、売上高の伸び悩み傾向が続いてきた。近年大型商品を生み出せず、ロングセラーである「ガラコ」シリーズや「フクピカ」に頼りがちになっていたことが背景にあると考えられる。そこで、同社は前期より大型商品の育成に注力していく方針を打ち出し、「スムースエッグマイクロホイップ」をその第1弾として販売強化に努めた。前述したように販売実績としては期待を下回る結果となったが、社員の意識は確実に前向きなものに変わってきているようだ。営業現場では小売店での売場づくりに積極的に取り組み、従来であれば初動の販売が低調だとその後「売る」という意味が低下しがちであったが今回は売れなくてもあきらめずに継続的に売り続けるという意識を持ちどうすれば売れるのかということを考え開発現場へフィードバックを行い、顧客ニーズに合った製品に改良し、同シリーズの大容量品の新製品を秋口に投入した。「スピード感」と合わせて「継続性」という観点から販売施策を実施することができたとしている。こうした動きにみられるように、営業と開発部門の一体感がここ1年の間で醸成されてきており、売上成長に向けた社員の意識改革も相当に進んだものと思われる。
また、同様のことはポーラスマテリアル事業展開する子会社アイオンにも言える。子会社化前より保守的な企業風土であったことから、新商品の開発や新規顧客の開拓などに対する取り組みには慎重であったが、こうした企業体質を変革すべく、開発力並びに営業力の強化に取り組んでいる。開発に関しては前期よりインフルエンザ検査薬吸収パッドの本格販売がスタートするなど新規市場の展開が期待される状況となってきたほか、営業に関しても生活資材部門において同社の営業ネットワークを活用した新規顧客の開拓が進むなど、取り組みの成果が徐々に出始めている。
このように、グループ全体の売上成長に向けた組織改革が着実に進んでいることから、今後の業績は拡大局面に入っていくものと期待される。
(2) 2016年3月期見通し
2016年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.5%増の22,100百万円、営業利益が同横ばいの1,750百万円、経常利益が同2.2%減の1,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同25.1%増の1,180百万円を計画している。すべてのセグメントにおいて増収を見込んでいるが、新規事業となるTPMS事業で40百万円、介護予防支援で30百万円の営業損失を見込んでいる。事業セグメント別の見通しは以下のとおり。
○ファインケミカル事業
ファインケミカル事業の売上高は前期比4.6%増の10,818百万円、営業利益は同1.3%増の943百万円を見込む。前期投入した「スムースエッグマイクロホイップ」の販促強化を継続していくほか、新製品の投入なども予定しており、コンシューマ向け製品で前期比5%程度の増収を見込んでいる。また、業務用についても新車販売台数が下げ止まるなかで、自社ブランド品の強化を進めていくほか、鉄道車両分野など新たな市場開拓を進め、同6%増収を見込む。輸出については引き続きアジアやロシア地域で現地専用商品のラインナップを拡充していくほか、その他地域の開拓も進めていく予定で、前期比1%増と堅調に推移する見通し。
なお、TPMS事業は当期より業績に反映されることになるが、売上高で100百万円、営業損失で40百万円程度を計画に織り込んでいる(状況については後述)。
○ポーラスマテリアル事業
ポーラスマテリアル事業の売上高は前期比2.3%増の4,747百万円、営業利益は同1.0%増の514百万円を見込む。主に生活資材部門の売上成長を見込んでおり、国内では販路開拓を継続して進めていくほか、新商品の開発も強化していく。また、前期は減収だった海外向けも米国での在庫調整が終わり、今期は増収に転じる見通しだ。
産業用資材では医療分野の開拓を継続して行っていく。インフルエンザ向けの検査薬吸収パッドに続いて、結核やアレルギー領域での検査用吸収パッドの開発も進めていく方針だ。売上規模としては前期で10百万円程度だが、今後の成長が期待される。
○サービス・不動産関連事業
サービス・不動産関連事業の売上高は前期比2.8%増の6,535百万円、営業利益は前期比1.3%減の294百万円と増収減益となる見通し。オートサービス事業は回復傾向が続くものの、前期好調だった自動車教習所が反動減で、3%程度の減収を見込んでいるのが要因だ。また、生活用品企画販売部門は生協向けの落ち込みをインターネット通販の増加でカバーして増収となるが、収益への貢献度は軽微となる。不動産賃貸事業は横ばい、温浴事業は増収増益となるものの、介護予防支援事業の立ち上げ負担で30百万円の損失を見込んでいる。なお、介護予防支援事業に関しては、拠点を拡大していく予定はない。
(3) TPMS事業について
TPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視装置)とは、タイヤ内の空気圧や温度をセンサで常時監視し、異常が発生した場合に運転者に通知するシステムのことで、仕組みとしてはエアバルブと一体化したセンサー付き発信機をタイヤホイールに組み付け、運転席に設置される受信機に無線によって信号を送信、モニタに情報を表示する仕組みとなっている。
TPMSを搭載するメリットとしては、運行前点検の作業時間短縮、走行中のタイヤトラブルの早期発見による事故予防、適正空気圧維持を促すことによる燃費向上やタイヤ交換コストの削減といった点が挙げられる。こうしたメリットは特に、大型トラックやバスなどの運送業者において大きくなると考えられる。大型トラックなどはタイヤが6本以上付いており、運行前点検作業などにおいて時間がかかるほか、燃費やタイヤ交換などに対するコスト削減意識も強いためだ。
現在の市場環境としては、欧米や韓国市場で新車乗用車への搭載義務がすでに法制化されており、また、中国においても法制化される見通しとなっている。一方、日本においては関係省庁において議論が進められている段階で、まだ法制化されていない。※
※ 一部高級車への自主的な搭載が進んでいるほか、ランフラットタイヤに関しては搭載が義務化されている。
ただ、トラックやバスなど高速道路でのタイヤに起因する事故が頻発するなかで、国交省が運行前点検整備の厳格化を指導しており、前述した点検作業時間やコストメリットなどを考えると、今後需要が拡大していく可能性は大きい。海外市場でも大型トラック・バス向け(タイヤ内空気圧力が異なる)に関しては義務化されていないため、競合メーカーは見当たらない状況となっている(乗用車用では欧米数社、日系では太平洋工業<7250>が大手)。
同事業を展開する(株)オレンジ・ジャパンは、2011年設立のベンチャーで、TPMSの企画・開発・販売を行い、製造は台湾メーカーに委託している。2014年の売上実績としては運輸運送関連企業向けに約60百万円となり、粗利率は約40%、営業損失は50〜60百万円程度だったとみられる。今期は売上高で100百万円強、営業損失で40百万円程度を計画に織り込んでいる。販売先は運輸運送関連企業のほか、タイヤショップやカー用品販売店等となるが、当面はトラック・バス向けの売上が中心となることが予想される。中長期的には乗用車向けや自動車メーカーの純正品のリプレイス製品の需要拡大も見込んでいる。
今後、国内でも法規制化が進むようであれば、収益が大きく成長する可能性もあり、その動向が注目されよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1)売上成長に向けた意識改革が浸透
ソフト99コーポレーション<4464>はここ数年、売上高の伸び悩み傾向が続いてきた。近年大型商品を生み出せず、ロングセラーである「ガラコ」シリーズや「フクピカ」に頼りがちになっていたことが背景にあると考えられる。そこで、同社は前期より大型商品の育成に注力していく方針を打ち出し、「スムースエッグマイクロホイップ」をその第1弾として販売強化に努めた。前述したように販売実績としては期待を下回る結果となったが、社員の意識は確実に前向きなものに変わってきているようだ。営業現場では小売店での売場づくりに積極的に取り組み、従来であれば初動の販売が低調だとその後「売る」という意味が低下しがちであったが今回は売れなくてもあきらめずに継続的に売り続けるという意識を持ちどうすれば売れるのかということを考え開発現場へフィードバックを行い、顧客ニーズに合った製品に改良し、同シリーズの大容量品の新製品を秋口に投入した。「スピード感」と合わせて「継続性」という観点から販売施策を実施することができたとしている。こうした動きにみられるように、営業と開発部門の一体感がここ1年の間で醸成されてきており、売上成長に向けた社員の意識改革も相当に進んだものと思われる。
また、同様のことはポーラスマテリアル事業展開する子会社アイオンにも言える。子会社化前より保守的な企業風土であったことから、新商品の開発や新規顧客の開拓などに対する取り組みには慎重であったが、こうした企業体質を変革すべく、開発力並びに営業力の強化に取り組んでいる。開発に関しては前期よりインフルエンザ検査薬吸収パッドの本格販売がスタートするなど新規市場の展開が期待される状況となってきたほか、営業に関しても生活資材部門において同社の営業ネットワークを活用した新規顧客の開拓が進むなど、取り組みの成果が徐々に出始めている。
このように、グループ全体の売上成長に向けた組織改革が着実に進んでいることから、今後の業績は拡大局面に入っていくものと期待される。
(2) 2016年3月期見通し
2016年3月期の連結業績は、売上高が前期比3.5%増の22,100百万円、営業利益が同横ばいの1,750百万円、経常利益が同2.2%減の1,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同25.1%増の1,180百万円を計画している。すべてのセグメントにおいて増収を見込んでいるが、新規事業となるTPMS事業で40百万円、介護予防支援で30百万円の営業損失を見込んでいる。事業セグメント別の見通しは以下のとおり。
○ファインケミカル事業
ファインケミカル事業の売上高は前期比4.6%増の10,818百万円、営業利益は同1.3%増の943百万円を見込む。前期投入した「スムースエッグマイクロホイップ」の販促強化を継続していくほか、新製品の投入なども予定しており、コンシューマ向け製品で前期比5%程度の増収を見込んでいる。また、業務用についても新車販売台数が下げ止まるなかで、自社ブランド品の強化を進めていくほか、鉄道車両分野など新たな市場開拓を進め、同6%増収を見込む。輸出については引き続きアジアやロシア地域で現地専用商品のラインナップを拡充していくほか、その他地域の開拓も進めていく予定で、前期比1%増と堅調に推移する見通し。
なお、TPMS事業は当期より業績に反映されることになるが、売上高で100百万円、営業損失で40百万円程度を計画に織り込んでいる(状況については後述)。
○ポーラスマテリアル事業
ポーラスマテリアル事業の売上高は前期比2.3%増の4,747百万円、営業利益は同1.0%増の514百万円を見込む。主に生活資材部門の売上成長を見込んでおり、国内では販路開拓を継続して進めていくほか、新商品の開発も強化していく。また、前期は減収だった海外向けも米国での在庫調整が終わり、今期は増収に転じる見通しだ。
産業用資材では医療分野の開拓を継続して行っていく。インフルエンザ向けの検査薬吸収パッドに続いて、結核やアレルギー領域での検査用吸収パッドの開発も進めていく方針だ。売上規模としては前期で10百万円程度だが、今後の成長が期待される。
○サービス・不動産関連事業
サービス・不動産関連事業の売上高は前期比2.8%増の6,535百万円、営業利益は前期比1.3%減の294百万円と増収減益となる見通し。オートサービス事業は回復傾向が続くものの、前期好調だった自動車教習所が反動減で、3%程度の減収を見込んでいるのが要因だ。また、生活用品企画販売部門は生協向けの落ち込みをインターネット通販の増加でカバーして増収となるが、収益への貢献度は軽微となる。不動産賃貸事業は横ばい、温浴事業は増収増益となるものの、介護予防支援事業の立ち上げ負担で30百万円の損失を見込んでいる。なお、介護予防支援事業に関しては、拠点を拡大していく予定はない。
(3) TPMS事業について
TPMS(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視装置)とは、タイヤ内の空気圧や温度をセンサで常時監視し、異常が発生した場合に運転者に通知するシステムのことで、仕組みとしてはエアバルブと一体化したセンサー付き発信機をタイヤホイールに組み付け、運転席に設置される受信機に無線によって信号を送信、モニタに情報を表示する仕組みとなっている。
TPMSを搭載するメリットとしては、運行前点検の作業時間短縮、走行中のタイヤトラブルの早期発見による事故予防、適正空気圧維持を促すことによる燃費向上やタイヤ交換コストの削減といった点が挙げられる。こうしたメリットは特に、大型トラックやバスなどの運送業者において大きくなると考えられる。大型トラックなどはタイヤが6本以上付いており、運行前点検作業などにおいて時間がかかるほか、燃費やタイヤ交換などに対するコスト削減意識も強いためだ。
現在の市場環境としては、欧米や韓国市場で新車乗用車への搭載義務がすでに法制化されており、また、中国においても法制化される見通しとなっている。一方、日本においては関係省庁において議論が進められている段階で、まだ法制化されていない。※
※ 一部高級車への自主的な搭載が進んでいるほか、ランフラットタイヤに関しては搭載が義務化されている。
ただ、トラックやバスなど高速道路でのタイヤに起因する事故が頻発するなかで、国交省が運行前点検整備の厳格化を指導しており、前述した点検作業時間やコストメリットなどを考えると、今後需要が拡大していく可能性は大きい。海外市場でも大型トラック・バス向け(タイヤ内空気圧力が異なる)に関しては義務化されていないため、競合メーカーは見当たらない状況となっている(乗用車用では欧米数社、日系では太平洋工業<7250>が大手)。
同事業を展開する(株)オレンジ・ジャパンは、2011年設立のベンチャーで、TPMSの企画・開発・販売を行い、製造は台湾メーカーに委託している。2014年の売上実績としては運輸運送関連企業向けに約60百万円となり、粗利率は約40%、営業損失は50〜60百万円程度だったとみられる。今期は売上高で100百万円強、営業損失で40百万円程度を計画に織り込んでいる。販売先は運輸運送関連企業のほか、タイヤショップやカー用品販売店等となるが、当面はトラック・バス向けの売上が中心となることが予想される。中長期的には乗用車向けや自動車メーカーの純正品のリプレイス製品の需要拡大も見込んでいる。
今後、国内でも法規制化が進むようであれば、収益が大きく成長する可能性もあり、その動向が注目されよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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