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きちり Research Memo(2):首都圏での新規出店を積極化

注目トピックス 日本株
■事業概要

きちり<3082>の事業は飲食事業とその他事業に分けられ、現時点では売上高の99%を飲食事業で占めている。主な店舗には関西、首都圏で展開する居酒屋「KICHIRI」と首都圏のショッピングモール内で展開するレストラン「いしがまやハンバーグ」などの自社ブランド店舗のほか、後述するPFS事業で提携した企業のブランドを活用した店舗が含まれる。2015年6月末時点の店舗数は、関西で41店舗(前期末比横ばい)、首都圏で36店舗(同8店舗増)の合計77店舗となっており、ここ数年は首都圏での新規出店を積極化している。

主力店舗である「KICHIRI」は女性客を主要ターゲットに、高品質な料理とおしゃれ感を演出した店舗づくり、「おもてなし」の接客を重視することで、関西圏で高い支持を得たあと、2006年より東京に進出を果たしている。また、平均予算で3,500円前後と比較的低価格帯で若者客を主要ターゲットとした「Casual Dining KICHIRI」と、平均予算5,000円前後で企業の接待ニーズにも対応可能な「新日本様式 KICHIRI」の2つの業態で展開している。

その他事業の売上高の大半は今後の成長が期待されるPFS事業となる。PFS事業は、ブランド・コンテンツ活用型とクラウドサービス展開型の2つの事業モデルに分けられている。

○ブランド・コンテンツ活用型事業
ブランド・コンテンツ活用型事業とは、健康分野やエンターテイメント、第1次産業分野などで強いブランド・コンテンツを持った企業と業務提携し、外食ビジネスを展開することによって、当該ブランド価値を高めていく新たな販促手法となる。提携先企業にとっては店舗運営を同社に任せることで、店舗運営リスクを抱えることなく、ブランド力の向上が期待できることになる。

店舗運営に関しては、既存のKICHIRIプラットフォームを活用できるため、業務管理コストや食材の仕入コストなどを独力で店舗運営するよりも低く抑えられるほか、ブランド価値訴求型の店舗であるため価格も維持しやすく、一定の収益が見込みやすいビジネスモデルであることも特徴の1つとなっている。

契約内容は一律ではないが、1店舗目については店舗運営コストなどの費用を提携先が負担するケースが多い(同社の売上高としてはプラットフォームの使用料を計上)。また、2店舗目以降は同社が直営店舗として展開していくことも可能となっている。提携先企業にとっては店舗を増やして収益を拡大することが目的ではなく、あくまでもブランド価値向上が目的となっているためだ。なお、売上高に関しては、同社が直営で運営する場合は飲食事業に含まれることになる。ブランド・コンテンツ活用型の例としては、福岡県の農事組合法人である福栄組合が生産する「はかた地どり」のブランド価値向上を狙った居酒屋「福栄組合」や、計量器メーカーの(株)タニタと提携してオープンした「タニタ食堂」などがある。

○クラウドサービス展開型事業
クラウドサービス展開型事業とは、同社が既に自社で構築しているバックオフィス(会計処理、給与管理等)やバックヤード(仕入・物流システム)、バックアップ企業(銀行や取引企業等)などのプラットフォームを、「外食向けクラウド」として安価な料金で提供するサービスとなる。サービス料金は企業ごとに店舗数やニーズが異なるため、個別対応での料金体系となっている。契約店舗は食材など比較的共通部分が多い居酒屋チェーンが多いのが特徴で、自社のプラットフォームを同業他社に貸し出すビジネスモデルは業界でも同社が初めてとなる。

同サービスを顧客企業が利用するメリットは、自社で同様のシステムを構築するよりも低コスト・低リスクで利用でき、安定収益を迅速に確立することができる点にある。例えば、30〜50店舗規模の飲食チェーン店が独自で食材を調達するよりも、同社のプラットフォームを利用して共同調達をしたほうが仕入コストは低くなる。プラットフォーム参画店舗数分のスケールメリットが生かせるためだ。特に、人件費や食材、物流コストの上昇傾向が続く市場環境下においては、中小規模の外食チェーンを中心に同サービスの潜在需要は大きいと思われる。2015年6月末時点の契約店舗数は首都圏を中心に約400店舗と前期末の100店舗から大幅に増加している。

また、同事業に関しては同社が既に利用しているプラットフォームを活用しているため、利益率が高く、安定した収益を稼ぎ出すストック型のビジネスモデルになっていることが特徴と言える(ただし、契約数が拡大しサーバーの処理能力を超えた場合は、サーバー増強に伴う追加コストが発生する)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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