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ブイキューブ Research Memo(7):潜在市場に開拓余地、業界特化型サービスやドローン活用など強化

注目トピックス 日本株

■中長期戦略

ブイキューブ<3681>は「アジアナンバーワンのビジュアルコミュニケーションプラットフォーム」というビジョンを掲げ、主に以下の3つを中心に中長期的な事業戦略を進めている。

(1)国内シェアの拡大と潜在市場の開拓

同社では、国内の潜在市場の開拓を進めると同時にシェアアップを図ることでさらに国内売上高を伸ばすことは可能と見ている。これを実現するために以下の重要施策を実行していく方針だ。

・M&A、OEMを活用したシェアの拡大
・ポート数、ポート単価の拡大施策
・技術革新による環境・快適性拡大→契約加速・解約低減
・業界特化型のサービス、利用モデルの確立
・ドローンなどを中心としたロボティックス関連事業

●業界再編型M&AやOEM
競合他社との資本提携、OEMなどの実現による業界再編型の国内シェア拡大を目指す。PVC社のように特有の技術や製品を有している企業に対しては、積極的に買収を検討する方針だ。OEMについては、上記のように競合企業の中には大手電機メーカー系列の企業も多く、これらの企業は顧客やブランド力を持っているものの、十分な製品ラインアップを持っていない場合も多いので、そのような企業に対しては同社がOEM製品(サービス)を提供することで双方にメリットが生じる可能性は高い。

●成長戦略のためのキープロダクト
同社の事業を拡大するために以下のような戦略製品(キープロダクト)がラインアップ化された。2015年12月期下期以降は、これらの戦略製品を使って更なる拡大を目指す。

▲「V-CUBEミーティング」の新バージョン「V5」
既存バージョンから技術的に大幅改良して開発したもので、環境改善・快適性拡大により契約締結速度の加速、解約率の低減を図るもの。以下のような特色がある。

(世界最高品質の要素技術を採用)
これにより、接続性、画質、音質が劇的に向上する。この結果、契約までに必要な顧客側の環境整備を大幅に縮小することが可能になり、契約率や契約締結までの速度の向上につなげる。また、解約要因の半分弱を占める接続性、画質、音質に関する問題を解決することが可能となり、解約率の大幅低減を図る。

(モバイルファーストな設計)
モバイルデバイスでの利用を前提とした設計により、利用シーンが拡大する。また、モバイルデバイスでの利用が多い海外市場での拡販を目指す。

同社が社内で「V5」の利用状況を検証した結果、利用開始後3ヶ月間で会議開催数は140%増、延べ利用人数は176%増、延べ会議開催時間は135%増、平均会議時間は17%減となったとのこと。この実績はWeb会議の利便性が大幅に向上したことを示しており、今後の展開に期待を持てそうである。

▲「V-CUBE One」
同社は様々なサービスを揃えているが、複数サービス(Web会議、オンラインセミナー、営業支援等)を1つのパッケージで利用するという考え方の料金体系「V-CUBE One」を2014年9月から提供している。以前から複数のサービスを利用したいとのユーザーの要望は強かったが、これまではサービスごとの契約が必要であったことから、複数サービスを利用すると結果として価格(月額契約額)が高くなり、躊躇するユーザーも多かった。しかし「V-CUBE One」の投入により、ユーザーは「V-CUBE One」の契約をすれば、以前に比べて安価で複数サービスを利用することが可能になる。その一方で、同社にとっては契約ポート当たりの平均単価が高くなるメリットが期待できる。

▲「V-CUBE Gate」
また2014年11月に「V-CUBE Gate」をリリースした。これは法人専用の無料テキストチャットサービスで、各種の設定を行うことで、契約法人内の誰もが無料で利用することができる。テキストチャットサービス自体は認知度が高いため、Web会議に比べ販売しやすいと考えられる。

このサービスを導入する目的は、まず多くの人にこのサービスを利用してもらうことによって、同社の他のサービスも知ってもらうためである。「V-CUBE Gate」は同社のWeb会議と連携しているので、ワンクリックで他のサービスに入って利用することもできる。つまり、同社の主力サービスへの入口(Gate)となることから「V-CUBE Gate」と名付けられた。

管理機能の一部を有料で提供しており、「V-CUBE Gate」単独でも収益寄与が可能である。しかし、一般的な機能は無料で利用できるため、販売代理店も積極的に活用しながら、無料を盾に急速に導入を進める計画であり、これにより同社の主力のWeb会議(有料)の導入を拡大させる狙いである。当面は100万ユーザーを目標としている。下期に本格的にこの製品のプロモーションを実施する計画で、第4四半期以降に効果が示現すると期待している。

●業界特化型のサービス、利用モデルの確立
一般的なWeb会議だけでなく「業界特化型ソリューション」を拡大することで同業他社に対する差別化を図る。これにより「単なるWeb会議」から「VCソリューション提供」への脱却を加速させる。具体的な例として以下のような案件が進捗中である。

▲不動産業界向け
国土交通省では、宅地建物取引業法に基づき宅地建物取引士が「対面」で行っている不動産契約時の重要事項説明について、オンラインでも可能にするための検討を進めており、8月末から今後2年間に渡って社会実験を行うことが決定している。同社のWeb会議サービスを、大手不動産情報サービス会社が利用して社会実験に参加するとのことで、同社の業績に大きく寄与することが期待される。

▲金融機関向け
銀行・証券・保険・リースなどの金融機関向けの利用モデル(拠点間会議、研修、顧客向けセミナー、顧客への遠隔訪問、BCP等)を専門チームが営業展開している。

▲文教市場向け
同社にとって最も大きな市場の一つとなりそうなのが「文教市場」、つまり各種の学校向け市場だ。既に国の方針として「教育のIT化に向けた環境整備4ヶ年計画(平成26〜29年度)」が掲げられ、総額6,712億円の予算が計上されている。その環境整備の1つとして「電子黒板不足分40万台の整備及び既存分1万台の更新にかかる費用」が盛り込まれているが、PVC社は電子黒板システムの大手で、国内学校現場にも2万台の導入実績があり、業界トップクラスである。そのためこのような国の方針は、PVC社にとって追い風であるのは間違いなく、同社の連結決算にも大きく寄与することが期待できそうだ。

▲医療向け
エムスリー<2413>との合弁会社であるエムキューブ(株)(同社出資比率49%)を2014年3月に設立したが、エムキューブでは、現在、主に製薬企業向けWeb講演会を実施している。また、これらの展開を皮切りに、エムキューブを中心に「遠隔医療・遠隔処方箋」等を含めたメディカルヘルスケア分野でのデファクトスタンダードを目指していく方針だ。具体例として、エムキューブは2015年6月からオンラインでの処方薬の対面販売サービスを開発開始した。

さらに2015年7月から、国際的に活躍している海外の医師による研究発表や症例報告、学会速報や解説動画を日本で視聴可能とする製薬企業向けの「海外Web 講演会」サービスを開始した。従来の海外からの配信と比較して、約1/2の低価格で、日本国内での開催と同品質のWeb 講演会を実現した。これにより製薬会社は、Web講演会の開催回数を増やし、医師からの要望に応え易くなる。今期の学会シーズンでは、既に3 件の配信が確定している。

●ドローンなどを中心としたロボティックス関連事業
また同社は、「ドローン(小型無人飛行機)」の商用利用に関する技術を開発するRapyuta Robotics(株)に出資し、ロボティクス関連事業を立ち上げている。例えば、人間が入れないような場所(プラント、鉄塔、橋梁、山奥など)の映像をドローンで撮影し、その画像を同社のWebシステムを利用して自治体、警察、消防、事業会社など異なる場所で同時に観察し、対策を協議する仕組みなどが考えられる。

現在、ドローンを活用したリアルタイムな映像による各種の実証実験が進行している。具体例として、ツネイシホールディングス(株)(広島県福山市)との実験では、施設内の設備点検や情報収集に関して、またNPO情報セキュリティ研究所(和歌山県田辺市)との実験では、災害対策やインフラ点検に関して、実用可能性の調査を行った。まだ実証実験の段階であるため、今期の同社の業績に寄与するものではないが、2016年12月期以降の収益化を目指している。

●ビジネス・生活に組み込まれる様々な使われ方
さらに同社にとって大きな追い風となりそうなのが「政策」の変化だ。現在の安倍政権は「地方創生」や「ワーク・ライフ・バランスの推進」を主な政策の1つとして掲げているが、この中には「遠隔営業」「遠隔医療・遠隔処方箋」「遠隔教育・教育ICT」「不動産IT重要事項説明」などが含まれる。これらの領域においては、同社が提供する「VCソリューション」を利用・活用する局面が増える可能性が高い。また、急増するインバウンドをサポートする「クラウド通訳」も「V-CUBEトランスレーター」で展開しており、様々な場面での利用が期待される。「Web会議」を中心とした今までの需要は主に「ビジネスシーン」で利用されるものであったが、今後は「生活シーン」の中で利用される場面が増える可能性があり、同社にとっては大きな事業チャンスと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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