ファーストロジック Research Memo(6):個人の不動産投資市場は成長余地が大きい
[15/10/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業モデルの詳細と成長シナリオ
(3)成長シナリオ
ファーストロジック<6037>の成長シナリオはX、Y、Zの3軸で考えると理解しやすいであろう。すなわち、「楽待」という1のサービスからの収入は加盟店数(X軸)と1加盟店当たりの単価(Y軸)の積で表すことが出来る。X軸、Y軸それぞれの伸長は即座に面積(収入)の拡大を意味する。また、Z軸方向にはサービスの種類や地域の重層化(「楽待」に「大家さんの味方」を追加したことがその一例)という形で成長余地を拡大させることができる。
a)「楽待」の成長シナリオ
「楽待」事業は物件数や利用者数などで不動産投資を目的としたポータルサイトでは国内第1位地位を占めており、同社自身の分析では市場シェアは40%に達している。個人の不動産投資市場は揺籃期にあるブルーオーシャン市場であり、成長余地は大きい。
成長シナリオの1つは加盟店数の増加だ。同社は、加盟店数の代わりに不動産の掲載物件数を公表している。2015年7月期第4四半期には物件数が40,000件を突破した。総務省の「平成18年(2006年)事業所・企業統計調査」によれば不動産取引業の事業数は247,517か所であった。ところで、国土交通省の統計では2006年度から2013年度までの間に宅地建物取引業者数は6.5%減少した。不動産業界内では現在の不動産店舗数を大まかに約20万店と言われており、前述の統計値と違和感はない。20万店舗のうち10%を加盟店化し、1店舗当たり20件掲載するという状況を想定すると、掲載物件数は【20,000店舗×20件=400,000万件】となり、現状の10倍だ。この場合の物件掲載サービスの売上高は、20件で月20,000円の収入となるので【20,000円×12ヶ月×20,000店=4,800百万円】ということになる。なお、50,000円の加盟料が初期費用として別途入ることになる。
全国の不動産店舗約20万店のどれくらいを加盟店化できるかの想定は難しい。上述のシミュレーションでは簡略のために10%としたが実際には3%〜5%程度ではないかというのが弊社の推測だ。多くの不動産会社は住居用不動産を中心に取り扱っていることがそう考える根拠だ。一方、1店当たりの登録物件数は20件以上というのはシミュレーションのための仮の数値であって、実際にはもっと多いと考えている。
また地域構成も重要な成長ポイントだ。現状は首都圏を始めとする3大都市圏の不動産事業者の物件が掲載物件のほとんどを占めており、それ以外地域の政令指定都市や地方中核都市などは実質的に手付かずの状態の模様だ。ここにも加盟店数増・掲載物件数増の成長余地が残されていると言える。
平均単価の上昇はもう1つの成長シナリオだ。「楽待」の各種サービスのうち、エントリーサービスである物件掲載サービスの料金は1物件当たり1,000円/月となっている。この料金は業界2番手のライバル企業の半額だ。同社は料金の安さを武器に掲載物件数を増加させている側面もあるため、安易な値上げには慎重な姿勢を取っているが、今後、サイトのバリューの一段の向上と合わせて、料金引き上げの可能性がある。
単価アップのもう1つの流れは、提案サービスや広告サービスへの誘導だ。広告サービスは広告枠の問題があるが、提案サービスの収蔵については理論的には青天井と言える。前述のように、料金が物件掲載サービスと比較して高いため、このサービスの利用率が向上すれば、平均単価、ひいては同社の収入総額は大きく増加することになる。
提案サービスへの誘導のための施策には、地道な手法ではあるが会員数の増加、ひいてはPV数の増加が一番の近道であるというのが弊社の考えだ。同社はYahoo!JAPANと提携したが、この効果は非常に大きいと弊社では評価している。当該提携は2015年4月(2015年7月期第3四半期中)からスタートした。
b)「大家さんの味方」の成長シナリオ
「大家さんの味方」のローンチは、前述のように、Z軸方向への成長可能性拡大策の一例と言える。同サイトは2015年7月から、「塗装(外壁・防水・鉄部)」の1カテゴリでスタートした。同社は2016年7月期において同サイト拡充の投資を行っていく予定だ。したがって本格的な収益貢献は2017年7月期からになると弊社ではみている。
前述のように「大家さんの味方」の収益モデルは「楽待」と同じだ。したがって加盟事業者数と、加盟店からの売上単価の積で同社の売上高が決まってくる。加盟事業者数については当面の主力業態と考えられるリフォーム事業者を例に取ると、その数は約100万店舗に上るというのが一般的に言われている規模だ。これは前述の不動産取引業の事業所数の約5倍に上る。事業所数が多い理由は、リフォームの内容によって、水道工事、塗装工事、内装工事など、担当分野によって業界・業者が広がっているためだ。同社は一般的なリフォーム項目を網羅し、この100万店舗をターゲットにして加盟事業者数を増やしていく計画だ。
単価に関しては、前述のように事業所の掲載料収入と、一括見積もり型の合算で構成される。単価アップは一括見積型収入の増加にかかっているが、「大家さんの味方」は現状では「楽待」の中のメニューの1つという構成だ。したがって潜在的顧客(見積もり依頼者)としては「楽待」の個人会員が想定されている。一方、「大家さんの味方」での見積もり依頼は楽待の会員以外も可能なつくりとなっている。そのため今後は、「楽待」や「大家さんの味方」を知らない不動産オーナーを誘導する仕組みづくりが重要なポイントになってくると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(3)成長シナリオ
ファーストロジック<6037>の成長シナリオはX、Y、Zの3軸で考えると理解しやすいであろう。すなわち、「楽待」という1のサービスからの収入は加盟店数(X軸)と1加盟店当たりの単価(Y軸)の積で表すことが出来る。X軸、Y軸それぞれの伸長は即座に面積(収入)の拡大を意味する。また、Z軸方向にはサービスの種類や地域の重層化(「楽待」に「大家さんの味方」を追加したことがその一例)という形で成長余地を拡大させることができる。
a)「楽待」の成長シナリオ
「楽待」事業は物件数や利用者数などで不動産投資を目的としたポータルサイトでは国内第1位地位を占めており、同社自身の分析では市場シェアは40%に達している。個人の不動産投資市場は揺籃期にあるブルーオーシャン市場であり、成長余地は大きい。
成長シナリオの1つは加盟店数の増加だ。同社は、加盟店数の代わりに不動産の掲載物件数を公表している。2015年7月期第4四半期には物件数が40,000件を突破した。総務省の「平成18年(2006年)事業所・企業統計調査」によれば不動産取引業の事業数は247,517か所であった。ところで、国土交通省の統計では2006年度から2013年度までの間に宅地建物取引業者数は6.5%減少した。不動産業界内では現在の不動産店舗数を大まかに約20万店と言われており、前述の統計値と違和感はない。20万店舗のうち10%を加盟店化し、1店舗当たり20件掲載するという状況を想定すると、掲載物件数は【20,000店舗×20件=400,000万件】となり、現状の10倍だ。この場合の物件掲載サービスの売上高は、20件で月20,000円の収入となるので【20,000円×12ヶ月×20,000店=4,800百万円】ということになる。なお、50,000円の加盟料が初期費用として別途入ることになる。
全国の不動産店舗約20万店のどれくらいを加盟店化できるかの想定は難しい。上述のシミュレーションでは簡略のために10%としたが実際には3%〜5%程度ではないかというのが弊社の推測だ。多くの不動産会社は住居用不動産を中心に取り扱っていることがそう考える根拠だ。一方、1店当たりの登録物件数は20件以上というのはシミュレーションのための仮の数値であって、実際にはもっと多いと考えている。
また地域構成も重要な成長ポイントだ。現状は首都圏を始めとする3大都市圏の不動産事業者の物件が掲載物件のほとんどを占めており、それ以外地域の政令指定都市や地方中核都市などは実質的に手付かずの状態の模様だ。ここにも加盟店数増・掲載物件数増の成長余地が残されていると言える。
平均単価の上昇はもう1つの成長シナリオだ。「楽待」の各種サービスのうち、エントリーサービスである物件掲載サービスの料金は1物件当たり1,000円/月となっている。この料金は業界2番手のライバル企業の半額だ。同社は料金の安さを武器に掲載物件数を増加させている側面もあるため、安易な値上げには慎重な姿勢を取っているが、今後、サイトのバリューの一段の向上と合わせて、料金引き上げの可能性がある。
単価アップのもう1つの流れは、提案サービスや広告サービスへの誘導だ。広告サービスは広告枠の問題があるが、提案サービスの収蔵については理論的には青天井と言える。前述のように、料金が物件掲載サービスと比較して高いため、このサービスの利用率が向上すれば、平均単価、ひいては同社の収入総額は大きく増加することになる。
提案サービスへの誘導のための施策には、地道な手法ではあるが会員数の増加、ひいてはPV数の増加が一番の近道であるというのが弊社の考えだ。同社はYahoo!JAPANと提携したが、この効果は非常に大きいと弊社では評価している。当該提携は2015年4月(2015年7月期第3四半期中)からスタートした。
b)「大家さんの味方」の成長シナリオ
「大家さんの味方」のローンチは、前述のように、Z軸方向への成長可能性拡大策の一例と言える。同サイトは2015年7月から、「塗装(外壁・防水・鉄部)」の1カテゴリでスタートした。同社は2016年7月期において同サイト拡充の投資を行っていく予定だ。したがって本格的な収益貢献は2017年7月期からになると弊社ではみている。
前述のように「大家さんの味方」の収益モデルは「楽待」と同じだ。したがって加盟事業者数と、加盟店からの売上単価の積で同社の売上高が決まってくる。加盟事業者数については当面の主力業態と考えられるリフォーム事業者を例に取ると、その数は約100万店舗に上るというのが一般的に言われている規模だ。これは前述の不動産取引業の事業所数の約5倍に上る。事業所数が多い理由は、リフォームの内容によって、水道工事、塗装工事、内装工事など、担当分野によって業界・業者が広がっているためだ。同社は一般的なリフォーム項目を網羅し、この100万店舗をターゲットにして加盟事業者数を増やしていく計画だ。
単価に関しては、前述のように事業所の掲載料収入と、一括見積もり型の合算で構成される。単価アップは一括見積型収入の増加にかかっているが、「大家さんの味方」は現状では「楽待」の中のメニューの1つという構成だ。したがって潜在的顧客(見積もり依頼者)としては「楽待」の個人会員が想定されている。一方、「大家さんの味方」での見積もり依頼は楽待の会員以外も可能なつくりとなっている。そのため今後は、「楽待」や「大家さんの味方」を知らない不動産オーナーを誘導する仕組みづくりが重要なポイントになってくると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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