メディシノバ Research Memo(2):上市まで進んだ開発品はないため開発フェーズの企業
[15/10/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
(1)会社沿革
メディシノバ<4875>は2000年9月、医薬品候補品の導入・開発を目的に田辺製薬(株)(現・田辺三菱製薬<4508>)の米国子会社であるタナベ リサーチ ラボラトリーズ U.S.A.の100%子会社として米国に設立された。設立2年目に、田辺製薬の経営方針転換により田辺製薬から独立し、事業を継続することとなった。
岩城氏は臓器移植専門の外科医師として27歳で渡米し、臓器移植のメッカである米ピッツバーグ大学では、最年少で教授となるなど医療現場で活躍していたが、外科医として助けられる患者数の限界を感じ、より広範な患者の治療に役立つような医薬品を開発していくという思いで同社を立ち上げ、現在に至っている。
2002年に杏林製薬(株)(現・キョーリン製薬ホールディングス<4569>)より抗炎症剤のMN-001をライセンス導入したのを皮切りに、中堅医薬品メーカーから有望と思われる医薬品のライセンス導入を行い、米国で開発を進めている。現在の開発化合物は4つで、合わせて10の適応領域において開発を進めている。まだ上市まで進んだ開発品はないため、安定的な収入はなく開発フェーズの企業となる。また、株式の上場は2005年で、まず大阪証券取引所ヘラクレス外国部(現・東証JASDAQ)に上場を果たし、2006年に米NASDAQ市場に上場している。
2015年6月末の従業員数は10名で、うち研究開発部門が5名、管理・財務部門が5名といった構成となっている。医薬品の開発戦略に関しては、日米で小児科医師であったCMO(チーフ・メディカル・オフィサー)の松田和子(まつだかずこ)氏が中心となって進めている。同社の特徴は、医療現場での勤務経験のある人材が医師の視点から開発を進めていることにあり、実際の医療ニーズやトレンドなどを的確に判断できる点にある。
子会社は3社あり、2006年に欧州での臨床開発を目的としたメディシノバ・リミテッド(ヨーロッパ)を、2007年に日本・アジアでの事業展開、IR・PR活動を目的としたメディシノバ製薬(株)をそれぞれ設立したほか、2009年に神経疾患治療薬の開発を行っていたNASDAQ上場の創薬ベンチャーの米アヴィジェンを完全子会社化している。
(2)ビジネスモデルと現在の開発ポートフォリオ
同社のビジネスモデルは、主として日本の中堅製薬企業から、新たな適応領域の可能性があると思われる医薬品に関して、主に欧米での開発販売に関するライセンスを導入し、市場規模の大きい米国で開発を進め、収益化していくことを基本としている。また、ライセンス導入した医薬品に関して、自社で臨床開発から上市まで進めるケース、治験のフェーズ2が終わった段階で提携先企業にライセンスアウトし、契約一時金やマイルストーン収入、ロイヤルティ収入を得るケースに分けられる。どちらを選択するかは、開発パイプラインの状況やその時の財務状況などによって判断していく格好となるが、将来的にはグローバルに展開する製薬企業になることを目標としている。
日本の製薬企業の中で、海外で医薬品の開発を積極的に行う体力やスキルがあるのは売上規模で5,000億円を超える大手5社程度に限られており、中堅以下の製薬企業では、自社で開発を進めるよりも他社にライセンス供与することで収益機会を得るといった戦略を選択するケースが多い。同社ではこうした中堅製薬企業が保有している医薬品の中から、有望な製品を探索してライセンス導入を行い、市場規模の大きい米国市場で有効と考えられる適応領域を見出しながら開発を進めている。
このように、当初の適応領域とは違った用途で需要が拡大する医薬品の例は多く、代表的なものとして、アスピリン(解熱鎮痛薬→血栓予防薬、心筋梗塞予防薬)、ミノキシジル(高血圧薬→毛髪再生薬)、バイアグラ(狭心症治療薬→男性機能改善薬)などがある。
現時点の開発化合物は4つで、これまで合わせて10の適応領域において開発を進めてきたが、このうち2つの化合物(MN-166、MN-001)に経営資源を集中し、今後の開発を進めていく方針を決定している。さらに、これまでの開発プログラムの中で、FDAからオーファンドラッグ指定を受けたものが2件、ファストトラック指定を受けたものが3件となっており、創薬ベンチャー企業の中では突出した指定承認件数となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1)会社沿革
メディシノバ<4875>は2000年9月、医薬品候補品の導入・開発を目的に田辺製薬(株)(現・田辺三菱製薬<4508>)の米国子会社であるタナベ リサーチ ラボラトリーズ U.S.A.の100%子会社として米国に設立された。設立2年目に、田辺製薬の経営方針転換により田辺製薬から独立し、事業を継続することとなった。
岩城氏は臓器移植専門の外科医師として27歳で渡米し、臓器移植のメッカである米ピッツバーグ大学では、最年少で教授となるなど医療現場で活躍していたが、外科医として助けられる患者数の限界を感じ、より広範な患者の治療に役立つような医薬品を開発していくという思いで同社を立ち上げ、現在に至っている。
2002年に杏林製薬(株)(現・キョーリン製薬ホールディングス<4569>)より抗炎症剤のMN-001をライセンス導入したのを皮切りに、中堅医薬品メーカーから有望と思われる医薬品のライセンス導入を行い、米国で開発を進めている。現在の開発化合物は4つで、合わせて10の適応領域において開発を進めている。まだ上市まで進んだ開発品はないため、安定的な収入はなく開発フェーズの企業となる。また、株式の上場は2005年で、まず大阪証券取引所ヘラクレス外国部(現・東証JASDAQ)に上場を果たし、2006年に米NASDAQ市場に上場している。
2015年6月末の従業員数は10名で、うち研究開発部門が5名、管理・財務部門が5名といった構成となっている。医薬品の開発戦略に関しては、日米で小児科医師であったCMO(チーフ・メディカル・オフィサー)の松田和子(まつだかずこ)氏が中心となって進めている。同社の特徴は、医療現場での勤務経験のある人材が医師の視点から開発を進めていることにあり、実際の医療ニーズやトレンドなどを的確に判断できる点にある。
子会社は3社あり、2006年に欧州での臨床開発を目的としたメディシノバ・リミテッド(ヨーロッパ)を、2007年に日本・アジアでの事業展開、IR・PR活動を目的としたメディシノバ製薬(株)をそれぞれ設立したほか、2009年に神経疾患治療薬の開発を行っていたNASDAQ上場の創薬ベンチャーの米アヴィジェンを完全子会社化している。
(2)ビジネスモデルと現在の開発ポートフォリオ
同社のビジネスモデルは、主として日本の中堅製薬企業から、新たな適応領域の可能性があると思われる医薬品に関して、主に欧米での開発販売に関するライセンスを導入し、市場規模の大きい米国で開発を進め、収益化していくことを基本としている。また、ライセンス導入した医薬品に関して、自社で臨床開発から上市まで進めるケース、治験のフェーズ2が終わった段階で提携先企業にライセンスアウトし、契約一時金やマイルストーン収入、ロイヤルティ収入を得るケースに分けられる。どちらを選択するかは、開発パイプラインの状況やその時の財務状況などによって判断していく格好となるが、将来的にはグローバルに展開する製薬企業になることを目標としている。
日本の製薬企業の中で、海外で医薬品の開発を積極的に行う体力やスキルがあるのは売上規模で5,000億円を超える大手5社程度に限られており、中堅以下の製薬企業では、自社で開発を進めるよりも他社にライセンス供与することで収益機会を得るといった戦略を選択するケースが多い。同社ではこうした中堅製薬企業が保有している医薬品の中から、有望な製品を探索してライセンス導入を行い、市場規模の大きい米国市場で有効と考えられる適応領域を見出しながら開発を進めている。
このように、当初の適応領域とは違った用途で需要が拡大する医薬品の例は多く、代表的なものとして、アスピリン(解熱鎮痛薬→血栓予防薬、心筋梗塞予防薬)、ミノキシジル(高血圧薬→毛髪再生薬)、バイアグラ(狭心症治療薬→男性機能改善薬)などがある。
現時点の開発化合物は4つで、これまで合わせて10の適応領域において開発を進めてきたが、このうち2つの化合物(MN-166、MN-001)に経営資源を集中し、今後の開発を進めていく方針を決定している。さらに、これまでの開発プログラムの中で、FDAからオーファンドラッグ指定を受けたものが2件、ファストトラック指定を受けたものが3件となっており、創薬ベンチャー企業の中では突出した指定承認件数となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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