ハウスドゥ Research Memo(9):財務体質の強化と利益の高成長が高評価につながる
[15/10/23]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■類似会社比較
企業収益を総合的に見るROE(自己資本当期純利益率)を中心に、類似会社との財務データ比較をする。上場時の比較会社は、ハウスコム<3275>、東武住販<3297>、スターツコーポレーション<8850>、日住サービス<8854>、フジ住宅<8860>、アパマンショップHD<8889>、センチュリー21・ジャパン<8898>の7社であった。これらの企業はすべて業種別分類で不動産業に属するが、事業規模や事業内容が異なり、市場も東証1部が2社、2部が1社、ジャスダックが4社に分かれる。同社の売上高は、フランチャイズ事業、不動産事業、不動産流通事業、住宅・リフォーム事業、その他により構成されており、直接的に比べられる会社はない。今後は、フランチャイズ本部事業が収益のウェートを高め、利益面での急成長が見込まれることから、不動産関連のネットサービス会社であるネクスト<2120>とファーストロジック<6037>も比較企業に加えた。同社とファーストロジックは、東証マザーズに上場している。
ハウスドゥ<3457>を含む10社の直近期のROEは、日住サービスを除き、望ましいとされる10%を超えている。日住サービスにしても9.8%と高い。しかし、ROA(総資産経常利益率)で見ると、同社を含め5社が10%を割ってしまう。ROEは、計算式がROE=当期純利益÷自己資本であるため、売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)に分解できる。一方、ROAは、ROA=経常利益÷総資産であることから、売上高経常利益率(経常利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)になる。ROEとROAは、ともに売上高利益率と資産効率の要素をもつが、ROEはそれに財務面でのテコがどれだけ効いているかが重要なファクターとなる。同社の場合、ROEが34.9%であるのに対し、ROAは7.1%にとどまる。売上高利益率は、売上高経常利益率が3.5%、売上高当期純利益率が2.4%と低く、総資産回転率が2.02回と高いものの、ROEは多分に財務レバレッジ(7.14倍)からの影響を受けている。
当期純利益が経常利益に比べ“異常に大きい”場合も、ROEがROAに比べて大きくなる。日住サービスとアパマンショップHDは、売上高当期純利益率が売上高経常利益率を上回っており、明らかに特別利益などの影響がでている。
資産効率と財務体質を見ると、総資産回転率が1回に届かない会社が6社ある。他人資本に大きく依存する高財務レバレッジでは、アパマンショップHDが5.27倍と同社に次いで大きい。アパマンショップの総資産回転率は、同社の2.02回に対して0.74回と低い。他人資本を活用しているものの、売上高の拡大が十分でなく、高収益でないため(売上高経常利益率:3.9%)、ROAは2.9%にとどまる。
サービス業のネクストとファーストロジックは、総資産回転率がそれぞれ1.02回と0.81回と低いだけでなく、財務レバレッジも1.71倍、1.23倍と低水準である。財務レバレッジの逆数となる自己資本比率は、ファーストロジックは85.9%と高い。事業の拡大にあまり資金を必要としないため、流動資産の現預金が総資産の80.3%を占めており、資産を有効活用できているとは言えない。ネクストの自己資本比率は47.5%であるが、前期の同比率が76.4%と高く、計算には期首期末の平均を用いることから、それが財務レバレッジの低さに作用している。
ROEは、PERやPBRと密接に関係している。計算式は、PBR(株価÷BPS)=ROE(EPS÷BPS)×PER(株価÷EPS)になる。BPSは1株当たり純資産、EPSが1株当たり当期純利益になる。PERを起点とすると、PER=ROE÷PBRとなるため、PERが高くなるためには、ROEが上がるか、PBRが下がる、もしくは両方により実現されることになる。
時価総額が純資産よりも低く評価される、PBRが1倍割れの会社は、日住サービス、フジ住宅、アパマンショップHDの3社である。日住サービスとフジ住宅は、予想PERがいずれも8.1倍にとどまる。アパマンショップHDの当期純利益は、赤字予想である。一般的に資本集約的企業のPBRは低くなる傾向があるが、いわゆる『解散価値』を割れている状態は、現有資産の将来収益を生む力が問われていることになる。
サービス業の2社は、PBRとPERが同社の5.15倍と14.2倍より高い。ネクストのPBRは5.25倍、PERは41.1倍、ファーストロジックがそれぞれ7.40倍、30.9倍である。これらの2社は、業容拡大のために多額の資金を必要とせず、高収益・高成長を維持すれば、自己資本を急速に充実させることになる。PBRを下げやすい企業体質ということになる。
不動産業とネット関連のサービス業では成長性が異なることから、それを勘案して過去3年のCAGR(年平均成長率)を比較した。当期純利益だけでは、特別損益に大きく影響を受けることがあるため、増収率も併せて見た。同社は、連結決算の集計期間が短いため、過去2年のCAGRになるが、売上高が32.9%、当期純利益が110.1%であった。ネクストは、過去3年のCAGRそれぞれ20.2%、42.1%、ファーストロジックが60.9%、122.7%と目覚ましい高成長を達成した。
今期の会社予想の売上高の伸び率と営業利益の伸長率をみると、同社はそれぞれ12.2%、49.9%と高成長が継続する計画が立てられている。今期からIFRSに移行するネクトスは、それぞれ43.9%、60.3%、ファーストロジックは37.1%、22.3%を見込んでいる。単品経営の場合、成長余地が限定され、分母の拡大に伴って成長率が鈍化する可能性がある。もちろん、成長継続のための商品開発や事業領域の拡大などの企業努力がなされるであろう。
同社のPERは、不動産業ではセンチュリー21・ジャパン(15.2倍)に次いで高いものの、高成長期待からすると物足りない。高PBRが、足かせとなっていることが考えられる。同社は、将来、自己資本比率を前期の17.6%から30%に引き上げる方針でいる。売上高経常利益率は、前期の3.5%から2018年6月期には7.6%へ高めることを計画している。それを実現するため、労働集約型か安定収益源となるストック型ビジネスに移行することで事業構造の改革を行う。他社に先駆けた将来性のある新商品の投入、同分野におけるトップシェアの獲得、フランチャイズ本部としてそれら新商品の市場浸透の加速化が顕著になれば、早晩、投資家の同社に対する見方、株価評価に好ましい変化が起きよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<HN>
企業収益を総合的に見るROE(自己資本当期純利益率)を中心に、類似会社との財務データ比較をする。上場時の比較会社は、ハウスコム<3275>、東武住販<3297>、スターツコーポレーション<8850>、日住サービス<8854>、フジ住宅<8860>、アパマンショップHD<8889>、センチュリー21・ジャパン<8898>の7社であった。これらの企業はすべて業種別分類で不動産業に属するが、事業規模や事業内容が異なり、市場も東証1部が2社、2部が1社、ジャスダックが4社に分かれる。同社の売上高は、フランチャイズ事業、不動産事業、不動産流通事業、住宅・リフォーム事業、その他により構成されており、直接的に比べられる会社はない。今後は、フランチャイズ本部事業が収益のウェートを高め、利益面での急成長が見込まれることから、不動産関連のネットサービス会社であるネクスト<2120>とファーストロジック<6037>も比較企業に加えた。同社とファーストロジックは、東証マザーズに上場している。
ハウスドゥ<3457>を含む10社の直近期のROEは、日住サービスを除き、望ましいとされる10%を超えている。日住サービスにしても9.8%と高い。しかし、ROA(総資産経常利益率)で見ると、同社を含め5社が10%を割ってしまう。ROEは、計算式がROE=当期純利益÷自己資本であるため、売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)に分解できる。一方、ROAは、ROA=経常利益÷総資産であることから、売上高経常利益率(経常利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)になる。ROEとROAは、ともに売上高利益率と資産効率の要素をもつが、ROEはそれに財務面でのテコがどれだけ効いているかが重要なファクターとなる。同社の場合、ROEが34.9%であるのに対し、ROAは7.1%にとどまる。売上高利益率は、売上高経常利益率が3.5%、売上高当期純利益率が2.4%と低く、総資産回転率が2.02回と高いものの、ROEは多分に財務レバレッジ(7.14倍)からの影響を受けている。
当期純利益が経常利益に比べ“異常に大きい”場合も、ROEがROAに比べて大きくなる。日住サービスとアパマンショップHDは、売上高当期純利益率が売上高経常利益率を上回っており、明らかに特別利益などの影響がでている。
資産効率と財務体質を見ると、総資産回転率が1回に届かない会社が6社ある。他人資本に大きく依存する高財務レバレッジでは、アパマンショップHDが5.27倍と同社に次いで大きい。アパマンショップの総資産回転率は、同社の2.02回に対して0.74回と低い。他人資本を活用しているものの、売上高の拡大が十分でなく、高収益でないため(売上高経常利益率:3.9%)、ROAは2.9%にとどまる。
サービス業のネクストとファーストロジックは、総資産回転率がそれぞれ1.02回と0.81回と低いだけでなく、財務レバレッジも1.71倍、1.23倍と低水準である。財務レバレッジの逆数となる自己資本比率は、ファーストロジックは85.9%と高い。事業の拡大にあまり資金を必要としないため、流動資産の現預金が総資産の80.3%を占めており、資産を有効活用できているとは言えない。ネクストの自己資本比率は47.5%であるが、前期の同比率が76.4%と高く、計算には期首期末の平均を用いることから、それが財務レバレッジの低さに作用している。
ROEは、PERやPBRと密接に関係している。計算式は、PBR(株価÷BPS)=ROE(EPS÷BPS)×PER(株価÷EPS)になる。BPSは1株当たり純資産、EPSが1株当たり当期純利益になる。PERを起点とすると、PER=ROE÷PBRとなるため、PERが高くなるためには、ROEが上がるか、PBRが下がる、もしくは両方により実現されることになる。
時価総額が純資産よりも低く評価される、PBRが1倍割れの会社は、日住サービス、フジ住宅、アパマンショップHDの3社である。日住サービスとフジ住宅は、予想PERがいずれも8.1倍にとどまる。アパマンショップHDの当期純利益は、赤字予想である。一般的に資本集約的企業のPBRは低くなる傾向があるが、いわゆる『解散価値』を割れている状態は、現有資産の将来収益を生む力が問われていることになる。
サービス業の2社は、PBRとPERが同社の5.15倍と14.2倍より高い。ネクストのPBRは5.25倍、PERは41.1倍、ファーストロジックがそれぞれ7.40倍、30.9倍である。これらの2社は、業容拡大のために多額の資金を必要とせず、高収益・高成長を維持すれば、自己資本を急速に充実させることになる。PBRを下げやすい企業体質ということになる。
不動産業とネット関連のサービス業では成長性が異なることから、それを勘案して過去3年のCAGR(年平均成長率)を比較した。当期純利益だけでは、特別損益に大きく影響を受けることがあるため、増収率も併せて見た。同社は、連結決算の集計期間が短いため、過去2年のCAGRになるが、売上高が32.9%、当期純利益が110.1%であった。ネクストは、過去3年のCAGRそれぞれ20.2%、42.1%、ファーストロジックが60.9%、122.7%と目覚ましい高成長を達成した。
今期の会社予想の売上高の伸び率と営業利益の伸長率をみると、同社はそれぞれ12.2%、49.9%と高成長が継続する計画が立てられている。今期からIFRSに移行するネクトスは、それぞれ43.9%、60.3%、ファーストロジックは37.1%、22.3%を見込んでいる。単品経営の場合、成長余地が限定され、分母の拡大に伴って成長率が鈍化する可能性がある。もちろん、成長継続のための商品開発や事業領域の拡大などの企業努力がなされるであろう。
同社のPERは、不動産業ではセンチュリー21・ジャパン(15.2倍)に次いで高いものの、高成長期待からすると物足りない。高PBRが、足かせとなっていることが考えられる。同社は、将来、自己資本比率を前期の17.6%から30%に引き上げる方針でいる。売上高経常利益率は、前期の3.5%から2018年6月期には7.6%へ高めることを計画している。それを実現するため、労働集約型か安定収益源となるストック型ビジネスに移行することで事業構造の改革を行う。他社に先駆けた将来性のある新商品の投入、同分野におけるトップシェアの獲得、フランチャイズ本部としてそれら新商品の市場浸透の加速化が顕著になれば、早晩、投資家の同社に対する見方、株価評価に好ましい変化が起きよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<HN>