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カイオム Research Memo(1):完全ヒトADLib(R)システムの技術導出の実現に注力

注目トピックス 日本株
カイオム・バイオサイエンス<4583>は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)発の創薬基盤技術型バイオベンチャーである。独自の創薬基盤技術であるADLib(R)システムを核とした抗体医薬品の研究開発支援や研究開発等を行っている。ADLib(R)システムの特徴は、従来の抗体作製技術と比較して「多様性」「迅速性」「困難抗原への対応」に優れていることにあり、従来方式では作製が困難な抗体を中心に研究開発を進めている。

8月14日付で同社は2015年12月期の業績について、売上高を前回予想の636百万円から254百万円に、営業損失を1,908百万円から1,412百万円にそれぞれ修正発表した。売上高については抗セマフォリン3A抗体の今期中の導出が難しくなったこと、完全ヒトADLib(R)システムの検証契約獲得が遅延していることなどが主因。また、営業損失については、「ナノ医療イノベーションセンター」への開発拠点新設見送りや、米国での拠点設立延期、販管費圧縮などが要因となっている。同時に2013年5月発表の中期経営計画の見直しと2016年12月期の利益予想が黒字化困難となったことを発表している。ただ、これで当面の悪材料は出し尽くしたもようで、今後は技術導出の実現など収益の拡大を目指していく考えだ。

今後の戦略として、完全ヒトADLib(R)システムについては、技術導出を実現するため、ファーストインクラスになり得るターゲットの抗体作製に加えて、開発スピードの速いPOC※が確立されているターゲットの抗体作製を推進していく。前臨床試験レベルで薬効を示す抗体の作製を行い、検証契約へと結び付けていきたい考えだ。また、旧(株)リブテックが開発した抗体(LIV-1205、LIV-2008)の導出やADLib(R)システムの診断薬ビジネスでの展開なども進めていく。
※POC(Proof of Concept):基礎研究の段階で疾患とその標的の関連性が明らかになっているものを生物学的POCといい、臨床試験で安全性・有効性が確認されているものを臨床的POCと呼ぶ。

また10月15日には、感染症領域のビジョン推進のためのシナジーや企業価値拡大を期待し、株式会社イーベックへの出資を決定したとのリリースがなされている。イーベック社は平成15年1月に高田賢藏氏(北海道大学名誉教授)によって設立されたヒト体内で抗体産生を担う血液Bリンパ球から完全ヒト抗体を作製する独自プラットフォーム技術を有するバイオベンチャーであり、これまで感染症領域でのリード抗体開発の実績を有している。昨年末、感染症領域での研究開発促進や技術獲得等を目的とした資金調達が行われているが、本出資も感染症領域での研究開発促進目的であることがうかがえる。

■Check Point
・コア技術は抗体作製技術「ADLib(R)システム」
・ヒト化抗体LIV-1205でスイス企業とオプションライセンス契約締結
・完全ヒトADLib(R)システムの技術導出などに注力、早期の黒字化を目指す
・イーベックへの出資により感染症領域における研究開発シナジーを期待

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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