ADワークス Research Memo(5):米国の収益不動産事業は事業規模を積極的に拡大していく方針
[15/12/03]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
(3) 2016年3月期見通し
エー・ディー・ワークス<3250>の2016年3月期の連結業績は、売上高が前期比15.5%増の12,400百万円、EBITDAが同18.2%増の935百万円、経常利益が同11.0%増の600百万円と期初計画を据え置いている。第2四半期までの進捗率が売上高、経常利益ともに60%を超えているが、ほぼ会社想定どおりの進捗だったことや、下期は収益不動産残高の積み上げを優先する方針であることから、通期業績については会社計画どおりに着地する見通しだ。ただ、収益不動産残高に関しては仕入れが順調に進んでいるもようで、2016年3月末には15,000百万円程度が見込まれている。この水準は中期計画の最終年度となる2017年3月期の平均残高目標値と同水準であり、収益不動産残高の積み上げに関しては想定よりも順調なペースで進んでいるものと思われる。
事業セグメント別の売上見通しとしては、収益不動産販売事業が米国事業の成長もあって前期比14%程度の増収が見込まれる。一方、ストック型フィービジネス事業に関しては、収益不動産の平均残高が13,000百万円程度、賃貸収入の利回りが同水準だとすると、賃貸収入で約800〜900百万円となる。PM業務やコンサルティングサービス収入なども管理物件数の増加に伴い、10%台の成長が見込めることから、同事業の売上高は前期比17%程度の増収となる見通しだ。
○国内の収益不動産事業の取組み方針
国内の市場環境としては、金融緩和政策の継続により銀行からの融資条件など好環境が続くこと、株式市場の活況が続いていること、相続税対策の一環としての不動産投資の需要が根強いこと、など同社にとっては追い風が吹いているが、直近の不動産投資利回りについて見れば、従来の低下トレンドから上昇に転じるなど、転換期とも取れるシグナルも出ている。実際、今期に入って同社に入ってくる売り物件の情報は前年に比べて増加傾向にあるほか、同社の販売期間も長期化し、棟当たり利益率も若干低下している。投資利回りが低下しすぎたことによる需給バランスの軟化が要因であり、投資利回りが一定水準まで回復すれば需給バランスも引き締まってくるものと思われる。このため、同社では従来よりも慎重に価格の見極めや物件の厳選を行い、仕入れを実行していく方針としている。
○米国の収益不動産事業について
前期よりスタートした米国の収益不動産事業に関しては、事業拡大に向けた体制が整ってきた。現地で仕入れた不動産物件を担保にした融資が今まで邦銀からしか受けられなかったが、12月より現地銀行からも融資が受けられるようになり、仕入活動を積極的に行えるようになったほか、売却物件の情報収集ネットワークや、顧客向けのサポート体制も構築できたことで、事業規模を積極的に拡大していく方針だ。
米国での収益不動産事業は、ロサンゼルスなど人気エリアの西海外にターゲットを絞って展開している。同エリアでは毎年人口の増加が続くなかで、新築物件の供給が慢性的に少ない市場構造となっており、中古マンションでの賃借料も毎年3%程度の安定した上昇が見込まれるためだ。前期に事業をスタートさせてから2015年9月までの累計実績では、仕入れが11棟(うち今上期で3棟)、販売が3棟(うち今上期1棟)となっている。また、11月中旬段階までで見ると、仕入れ、販売ともに2棟ずつ増加した。
物件購入者はすべて国内の個人富裕層で、プライベートバンクや税理士法人からの紹介のほか、同社の既存顧客が購入した。現地の投資家に販売することも可能ではあるが、同社のバリューチェーンの中には組み込まれないので、国内の個人富裕層を対象に販売を行っていく方針だ。海外不動産を購入する際の融資条件は、担保付与など条件が厳しくなることが多く、また、購入後の不動産の管理や修繕等の委託先をどうするか、不動産を売却する際の売却方法や依頼先、税務処理など複雑なことから、投資を敬遠する投資家も多いが、同社では東京本社と現地子会社の双方から、物件取得時、保有時、売却時の様々な業務をフルサポートする体制を構築するなど、スムーズな投資を行う環境を整えている。海外不動産投資に関して、このように充実したフルサポート体制を構築しているのは、国内では現段階では同社のみであることから、今後、海外不動産投資を希望する投資家を顧客として獲得する可能性は高いと言えよう。
人員体制では米国子会社で今期より1名増員し、常駐スタッフ3名体制としたほか、東京本社では海外事業部で4名体制としている。米国では主に仕入れ活動を、国内では主に販売活動と顧客サポートと役割分担をしていく。このように事業拡大のための体制が整ったことから、同社では仕入れのペースを今後加速していく方針だ。具体的には従来、四半期ごとに2棟ペースのところを、今後は4棟ペースに加速していく。また、販売方法に関しても従来はプライベートバンクや税理士法人を介しての、間接的な販売活動にとどまっていたが、今下期以降は直接、個人富裕層向けに販売プロモーションを行っていく計画となっている。具体的には、個人富裕層向けだけを対象とした各種メディア(雑誌等)を介して米国不動産投資に関するセミナー(東京、大阪)の開催告知を行い、米国での不動産投資の現状や税制面でのメリットなどを十分理解してもらったうえで、物件紹介を行っていく。同社では2017年3月期には売上高で20億円程度、保有物件数で20棟、保有残高で40億円程度を目標としている。また、中期的には融資条件など環境の改善が進めば、連結売上高の約5割を米国事業で占めるまでに育成していく考えだ。米国事業での利益率は収益不動産販売で15%程度、賃貸収入利回りで4%程度を想定しており、今後の新たな収益けん引役として注目されよう。
○その他サービスの取組みについて
同社では既存顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を最大化していくため、プロパティ・マネジメント(PM)業務や総合資産コンサルティングサービスなどについても、強化を進めている。PM業務では9月末の収益不動産管理戸数が3,377戸と前年同期比で281戸増となり、順調に拡大している。同社では将来的に1万戸を目標として掲げている。
また、総合不動産資産コンサルティングサービスでは、同社で不動産を購入したオーナー向けの会員組織「Royaltorch」で専属のコンサルタントを配置し、不動産の購入や売却、リノベーションや税金対策など幅広いコンサルティングサービスを提供しているほか、各種セミナーや交流会等のイベントを開催し、会員間の情報交換や新たな顧客の紹介なども行っている。「Royaltorch」の会員数は現在170名弱と着実に増加しており、将来的には500名程度まで規模を拡大したい考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(3) 2016年3月期見通し
エー・ディー・ワークス<3250>の2016年3月期の連結業績は、売上高が前期比15.5%増の12,400百万円、EBITDAが同18.2%増の935百万円、経常利益が同11.0%増の600百万円と期初計画を据え置いている。第2四半期までの進捗率が売上高、経常利益ともに60%を超えているが、ほぼ会社想定どおりの進捗だったことや、下期は収益不動産残高の積み上げを優先する方針であることから、通期業績については会社計画どおりに着地する見通しだ。ただ、収益不動産残高に関しては仕入れが順調に進んでいるもようで、2016年3月末には15,000百万円程度が見込まれている。この水準は中期計画の最終年度となる2017年3月期の平均残高目標値と同水準であり、収益不動産残高の積み上げに関しては想定よりも順調なペースで進んでいるものと思われる。
事業セグメント別の売上見通しとしては、収益不動産販売事業が米国事業の成長もあって前期比14%程度の増収が見込まれる。一方、ストック型フィービジネス事業に関しては、収益不動産の平均残高が13,000百万円程度、賃貸収入の利回りが同水準だとすると、賃貸収入で約800〜900百万円となる。PM業務やコンサルティングサービス収入なども管理物件数の増加に伴い、10%台の成長が見込めることから、同事業の売上高は前期比17%程度の増収となる見通しだ。
○国内の収益不動産事業の取組み方針
国内の市場環境としては、金融緩和政策の継続により銀行からの融資条件など好環境が続くこと、株式市場の活況が続いていること、相続税対策の一環としての不動産投資の需要が根強いこと、など同社にとっては追い風が吹いているが、直近の不動産投資利回りについて見れば、従来の低下トレンドから上昇に転じるなど、転換期とも取れるシグナルも出ている。実際、今期に入って同社に入ってくる売り物件の情報は前年に比べて増加傾向にあるほか、同社の販売期間も長期化し、棟当たり利益率も若干低下している。投資利回りが低下しすぎたことによる需給バランスの軟化が要因であり、投資利回りが一定水準まで回復すれば需給バランスも引き締まってくるものと思われる。このため、同社では従来よりも慎重に価格の見極めや物件の厳選を行い、仕入れを実行していく方針としている。
○米国の収益不動産事業について
前期よりスタートした米国の収益不動産事業に関しては、事業拡大に向けた体制が整ってきた。現地で仕入れた不動産物件を担保にした融資が今まで邦銀からしか受けられなかったが、12月より現地銀行からも融資が受けられるようになり、仕入活動を積極的に行えるようになったほか、売却物件の情報収集ネットワークや、顧客向けのサポート体制も構築できたことで、事業規模を積極的に拡大していく方針だ。
米国での収益不動産事業は、ロサンゼルスなど人気エリアの西海外にターゲットを絞って展開している。同エリアでは毎年人口の増加が続くなかで、新築物件の供給が慢性的に少ない市場構造となっており、中古マンションでの賃借料も毎年3%程度の安定した上昇が見込まれるためだ。前期に事業をスタートさせてから2015年9月までの累計実績では、仕入れが11棟(うち今上期で3棟)、販売が3棟(うち今上期1棟)となっている。また、11月中旬段階までで見ると、仕入れ、販売ともに2棟ずつ増加した。
物件購入者はすべて国内の個人富裕層で、プライベートバンクや税理士法人からの紹介のほか、同社の既存顧客が購入した。現地の投資家に販売することも可能ではあるが、同社のバリューチェーンの中には組み込まれないので、国内の個人富裕層を対象に販売を行っていく方針だ。海外不動産を購入する際の融資条件は、担保付与など条件が厳しくなることが多く、また、購入後の不動産の管理や修繕等の委託先をどうするか、不動産を売却する際の売却方法や依頼先、税務処理など複雑なことから、投資を敬遠する投資家も多いが、同社では東京本社と現地子会社の双方から、物件取得時、保有時、売却時の様々な業務をフルサポートする体制を構築するなど、スムーズな投資を行う環境を整えている。海外不動産投資に関して、このように充実したフルサポート体制を構築しているのは、国内では現段階では同社のみであることから、今後、海外不動産投資を希望する投資家を顧客として獲得する可能性は高いと言えよう。
人員体制では米国子会社で今期より1名増員し、常駐スタッフ3名体制としたほか、東京本社では海外事業部で4名体制としている。米国では主に仕入れ活動を、国内では主に販売活動と顧客サポートと役割分担をしていく。このように事業拡大のための体制が整ったことから、同社では仕入れのペースを今後加速していく方針だ。具体的には従来、四半期ごとに2棟ペースのところを、今後は4棟ペースに加速していく。また、販売方法に関しても従来はプライベートバンクや税理士法人を介しての、間接的な販売活動にとどまっていたが、今下期以降は直接、個人富裕層向けに販売プロモーションを行っていく計画となっている。具体的には、個人富裕層向けだけを対象とした各種メディア(雑誌等)を介して米国不動産投資に関するセミナー(東京、大阪)の開催告知を行い、米国での不動産投資の現状や税制面でのメリットなどを十分理解してもらったうえで、物件紹介を行っていく。同社では2017年3月期には売上高で20億円程度、保有物件数で20棟、保有残高で40億円程度を目標としている。また、中期的には融資条件など環境の改善が進めば、連結売上高の約5割を米国事業で占めるまでに育成していく考えだ。米国事業での利益率は収益不動産販売で15%程度、賃貸収入利回りで4%程度を想定しており、今後の新たな収益けん引役として注目されよう。
○その他サービスの取組みについて
同社では既存顧客のLTV(Life Time Value:生涯価値)を最大化していくため、プロパティ・マネジメント(PM)業務や総合資産コンサルティングサービスなどについても、強化を進めている。PM業務では9月末の収益不動産管理戸数が3,377戸と前年同期比で281戸増となり、順調に拡大している。同社では将来的に1万戸を目標として掲げている。
また、総合不動産資産コンサルティングサービスでは、同社で不動産を購入したオーナー向けの会員組織「Royaltorch」で専属のコンサルタントを配置し、不動産の購入や売却、リノベーションや税金対策など幅広いコンサルティングサービスを提供しているほか、各種セミナーや交流会等のイベントを開催し、会員間の情報交換や新たな顧客の紹介なども行っている。「Royaltorch」の会員数は現在170名弱と着実に増加しており、将来的には500名程度まで規模を拡大したい考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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