日本調剤 Research Memo(3):売上成長は1店舗当たり顧客数と処方箋1枚当たり収入増加が基本
[15/12/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績の動向
(2)各事業セグメントの動向
a)調剤薬局事業
調剤薬局は、健康保険制度の中に組み込まれた保険薬局であり、報酬(収入)が健康保険制度で定められた収入算定の基礎となる“点数”で決められている。そのため、売上高を成長させる方策は、1店舗当たりの顧客数(顧客が持参する処方箋の処理枚数で表現されることが多い)の増加と処方箋1枚当たりの収入増加(処方箋単価と表現されることが多い)の2つが基本となる。両者の積が店舗当たり売上高になるということだ。各店舗の顧客数は外部環境が変わらなければそう大きくは変動しないので、実際には出店を重ねて企業としての総顧客数を増やしていくことになる。
日本調剤<3341>の調剤薬局事業もこの枠組みは変わらない。出店数では、2016年3月期第2四半期は、18店舗を新規出店し7店舗を閉鎖した。この結果、期末の調剤薬局店舗数は521店舗となり、半年前から11店舗増加した(ほかに物販専門店が1店舗という状況は従来と同じ)。店舗形態には門前型、モール型、面対応型と大きく3種類ある。今第2四半期においては、千葉県旭市において大型病院の医薬分業に対応して3店舗を出店したことが新規出店のトピックスとなった。
処方箋単価向上のために同社は、国が推進するジェネリック医薬品の使用拡大と、在宅医療対応の強化による調剤技術料の獲得を進めている。ジェネリック医薬品の処方割合が一定数を超えると「後発医薬品調剤体制加算」が得られ、在宅医療対応強化によって「基準調剤加算」が得られるためだ。これらの加算は、各店舗ごとに行われ、当該店舗で取り扱うすべての処方箋に対してなされるため、収益への貢献度は大きい。
同社の、2016年3月期第2四半期のジェネリック医薬品使用率(分母はジェネリック医薬品が存在する先発品とジェネリック医薬品の合計、数量ベース)は76.7%に達した。国はこの比率を2020年3月末までのなるべく早い時期に80%にするという目標を掲げている。同社自身は2016年3月の段階で国の目標よりも高い85%に引き上げることを目指している。
同社は2015年3月末の段階で510店舗を展開しているが、そのうち83.7%の店舗がジェネリック医薬品の調剤体制加算2(22点)を、10.0%が同加算1(18点)を獲得している。加算点獲得店舗の割合は同業他社に比べて最も高い。
同社は在宅医療対応も着実に進めており、2016年3月期第2四半期末(9月)の在宅医療実施店舗割合は94.6%に達した。これは調剤薬局521店舗の中で、直近の12ヶ月間で1回でも在宅医療対応の実績を有する店舗の割合を表す。
在宅医療対応によって得られる基準調剤加算は、様々な手続きや条件達成が必要であるため、ジェネリック医薬品調剤体制加算に比べると加算獲得のハードルは高い。それでも大手調剤薬局はどこも加算獲得店舗を増やしているが、同社はその中でも加算獲得店舗数の割合が加算1と加算2の合計割合が86.4%と最も高く、加算2獲得店の割合は21.4%と他を引き離している状況だ。
b)医薬品製造販売事業
同社は2005年に日本ジェネリック(株)を設立し、ジェネリック医薬品の製造販売事業に進出した。当初は他社からの導入品(仕入品)を扱っていたが、生産体制が整備された2008年3月期からは自社による承認・製造品目を拡大させてきている。2013年4月には長生堂製薬(株)を子会社化し、販売品目数が一気に増大した。2016年3月期第2四半期においては、6月に新製品19品目を発売する一方、グループ会社間の重複を整理した結果、期末の販売品目数は575品目となっている。
2016年3月期第2四半期において製造拠点の拡充策も発表された。日本ジェネリック(株)においては、従来はつくば工場N棟の1拠点だったものが、2015年3月期においてつくば工場S棟の完成とテバ製薬(株)からの春日部工場取得で3工場体制となり、生産能力も10億錠から32億錠へと拡大した。また、長生堂製薬(株)においても本社第二工場が完成し、生産能力は9億錠から11億錠へと拡大した。その結果現時点ではグループ全体で43億錠/年の生産能力を有している。
2015年9月に同社は、日本ジェネリック(株)のつくば第二工場の建設を発表した。これは2018年3月までに年産100億錠の能力を有する新工場を建設するというもので、投資額は土地・建物及び機械設備第1期分の総計で約172億円が予定されている。これと同時並行で現つくば工場(N棟とS棟合計)の生産能力増強も行い、計画では、長生堂製薬(株)分も合わせた総生産能力が156億錠/年に達する計画となっている。
c)医療従事者派遣・紹介事業
同社は連結子会社の(株)メディカルリソースを通じて、医師、看護師、薬剤師等の医療従事者の派遣・紹介事業を行っている。この事業領域ではエス・エム・エス<2175>など有力企業も多く競争が激化しているが、同社は薬剤師の領域ではトップクラスの登録者数、派遣・紹介実績を有するというポジションにある。
2016年3月期第2四半期においても業容は順調に拡大しており、エントリー数は順調に増加している。また、求人数も着実に増加している。求人数は、恒常的な人手不足と同社自身の新規開拓が合わさって、右肩上がりを続けている。その結果、労働需給がタイトになって、派遣・紹介単価の上昇も見られるが、同社が人材確保に要する費用も増加傾向にある。また、登録者数の増加に伴い、登録者を管理する人員の増強の必要性も出てきているもようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(2)各事業セグメントの動向
a)調剤薬局事業
調剤薬局は、健康保険制度の中に組み込まれた保険薬局であり、報酬(収入)が健康保険制度で定められた収入算定の基礎となる“点数”で決められている。そのため、売上高を成長させる方策は、1店舗当たりの顧客数(顧客が持参する処方箋の処理枚数で表現されることが多い)の増加と処方箋1枚当たりの収入増加(処方箋単価と表現されることが多い)の2つが基本となる。両者の積が店舗当たり売上高になるということだ。各店舗の顧客数は外部環境が変わらなければそう大きくは変動しないので、実際には出店を重ねて企業としての総顧客数を増やしていくことになる。
日本調剤<3341>の調剤薬局事業もこの枠組みは変わらない。出店数では、2016年3月期第2四半期は、18店舗を新規出店し7店舗を閉鎖した。この結果、期末の調剤薬局店舗数は521店舗となり、半年前から11店舗増加した(ほかに物販専門店が1店舗という状況は従来と同じ)。店舗形態には門前型、モール型、面対応型と大きく3種類ある。今第2四半期においては、千葉県旭市において大型病院の医薬分業に対応して3店舗を出店したことが新規出店のトピックスとなった。
処方箋単価向上のために同社は、国が推進するジェネリック医薬品の使用拡大と、在宅医療対応の強化による調剤技術料の獲得を進めている。ジェネリック医薬品の処方割合が一定数を超えると「後発医薬品調剤体制加算」が得られ、在宅医療対応強化によって「基準調剤加算」が得られるためだ。これらの加算は、各店舗ごとに行われ、当該店舗で取り扱うすべての処方箋に対してなされるため、収益への貢献度は大きい。
同社の、2016年3月期第2四半期のジェネリック医薬品使用率(分母はジェネリック医薬品が存在する先発品とジェネリック医薬品の合計、数量ベース)は76.7%に達した。国はこの比率を2020年3月末までのなるべく早い時期に80%にするという目標を掲げている。同社自身は2016年3月の段階で国の目標よりも高い85%に引き上げることを目指している。
同社は2015年3月末の段階で510店舗を展開しているが、そのうち83.7%の店舗がジェネリック医薬品の調剤体制加算2(22点)を、10.0%が同加算1(18点)を獲得している。加算点獲得店舗の割合は同業他社に比べて最も高い。
同社は在宅医療対応も着実に進めており、2016年3月期第2四半期末(9月)の在宅医療実施店舗割合は94.6%に達した。これは調剤薬局521店舗の中で、直近の12ヶ月間で1回でも在宅医療対応の実績を有する店舗の割合を表す。
在宅医療対応によって得られる基準調剤加算は、様々な手続きや条件達成が必要であるため、ジェネリック医薬品調剤体制加算に比べると加算獲得のハードルは高い。それでも大手調剤薬局はどこも加算獲得店舗を増やしているが、同社はその中でも加算獲得店舗数の割合が加算1と加算2の合計割合が86.4%と最も高く、加算2獲得店の割合は21.4%と他を引き離している状況だ。
b)医薬品製造販売事業
同社は2005年に日本ジェネリック(株)を設立し、ジェネリック医薬品の製造販売事業に進出した。当初は他社からの導入品(仕入品)を扱っていたが、生産体制が整備された2008年3月期からは自社による承認・製造品目を拡大させてきている。2013年4月には長生堂製薬(株)を子会社化し、販売品目数が一気に増大した。2016年3月期第2四半期においては、6月に新製品19品目を発売する一方、グループ会社間の重複を整理した結果、期末の販売品目数は575品目となっている。
2016年3月期第2四半期において製造拠点の拡充策も発表された。日本ジェネリック(株)においては、従来はつくば工場N棟の1拠点だったものが、2015年3月期においてつくば工場S棟の完成とテバ製薬(株)からの春日部工場取得で3工場体制となり、生産能力も10億錠から32億錠へと拡大した。また、長生堂製薬(株)においても本社第二工場が完成し、生産能力は9億錠から11億錠へと拡大した。その結果現時点ではグループ全体で43億錠/年の生産能力を有している。
2015年9月に同社は、日本ジェネリック(株)のつくば第二工場の建設を発表した。これは2018年3月までに年産100億錠の能力を有する新工場を建設するというもので、投資額は土地・建物及び機械設備第1期分の総計で約172億円が予定されている。これと同時並行で現つくば工場(N棟とS棟合計)の生産能力増強も行い、計画では、長生堂製薬(株)分も合わせた総生産能力が156億錠/年に達する計画となっている。
c)医療従事者派遣・紹介事業
同社は連結子会社の(株)メディカルリソースを通じて、医師、看護師、薬剤師等の医療従事者の派遣・紹介事業を行っている。この事業領域ではエス・エム・エス<2175>など有力企業も多く競争が激化しているが、同社は薬剤師の領域ではトップクラスの登録者数、派遣・紹介実績を有するというポジションにある。
2016年3月期第2四半期においても業容は順調に拡大しており、エントリー数は順調に増加している。また、求人数も着実に増加している。求人数は、恒常的な人手不足と同社自身の新規開拓が合わさって、右肩上がりを続けている。その結果、労働需給がタイトになって、派遣・紹介単価の上昇も見られるが、同社が人材確保に要する費用も増加傾向にある。また、登録者数の増加に伴い、登録者を管理する人員の増強の必要性も出てきているもようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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