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パンチ工業 Research Memo(2):一気通貫の生産体制と顧客密着型の営業体制を構築

注目トピックス 日本株
■会社概要

(1)会社沿革

パンチ工業<6165>は1975年創業の金型用部品メーカーで、当初はプリント基板用穴あけピンの販売からスタートした。同社の事業が大きく成長する契機となったのは、1982年に世界で初めてプラスチック金型用部品、ハイス(高速度工具鋼)エジェクタピンの標準化と量産化に成功したことである。

当時、主要取引先であったエレクトロニクスメーカーでは、SCM3エジェクタピン(クロムモリブデン鋼)を使用していたが、精度や耐久性の向上を求める声が強く、こうしたニーズに応えるべく当時は商品化が困難と言われていた高硬度のハイス鋼によるエジェクタピンの開発に取り組んだ。同社では開発を進めるに当たって、金属の専門知識を持つ大学の研究機関に協力を仰ぐだけでなく、社員を大学の研究室に派遣し、金属についての知識や熱処理技術を学ばせ修得したほか、材料商社などの協力もあって従来のSCM3エジェクタピンよりも寸法精度を約2倍に高め、耐久性も飛躍的に向上したハイスエジェクタピンの開発に成功し、同社独自の規格で標準化し、量産化していった。

金型用部品業界において後発だった同社のシェアは、ハイスエジェクタピンの量産化によって一気に拡大し、また、1989年にはプラスチック金型用部品で蓄積してきた技術力や信頼性をベースにプレス金型用部品市場にも進出し、超精密・高耐久性といった要求度の高い顧客ニーズに応えながら市場を開拓してきた。このように、同社の成長力の源泉は、新たな技術を開発する強い意思や柔軟な発想力、行動力などにあると言える。

また、第2の成長の契機となったのは、1990年の中国進出になる。同社は国内での将来の人材確保難を予測し、また更なる生産コスト低減を図るために、中国での生産拠点を早期に構築してきた。当初は大連に子会社を設立し、日本から原材料を持込み、半製品にして日本に逆輸入することからスタートしたが、その後、中国のWTO加盟・市場開放・経済発展とともに、家電製品や自動車の生産が拡大していくなかで、現地での金型用部品需要が増大し、同社でも2001年に販売拠点を設立し、中国での販売を拡大していった。現在では中国での生産拠点は6ヶ所、販売拠点は32ヶ所まで拡大し、同社グループの売上比率では49%(2016年3月期第2四半期累計実績)と国内を上回るまでに成長している。

また、海外展開としては2010年にインドに販売拠点を設立したほか、2013年にはマレーシアの金型用部品メーカーであるPanther Precision Tools Sdn. Bhd.(現:マレーシアパンチ)をグループ会社化し、2015年12月にはベトナムに新たな生産拠点の設立を予定している。

なお、株式上場は2012年12月で、東京証券取引所市場第2部に上場し、2014年3月には市場第1部銘柄指定を果たした。

(2)事業内容

同社は金型用部品専業で製造から販売まで、標準製品から特注品まで手掛けていることを強みとしている。主にプラスチック製品の製造工程で用いられる射出成型用金型に組み込まれるエジェクタピンやスプルーブシュ等の金型用部品、プレス金型用のパンチ・ダイやダイセットガイド等の製造・販売を行っている。

生産拠点は国内4拠点、中国6拠点、東南アジア2拠点の合計12拠点(2015年12月に設立予定のベトナム工場を含む)となり、販売拠点は国内15拠点、中国32拠点、アジア他で6拠点の53拠点となっている。その他、欧米市場などでは販売代理店なども活用している。

国内での生産においては社内で一気通貫の生産体制を構築しているほか、約300の協力工場などをニーズに合わせながら活用している。外注品としては、ボルトやナットなど社内で生産する必要性がないものや、同社で対応できない一品モノなどがあり、一部生産工程の外注を行うケースもある。中国においてもビジネスモデルは国内と同じである。

2016年3月期第2四半期累計の顧客業種別売上構成比で見ると自動車向けが47%、電子部品・半導体が18%、家電・精密機器が13%となっており、これら3業種で全体の78%を占めることから、自動車、エレクトロニクス業界の生産動向と相関性が高いと言える。また、地域別売上構成比では日本が42%、中国が49%と両国で全体の約90%を占める。中国では5割弱が自動車業界向けとなっており、国内よりも自動車の構成比が高いことが特徴となっている。

また、同社の製品はカタログ品と呼ばれる標準製品と顧客のニーズに合わせた特注品があり、売上比率は半々となっている。これらは創業以来培ってきた高い技術力を基盤に、一気通貫の生産体制と顧客密着型の営業体制を構築してきたことで実現しており、同社の強みでもある。金型用部品の新規顧客開拓はカタログ品の取引からスタートするケースが一般的で、カタログ品で信頼を高めてから、特注品の受注を獲得していく流れとなっている。現在、同社の顧客数は国内で約6,000社、中国で約8,000社となっている。

なお、為替変動が利益に与える影響は現段階ではほとんどない。同社が輸出入取引を円建てで行っていること、海外子会社の業績については円換算した際の為替レート変動分の影響が出るが、中国子会社から日本向けに一定量、輸入を行っており、利益面では換算分の大半が相殺されるためである。ただ、今後、海外事業がさらに拡大していけば、円安はプラスに寄与していくものと予想される。また、中国子会社には金利の安いUSドル建ローンがあり、人民元安ドル高の局面では、営業外費用として評価損失が発生する可能性がある。なお、海外子会社(インド除く)の決算は12月決算となっており、同社の連結業績には1四半期前の業績が組み込まれている。例えば、2016年3月期第2四半期(2015年7月−9月期)の連結業績では、海外子会社(インド除く)の4月−6月の業績が反映される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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