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ムサシ Research Memo(5):マイナンバー対応でも期待されるメディアコンバート事業

注目トピックス 日本株
■中核事業の動向

(2)メディアコンバート事業

1)概況
メディアコンバート事業は紙文書を電子データ化してハードディスクなどの記録媒体に保存するものだ。「文書デジタル化事業」とも言われる。ムサシ<7521>は1950年代から紙文書をマイクロフィルム化する事業を手掛けており、この領域では長い経験を有している。
同社のメディアコンバート事業は、「情報・印刷・産業システム機材セグメント」の中に含まれている。同セグメントは大きく「情報・産業システム機材」と「印刷システム機材」の2つの商品グループに大別される。

メディアコンバート事業が成長事業として期待がかかる背景には、産業界における実体的な必要性に加えて、各種法令による後押しがある。産業界からの必要性というのは言うまでもなく、保管コストの削減だ。多少古い話ではあるが、日本経済団体連合会(経団連)は2004年3月1日付報告書「税務書類の保存に関する報告書」の中で、その保管コストを3,000億円と試算している。税務関係以外の書類も膨大な量のため、文書保管コストの総額は兆円単位に上ることは想像に難くない。

一方、法令による後押しとしては、2005年の「e文書法」が重要文書の電子化を促進する最も直接的な法令であるが、それ以外の個人情報保護法などの法令も、検索性のニーズやデータの保管・運用におけるニーズ等、間接的に従来の紙文書から電子データへの変換を後押しする内容となっている。また、2016年から運用が始まるマイナンバー制度も、文書の電子データ化をさらに後押しするものとみられる。

2)収益動向
メディアコンバート事業については、売上高は切り出して開示されている。過去からの動きを見ると、2010年3月期に過去最高の売上高を記録し、2011年3月期も高水準の売上となったものの、その後東日本大震災の影響などで特に公的部門での需要が縮小し、右肩下がりが続いた。その後、民需を中心に需要回復の動きがみられ、2015年3月期に底打ちしたのち、2016年3月期も前期に引き続いて増収が予想されているという状況にある。

利益についてはメディアコンバート事業だけに絞った数値は開示されていない。メディアコンバート事業が所属する「情報・印刷・産業システム機材セグメント」のセグメント利益の公表にとどまっている。これはメディアコンバート事業以外の情報・産業システム機材や印刷システム機材の利益は比較的安定しているので、セグメント利益の変動はメディアコンバート事業からもたらされるという考え方による。

3)最近の動向と中期成長シナリオ
まず市場環境の変化として、民間分野での需要回復の明確化ということがある。前述のような法令面での後押しもあり、検索性の向上や保管コスト削減のために文書のデジタル化ニーズは、かつてよりも確実に強まっている。また、官公需分野でも、大震災後の復興が一段落しつつあることから、再び文書デジタル化への予算が付きつつあるようだ。足元は断然民需が強く、同社の受注額における民需と官需の比率は6:4と民需が逆転した状況にある。また、大口案件が増加基調にある点も、潮目が変わってきたことを示唆している。

もう1つの動きとしてマイナンバー対応が挙げられる。マイナンバー制度の本格的な運用開始は来年度からになると思われるが、マイナンバー関連事務(データ収集、保管・運用、廃棄)の煩雑さは各企業の大きな課題となっている。同社はそこでアウトソーシング需要の取り込みを大きなビジネスチャンスとして狙っている。同社が過去のメディアコンバート事業で培い、実証してきた作業の正確性や機密保持性などを材料として、売り込みをかける方針だ。

同社の社内体制として、採算性重視の姿勢を明確化した点が挙げられる。同社は2015年10月1日付で「ムサシグループ・アウトソーシングマネジメント委員会」を設置した。これは大口案件について採算性の観点から受託の可否を精査するための組織だ。事業環境が改善してきたことと、同社自身がこの事業を持続性のある高収益事業に育成する姿勢を明確にしたこともあって、採算性重視を徹底する組織がつくられた。

前述のように、今後の同社の大きなテーマは「業績の安定化」となってこよう。メディアコンバート事業は選挙システム機材と並ぶ収益の柱に成長し、選挙による収益変動を緩和・吸収する存在になることが期待されている。採算性重視の社内委員会設置は、そうした同社の決意を象徴するものとして、弊社では今後の推移に注目していきたいと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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