イーストン Research Memo(3):成長戦略3分野で各取り組みを開始する
[16/01/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■2017/3期〜2019/3期次期中期経営計画の考察
(3)ルネサスイーストン<9995>の成長戦略
仕入先・製品ごと、あるいは販路ごとの成長シナリオについては以下のように想定している。
a)ルネサスエレクトロニクス製品
ルネサスエレ社製品は同社の主力取扱い製品であり、ルネサスエレ社の成長戦略は同社にも大きな影響を及ぼす。そのルネサスエレ社は成長戦略における強化分野としてスマートカー、インダストリー4.0、IoTの3つを高成長分野と位置付け、製品ラインアップの充実や提案営業強化を図っていく方針を明らかにしている。
スマートカーは安全運転支援や車載情報拡充などでイメージしやすいであろう。インダストリー4.0とは「第4の産業革命」と呼ばれる工業のデジタル化のことだ。生産工程のデジタル化、自動化、バーチャル化を現在よりも大幅に高めることで劇的なコストダウンが期待されている。ドイツが先行しており、日本ではこれから認知が進もうという段階だ。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、コンピューターや通信機器に限らず、世の中に存在する様々なものに通信機能が与えられてインターネットに接続し、相互通信や遠隔操作が行われるような状況を言う。
ルネサスエレ社の成長戦略と軌を一にして、同社もまた、これら3分野でどのように取り組んでいくかを明示している。スマートカーでは具体的な動きとして茨城デザインセンター(IDC)を設立し、同社のソフト開発部隊を送り込んでソフト開発支援を行っている。インダストリー4.0に関しては機能安全についてのコンサルティングを開始した。またIoTについては専任担当者による技術支援を行う体制を構築した。
これらに加えて「Embedded Technology 2015」に出展して自社の技術力のアピールやソリューションの提案などに努めている。今回のテーマは「スマート・センシング・ソリューション」ということで、各種センサーと通信を組み合わせたソリューションの提案が展示内容の中核となっている。
重要なことは、これら新市場からの収益貢献の本格化のタイミングは、次期中期経営計画の後になる見通しということだ。特にスマートカーは自動車業界の製品開発サイクルが3〜5年と長く、現時点でスペックインして開発に携わっているモデルであっても市販化されるのは3、4年後になってしまう。インダストリー4.0やIoTは動き出せば足は速いと思われるが、そもそも、議論の俎上に上ってから日が浅い状況だ。こうした現実を踏まえて、同社も次期中期経営計画においてはルネサスエレ社製品の売上高計画をあまり強いものとはしてこないと弊社は考えている。しかし、潜在市場の大きさは広く認識されており、また自動車・産業という、ルネサスエレ社の得意分野でもあるため、中長期的には大きな期待を寄せている。
b)新規ビジネス(CSB製品)
同社はルネサスエレ社と日立グループ以外の取扱い製品を、新規ビジネス、あるいはCSB(Customer Satisfaction Business)と称して拡大を図ってきた。現行中期経営計画では年商20,000百万円の達成を目指したが、2016年3月期の見通しは14,000百万円にとどまっている。
同社にとって新規ビジネスの拡大は避けては通れない大きなテーマであり、次期中計では再び売上高20,000百万円の目標達成にチャレンジするものとみられる。同社では、更なる新規商材開拓とソリューション提案力の強化を図る一環として、拡販ツール、評価用ボードの専任部署を設置した。ルネサスエレ社製品が自動車や産業向けが主体であるのに対して、新規ビジネスで取り扱う商材は自動車や産業分野ばかりではなく通信機やアミューズメントなど民生品向けパーツも多い。したがって新規ビジネスの拡大は最終需要先の多様化につながり、経営の安定化にも寄与すると弊社ではみている。また、既存のルネサスエレ社マイコンや同社のソフト・LSI開発と言ったものとのシナジー効果を狙った拡大に期待が持てる。
c)海外ビジネス
同社の海外売上高の相手先はほぼすべてが日系企業である。同社は顧客の海外進出に合わせた海外展開をしてきたが、その結果と思われる。現行中期経営計画において同社は海外ビジネスの売上高目標に20,000百万円を掲げてきたが、2015年3月期に20,300百万円を記録して目標を達成した。2016年3月期は20,400百万円を目標においている。
同社は、中長期的には非日系向け売上高を拡大していきたいという意向を有しているが、得意とする自動車向け半導体はモデルチェンジを機に納入がスタートすることが多いが、その前の準備段階が数年前から始まるという流れとなっている。そのため、実体的な規模に達するまでには時間を要するものと弊社ではみている。次期中期経営計画では20,000百万円を起点に10%〜20%伸ばしてくると想定される。
d)特約店ビジネス
特約店ビジネスとは同社の販路に注目した分類であり、同社の傘下の14特約店を通じた売上高のことである。特約店売上高を切り出して目標を設定する意味合いは、同社の限られた人材を補うべく、特約店の人材を有効活用して販売を伸ばすことを把握するためとみられる。同社は現行中計で20,000百万円の売上目標を掲げたが、2016年3月期予想は17,200百万円となっている。
次期中期経営計画での目標設定としては現中期経営計画の目標であった20,000百万円に再チャレンジするというのが基本になってくると弊社では考えている。ただし、特約店ビジネスで取り扱う商材はルネサスエレ社製品が主体であるため、同社のルネサスエレ製品売上高のトレンドと、基本的に同じトレンドになると考えられる。前述のように、同社及びルネサスエレ社が真の成長ステージに入ってくるのは、次期中期経営計画の後になってくるとみられるが、一方同社が積極的に進めている新規ビジネス関連で特約店とどのように連携し、拡大していくのか注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(3)ルネサスイーストン<9995>の成長戦略
仕入先・製品ごと、あるいは販路ごとの成長シナリオについては以下のように想定している。
a)ルネサスエレクトロニクス製品
ルネサスエレ社製品は同社の主力取扱い製品であり、ルネサスエレ社の成長戦略は同社にも大きな影響を及ぼす。そのルネサスエレ社は成長戦略における強化分野としてスマートカー、インダストリー4.0、IoTの3つを高成長分野と位置付け、製品ラインアップの充実や提案営業強化を図っていく方針を明らかにしている。
スマートカーは安全運転支援や車載情報拡充などでイメージしやすいであろう。インダストリー4.0とは「第4の産業革命」と呼ばれる工業のデジタル化のことだ。生産工程のデジタル化、自動化、バーチャル化を現在よりも大幅に高めることで劇的なコストダウンが期待されている。ドイツが先行しており、日本ではこれから認知が進もうという段階だ。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、コンピューターや通信機器に限らず、世の中に存在する様々なものに通信機能が与えられてインターネットに接続し、相互通信や遠隔操作が行われるような状況を言う。
ルネサスエレ社の成長戦略と軌を一にして、同社もまた、これら3分野でどのように取り組んでいくかを明示している。スマートカーでは具体的な動きとして茨城デザインセンター(IDC)を設立し、同社のソフト開発部隊を送り込んでソフト開発支援を行っている。インダストリー4.0に関しては機能安全についてのコンサルティングを開始した。またIoTについては専任担当者による技術支援を行う体制を構築した。
これらに加えて「Embedded Technology 2015」に出展して自社の技術力のアピールやソリューションの提案などに努めている。今回のテーマは「スマート・センシング・ソリューション」ということで、各種センサーと通信を組み合わせたソリューションの提案が展示内容の中核となっている。
重要なことは、これら新市場からの収益貢献の本格化のタイミングは、次期中期経営計画の後になる見通しということだ。特にスマートカーは自動車業界の製品開発サイクルが3〜5年と長く、現時点でスペックインして開発に携わっているモデルであっても市販化されるのは3、4年後になってしまう。インダストリー4.0やIoTは動き出せば足は速いと思われるが、そもそも、議論の俎上に上ってから日が浅い状況だ。こうした現実を踏まえて、同社も次期中期経営計画においてはルネサスエレ社製品の売上高計画をあまり強いものとはしてこないと弊社は考えている。しかし、潜在市場の大きさは広く認識されており、また自動車・産業という、ルネサスエレ社の得意分野でもあるため、中長期的には大きな期待を寄せている。
b)新規ビジネス(CSB製品)
同社はルネサスエレ社と日立グループ以外の取扱い製品を、新規ビジネス、あるいはCSB(Customer Satisfaction Business)と称して拡大を図ってきた。現行中期経営計画では年商20,000百万円の達成を目指したが、2016年3月期の見通しは14,000百万円にとどまっている。
同社にとって新規ビジネスの拡大は避けては通れない大きなテーマであり、次期中計では再び売上高20,000百万円の目標達成にチャレンジするものとみられる。同社では、更なる新規商材開拓とソリューション提案力の強化を図る一環として、拡販ツール、評価用ボードの専任部署を設置した。ルネサスエレ社製品が自動車や産業向けが主体であるのに対して、新規ビジネスで取り扱う商材は自動車や産業分野ばかりではなく通信機やアミューズメントなど民生品向けパーツも多い。したがって新規ビジネスの拡大は最終需要先の多様化につながり、経営の安定化にも寄与すると弊社ではみている。また、既存のルネサスエレ社マイコンや同社のソフト・LSI開発と言ったものとのシナジー効果を狙った拡大に期待が持てる。
c)海外ビジネス
同社の海外売上高の相手先はほぼすべてが日系企業である。同社は顧客の海外進出に合わせた海外展開をしてきたが、その結果と思われる。現行中期経営計画において同社は海外ビジネスの売上高目標に20,000百万円を掲げてきたが、2015年3月期に20,300百万円を記録して目標を達成した。2016年3月期は20,400百万円を目標においている。
同社は、中長期的には非日系向け売上高を拡大していきたいという意向を有しているが、得意とする自動車向け半導体はモデルチェンジを機に納入がスタートすることが多いが、その前の準備段階が数年前から始まるという流れとなっている。そのため、実体的な規模に達するまでには時間を要するものと弊社ではみている。次期中期経営計画では20,000百万円を起点に10%〜20%伸ばしてくると想定される。
d)特約店ビジネス
特約店ビジネスとは同社の販路に注目した分類であり、同社の傘下の14特約店を通じた売上高のことである。特約店売上高を切り出して目標を設定する意味合いは、同社の限られた人材を補うべく、特約店の人材を有効活用して販売を伸ばすことを把握するためとみられる。同社は現行中計で20,000百万円の売上目標を掲げたが、2016年3月期予想は17,200百万円となっている。
次期中期経営計画での目標設定としては現中期経営計画の目標であった20,000百万円に再チャレンジするというのが基本になってくると弊社では考えている。ただし、特約店ビジネスで取り扱う商材はルネサスエレ社製品が主体であるため、同社のルネサスエレ製品売上高のトレンドと、基本的に同じトレンドになると考えられる。前述のように、同社及びルネサスエレ社が真の成長ステージに入ってくるのは、次期中期経営計画の後になってくるとみられるが、一方同社が積極的に進めている新規ビジネス関連で特約店とどのように連携し、拡大していくのか注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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