ベネフィット・ワン Research Memo(2):企業ビジョンは、「サービスの流通創造」への挑戦
[16/01/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
(1)会社沿革
1996年3月に、「サービスの流通創造」を目的として、パソナグループ<2168>の社内ベンチャー制度の第1号として設立された。人々が「良いものをより安くより便利に」利用できるためのインフラを創ることを目指している。
設立当初から大きな市場において日本発のビジネスモデルによる世界的な企業を目指し、インターネットを利用するユーザー課金型ストックビジネスモデルを展開することを企図していた。当時は、インフラ基盤となるインターネットの能力が、商業ベースのオペレーションには不十分であった。そのため、初期は紙媒体やコールセンターなどを利用する形で事業を発展させてきた。また、いきなり個人向け会員サービスを展開するには時期尚早であったことから、大企業向けの福利厚生代行サービスから事業を開始した。飛躍のきっかけとなったのは、1998年の金融危機だった。銀行が所有する保養所を閉鎖したことから、大手企業もそれに追随した。その受け皿として、ベネフィット・ワン<2412>が選ばれた。同社は、東証1部上場企業及び公務団体向けの福利厚生アウトソーシングサービスでマーケットシェアが5割近いトップシェアを獲得している。
20年間の社歴は、3つのステージに分かれる。1996年の設立から2005年までの第1ステージでは、コスト削減とサービスレベルの向上を目的とする外注化を追い風に、企業、官公庁に対して福利厚生のアウトソーシングサービスを中核に会員規模を拡大するスケールメリットを追求した。同ステージでは、有料会員を獲得する手段として福利厚生アウトソーシング事業に専念した。2004年のJASDAQ上場により、社会的信用も高め、東証1部上場企業や公務団体に対する営業力を強化した。
2006年に、東証2部に上場し、事業の多角化を推進する第2ステージに入った。福利厚生アウトソーシングサービスで築いたサービスインフラを活用し、多角化と海外事業を推進した。新たに加えたパーソナル事業では、取引先と協業で個人向けサービスを展開している。インセンティブ事業では報奨金などをポイント化して管理・運営する。ヘルスケア事業では健診サービス、特定保健指導、データヘルス計画支援、メンタルチェックなどのヘルスケアに関する新サービスを提供する。BTM(Business Travel Management)事業は、経費削減に加え、コンプライアンス強化の経営課題を解決する出張支援サービスである。その他事業として、CRM事業、インバウンド事業、コストダウン事業なども展開している。新規事業を開始するに当たって、同社は各分野で事業の業務知見を有する企業からの事業譲受やM&Aも活用することでスピーディーな事業展開を推進してきた。
○グループ会社
国内の連結子会社・関連会社は3社。100%子会社の(株)ベネフィットワンソリューションズは、Webシステム構築・携帯・固定電話・専用線等の通信回線管理サービス、請求管理及び請求集計処理代行サービス業務、インターネットインフラ支援サービスを行う。(株)ベネフィットワン・ヘルスケアは、健診サービス事業、特定保健指導事業、前期高齢者訪問指導事業、メンタルヘルスケア事業、富裕層向け健康管理事業、ポイントサービス事業、健康ポータルサイト運営事業、アプリケーション開発事業を行っている。前身は、1990年に設立された(株)保健教育センターで、同社が2012年に株式を取得して完全子会社化した。(株)ベネフィットワン・ペイロールは、パソナグループが60%、同社が40%出資して、2015年8月に設立された。給与計算、勤怠管理、人事データ管理に関わる導入コンサルティング、システム管理を行う。
海外での事業展開は、2012年に中国と米国に独資の子会社を設立したことから始まった。同社は、日本発のビジネスモデルのグローバル展開を進めている。主に、インセンティブ事業を行っている。2013年には、伊藤忠商事<8001>とアジア地域の事業を統括する合弁会社をシンガポールに設けた。同子会社を介して、2014年にタイ、台湾、インドネシアにも進出した。また、2015年1月には、欧州初となる100%子会社をドイツに設立した。海外事業は、2015年3月期から連結決算に組み入れられ始めた。ストック型のビジネスであるため、一度損益分岐を越えれば安定した収益貢献が見込まれるが、現在は先行投資期にある。同社では、2016年3月期以降、順次収益化を見込んでいる。初期投資が少ないインセンティブ事業から始め、将来的には日本国内で展開している福利厚生事業やヘルスケア事業等も展開していく構想だ。
2015年3月期の営業利益3,353百万円は、BtoBが87.6%、BtoCが18.7%、海外その他が▲6.3%に分かれる。BtoBに分類される主な事業の利益構成比は、福利厚生事業が75.5%、インセンティブ事業が6.5%、ヘルスケア事業が2.9%、。一方、BtoCでは、パーソナル事業が17.8%となった。海外事業は、同期より連結決算に売上高が計上された。
(2)会社概要
同社は、ユーザー課金型ストックビジネスモデルであることから、会員数が積み上がるにつれて業績も拡大する。累計会員数は、2003年に100万人を突破。その後、多角化の効果もあり順調に会員数を拡大してきた。2007年には、200万人、2009年に400万人に達し、2016年4月には874万人が見込まれている。総会員数874万人(2012年4月時点575万人)の内訳は、福利厚生会員が442万人(同284万人)、CRM会員が181万人(同239万人)、パーソナル会員が251万人(同52万人)となる。パーソナル会員が爆発的に増加しており、来年度には総会員数1,000万人達成も視野に入ってきた。
業績は拡大の一途をたどり、2016年3月期は売上高28,900百万円(2012年3月期14,959百万円)、経常利益4,350百万円(同2,512百万円)が予想されている。
(3)事業内容
○事業別売上高と営業利益の推移
大企業の福利厚生をカバーするサービスの提供に心掛けてきたことから、事業領域を消費に関連する極めて広範囲な分野に拡大してきた。同社の事業は、BtoBが福利厚生事業、インセンティブ事業、ヘルスケア事業、BTM事業、コストダウン事業、ペイロール事業により構成されている。BtoCでは、パーソナル事業、CRM事業、インバウンド事業がある。
多角化が、同社の全体の業容拡大をけん引している。2016年3月期は福利厚生事業売上で8.5%の成長を見込んでいるが、パーソナル事業やインセンティブ事業、ヘルスケア事業などが軒並み高い成長を見込んでおり、同社全体の成長率を押し上げている。
事業別営業利益は、2015年3月期までの3ヵ年のCAGRが10.4%と2ケタ成長を実現した。福利厚生事業の営業利益に占める割合は、2012年3月期の90%超から75.5%に低下し、2016年3月期にはさらに64.4%へ下がる見込みだ。
福利厚生事業の売上高営業利益率は20%程度で安定的に推移している。新規事業は既存の経営リソースを活用した形態をとっているため、比較的短期間に収益化し、平均売上高営業利益率は15%超で推移している。ヘルスケア事業も急速に成長しているものの、まだ事業規模の小さいインバウンド事業と海外事業の収益性が低い。一方、会員数が急増しているBtoCのパーソナル事業は、収益性が福利厚生事業よりも高くなっている。
○会員制インターネットモール
同社は、会員制インターネットモールで、ユーザー課金型サービスマッチングによる「サービスの流通創造」を進めている。特長は、定額課金で、豊富なメニューを、割安価格で、何度でも使い放題であることで、ユーザー課金型では圧倒的な会員数を抱えている。サービス提携事業者からは手数料や広告料を徴収しないため、ユーザー目線でサービスをそろえ、サービスの評価をすることができる。会員は、企業などの福利厚生会員から始まり、CRM会員やパーソナル会員と顧客ベースが拡大してきた。
リアルな店舗を必要とするモノの流通と異なり、サービスのインターネットモールに物理的な制約はなくサービスを追加することができる。ユーザーニーズに対応するための、コンサルやコンシェルジェサービスも提供する。現在利用できるコンテンツ数は、90万を超える。企業の自社運営の場合、保養施設など宿泊施設の選択肢が極めて限定されてしまうが、同社の会員は全国ベースで様々形態や利用料の施設から選べる。
サービスコンテンツは、育児・介護、スポーツ、リゾート&トラベル、ビジネス、リラクゼーション、グルメ、ライフサポート、レジャー&エンターテインメント、スクール&カルチャー、ファイナンス、健康を網羅していることから、サービスの利用自由度が高い。予約は、コールセンターだけでなく、会員個人が自宅のパソコンやスマホ等から気軽にできる。
お得な会員価格で利用できるのは、大きな会員数を背景とするスケールメリットと、サービス提供者の繁閑の差を平準化するための価格設定による。多くの宿泊施設やレストランにとって、平日の閑散期の売上増加が長年の課題になっている。低い稼働率を解消するために、クローズドの会員価格として50%オフ等の割引を提供することで、同社会員を誘引し課題解決の成果を上げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(1)会社沿革
1996年3月に、「サービスの流通創造」を目的として、パソナグループ<2168>の社内ベンチャー制度の第1号として設立された。人々が「良いものをより安くより便利に」利用できるためのインフラを創ることを目指している。
設立当初から大きな市場において日本発のビジネスモデルによる世界的な企業を目指し、インターネットを利用するユーザー課金型ストックビジネスモデルを展開することを企図していた。当時は、インフラ基盤となるインターネットの能力が、商業ベースのオペレーションには不十分であった。そのため、初期は紙媒体やコールセンターなどを利用する形で事業を発展させてきた。また、いきなり個人向け会員サービスを展開するには時期尚早であったことから、大企業向けの福利厚生代行サービスから事業を開始した。飛躍のきっかけとなったのは、1998年の金融危機だった。銀行が所有する保養所を閉鎖したことから、大手企業もそれに追随した。その受け皿として、ベネフィット・ワン<2412>が選ばれた。同社は、東証1部上場企業及び公務団体向けの福利厚生アウトソーシングサービスでマーケットシェアが5割近いトップシェアを獲得している。
20年間の社歴は、3つのステージに分かれる。1996年の設立から2005年までの第1ステージでは、コスト削減とサービスレベルの向上を目的とする外注化を追い風に、企業、官公庁に対して福利厚生のアウトソーシングサービスを中核に会員規模を拡大するスケールメリットを追求した。同ステージでは、有料会員を獲得する手段として福利厚生アウトソーシング事業に専念した。2004年のJASDAQ上場により、社会的信用も高め、東証1部上場企業や公務団体に対する営業力を強化した。
2006年に、東証2部に上場し、事業の多角化を推進する第2ステージに入った。福利厚生アウトソーシングサービスで築いたサービスインフラを活用し、多角化と海外事業を推進した。新たに加えたパーソナル事業では、取引先と協業で個人向けサービスを展開している。インセンティブ事業では報奨金などをポイント化して管理・運営する。ヘルスケア事業では健診サービス、特定保健指導、データヘルス計画支援、メンタルチェックなどのヘルスケアに関する新サービスを提供する。BTM(Business Travel Management)事業は、経費削減に加え、コンプライアンス強化の経営課題を解決する出張支援サービスである。その他事業として、CRM事業、インバウンド事業、コストダウン事業なども展開している。新規事業を開始するに当たって、同社は各分野で事業の業務知見を有する企業からの事業譲受やM&Aも活用することでスピーディーな事業展開を推進してきた。
○グループ会社
国内の連結子会社・関連会社は3社。100%子会社の(株)ベネフィットワンソリューションズは、Webシステム構築・携帯・固定電話・専用線等の通信回線管理サービス、請求管理及び請求集計処理代行サービス業務、インターネットインフラ支援サービスを行う。(株)ベネフィットワン・ヘルスケアは、健診サービス事業、特定保健指導事業、前期高齢者訪問指導事業、メンタルヘルスケア事業、富裕層向け健康管理事業、ポイントサービス事業、健康ポータルサイト運営事業、アプリケーション開発事業を行っている。前身は、1990年に設立された(株)保健教育センターで、同社が2012年に株式を取得して完全子会社化した。(株)ベネフィットワン・ペイロールは、パソナグループが60%、同社が40%出資して、2015年8月に設立された。給与計算、勤怠管理、人事データ管理に関わる導入コンサルティング、システム管理を行う。
海外での事業展開は、2012年に中国と米国に独資の子会社を設立したことから始まった。同社は、日本発のビジネスモデルのグローバル展開を進めている。主に、インセンティブ事業を行っている。2013年には、伊藤忠商事<8001>とアジア地域の事業を統括する合弁会社をシンガポールに設けた。同子会社を介して、2014年にタイ、台湾、インドネシアにも進出した。また、2015年1月には、欧州初となる100%子会社をドイツに設立した。海外事業は、2015年3月期から連結決算に組み入れられ始めた。ストック型のビジネスであるため、一度損益分岐を越えれば安定した収益貢献が見込まれるが、現在は先行投資期にある。同社では、2016年3月期以降、順次収益化を見込んでいる。初期投資が少ないインセンティブ事業から始め、将来的には日本国内で展開している福利厚生事業やヘルスケア事業等も展開していく構想だ。
2015年3月期の営業利益3,353百万円は、BtoBが87.6%、BtoCが18.7%、海外その他が▲6.3%に分かれる。BtoBに分類される主な事業の利益構成比は、福利厚生事業が75.5%、インセンティブ事業が6.5%、ヘルスケア事業が2.9%、。一方、BtoCでは、パーソナル事業が17.8%となった。海外事業は、同期より連結決算に売上高が計上された。
(2)会社概要
同社は、ユーザー課金型ストックビジネスモデルであることから、会員数が積み上がるにつれて業績も拡大する。累計会員数は、2003年に100万人を突破。その後、多角化の効果もあり順調に会員数を拡大してきた。2007年には、200万人、2009年に400万人に達し、2016年4月には874万人が見込まれている。総会員数874万人(2012年4月時点575万人)の内訳は、福利厚生会員が442万人(同284万人)、CRM会員が181万人(同239万人)、パーソナル会員が251万人(同52万人)となる。パーソナル会員が爆発的に増加しており、来年度には総会員数1,000万人達成も視野に入ってきた。
業績は拡大の一途をたどり、2016年3月期は売上高28,900百万円(2012年3月期14,959百万円)、経常利益4,350百万円(同2,512百万円)が予想されている。
(3)事業内容
○事業別売上高と営業利益の推移
大企業の福利厚生をカバーするサービスの提供に心掛けてきたことから、事業領域を消費に関連する極めて広範囲な分野に拡大してきた。同社の事業は、BtoBが福利厚生事業、インセンティブ事業、ヘルスケア事業、BTM事業、コストダウン事業、ペイロール事業により構成されている。BtoCでは、パーソナル事業、CRM事業、インバウンド事業がある。
多角化が、同社の全体の業容拡大をけん引している。2016年3月期は福利厚生事業売上で8.5%の成長を見込んでいるが、パーソナル事業やインセンティブ事業、ヘルスケア事業などが軒並み高い成長を見込んでおり、同社全体の成長率を押し上げている。
事業別営業利益は、2015年3月期までの3ヵ年のCAGRが10.4%と2ケタ成長を実現した。福利厚生事業の営業利益に占める割合は、2012年3月期の90%超から75.5%に低下し、2016年3月期にはさらに64.4%へ下がる見込みだ。
福利厚生事業の売上高営業利益率は20%程度で安定的に推移している。新規事業は既存の経営リソースを活用した形態をとっているため、比較的短期間に収益化し、平均売上高営業利益率は15%超で推移している。ヘルスケア事業も急速に成長しているものの、まだ事業規模の小さいインバウンド事業と海外事業の収益性が低い。一方、会員数が急増しているBtoCのパーソナル事業は、収益性が福利厚生事業よりも高くなっている。
○会員制インターネットモール
同社は、会員制インターネットモールで、ユーザー課金型サービスマッチングによる「サービスの流通創造」を進めている。特長は、定額課金で、豊富なメニューを、割安価格で、何度でも使い放題であることで、ユーザー課金型では圧倒的な会員数を抱えている。サービス提携事業者からは手数料や広告料を徴収しないため、ユーザー目線でサービスをそろえ、サービスの評価をすることができる。会員は、企業などの福利厚生会員から始まり、CRM会員やパーソナル会員と顧客ベースが拡大してきた。
リアルな店舗を必要とするモノの流通と異なり、サービスのインターネットモールに物理的な制約はなくサービスを追加することができる。ユーザーニーズに対応するための、コンサルやコンシェルジェサービスも提供する。現在利用できるコンテンツ数は、90万を超える。企業の自社運営の場合、保養施設など宿泊施設の選択肢が極めて限定されてしまうが、同社の会員は全国ベースで様々形態や利用料の施設から選べる。
サービスコンテンツは、育児・介護、スポーツ、リゾート&トラベル、ビジネス、リラクゼーション、グルメ、ライフサポート、レジャー&エンターテインメント、スクール&カルチャー、ファイナンス、健康を網羅していることから、サービスの利用自由度が高い。予約は、コールセンターだけでなく、会員個人が自宅のパソコンやスマホ等から気軽にできる。
お得な会員価格で利用できるのは、大きな会員数を背景とするスケールメリットと、サービス提供者の繁閑の差を平準化するための価格設定による。多くの宿泊施設やレストランにとって、平日の閑散期の売上増加が長年の課題になっている。低い稼働率を解消するために、クローズドの会員価格として50%オフ等の割引を提供することで、同社会員を誘引し課題解決の成果を上げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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