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アキテクツSJ Research Memo(11):「間接関与」だけではなく「主体的直接関与」により持続的成長を目指す

注目トピックス 日本株
■経営戦略

アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>の従来型のワークフローでは、加盟建設会社が開催するイベント会場で建築家がプレゼンテーションなどを行い、来訪者からアカデミー会員を募集する。会員は、加盟建設会社の設けたスタジオで打ち合わせをし、建築家と設計契約を締結してから工事請負契約に進む。同社のスーパーバイザー(ASJ SV)は、イベント、プランニングコース、設計契約、工事請負の各ステージにおいて、スタジオや建築家を間接的に支援する。当期のように、公共工事の需要増加により加盟スタジオが経営資源を振り向け、ASJ事業の優先順位が低下した場合、会員のフォローが不十分になり、プランニングコースや設計契約、工事請負契約へ進展する歩留まり(イールド)が低下する。また、会員に対するスタジオの営業の積極的な働きかけがないと、プランニングコースから設計契約までの期間が長期化してしまうなどの危険に直面した。

そこで同社は、従来の「間接関与」に加え、「主体的直接関与」の仕組みを確立するアクションをとった。同社は、本部一括仕入れと積算ソフトウェア「COSNAVI template」を活用し、『建築家が設計する注文住宅』というコンセプトはそのままに、従来よりも価格競争力を高め、見積もり作業を迅速化するシステムを構築している。主体的直接関与においては、Web会員など本部が獲得した会員向けに、同社の営業員が「ASJ YOKOHAMA CELL」など同社の拠点において、大型モニターを見ながら「COSNAVI」を利用して顧客との打ち合わせをする。「COSNAVI」は、モニター上で建材や住設機器などの写真を見ながら選ぶと即座に見積もりに反映されるので、打ち合わせの早期の段階で予算内に具現化できるイメージを提示することができ、従来のような、打ち合わせ後半に発生するコストクラッシュを回避できる。また、2人の建築家からの提案方式である「プランニングコースDUAL」を採用することで、顧客の選択肢を広げるとともに、比較検討する作業を通して顧客の納得性や満足度を高め、契約率を高める狙いだ。

同社の主体的直接関与は、2つの効果を狙う。まず、同社の営業が、一括仕入れや「COSNAVI」を活用することにより、顧客との打ち合わせの迅速化と成約率の向上など営業上の有用性を立証し、加盟スタジオのモデルとなること。加盟スタジオの業務におけるASJ事業の優先順位を上げることでもある。もう一つは、主体的直接関与により持続的成長をより確実なものとすることである。

○契約工務店に対する2つの制度
同社は、加盟建設会社・工務店に対し、従来からの「ASJスタジオ運営契約」とは別に、「ASJ登録工務店契約」という制度を設けた。建設会社・工務店は一般に施工能力に優れるが、どちらかというと営業が得意ではない。同社がWeb会員等を紹介する「ASJ登録工務店契約」においては、登録工務店はイベントを開催するなどの営業活動は不要で、スタジオを設ける必要もない。これは自前のスタジオや営業員を抱えるキャパシティのない工務店に向いている。この場合、従来の「ASJスタジオ運営契約」に従って工務店が負担する契約金300万円の支払いも不要になる。ただし、営業費やスタジオ運営費が不要な分、本部に支払う受注ロイヤリティは、スタジオ運営契約の3%に比し、高料率となる。月額ロイヤリティ会費は、いずれも10万円である。

建築家は、設計に込めた思想や意図、機能性などの表現力に優れるが、顧客との接点を豊富に持つことが難しい。従来の間接関与方式では、加盟工務店による建築費積算の段階で案件がクラッシュしてしまうことが多々あった。新たな主体的直接関与方式では、同社営業チームが会員とプランニングコースにおける打ち合わせを行うので、会員と本部一括仕入れや「COSNAVI」を利用した建築コストのイメージを共有することで、ある程度コストの問題をクリアした形で案件が建築家に紹介されることになる。本部が設計契約率を高めるお膳立てをしているため、本部案件に積極的に関与する建築家が出てくるだろう。「プランニングコースDUAL」では2人の建築家が競うことになるが、案件に参加する機会が増えることを歓迎する人もいる。

これにより同社にとっては、設計契約ロイヤリティと受注ロイヤリティ他を加えた手数料率のトータルが、従来の請負契約額の6〜7%から10%に上がることになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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