DVx Research Memo(5):大型医療機器の受注案件などで通期の業績見通しは増収増益
[16/01/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(1) 2016年3月期業績見通し
ディーブイエックス<3079>の2016年3月期の業績は、売上高が前期比10.3%増の31,589百万円、営業利益が同7.0%増の1,530百万円、経常利益が同5.0%増の1,530百万円、当期純利益が同40.2%増の1,289百万円と期初計画を据え置いている。
第2四半期までの進捗率は期初計画を下回ったものの、下期は円安が一服しているほか、エキシマレーザ血管形成システムについては仕入価格の調整が進み利益率が改善すること、シネ装置など大型医療機器の受注案件が多く入っていること、不整脈事業については主力製品を中心に引き続き販売数量の増加が見込まれることなどにより、通期の計画は射程圏にあるとみているためだ。なお、為替前提レートは120円/米ドルとしている。
事業セグメント別の売上計画では、不整脈事業が前期比9.5%増の25,470百万円を見込んでいる。大阪を中心とする西日本エリアでの新規顧客開拓の効果が期待できるほか、既存顧客の深耕も継続して進めていく。商品別では引き続き冷凍アブレーションカテーテルの伸びが期待できそうだ。2015年10月まではメーカーの販売戦略により、35病院に販売を限定してきたが、11月以降は全国の医療施設に段階的に販売を広げていく計画となっている。また、ペースメーカや心腔内エコーカテーテルなども引き続き売上増が見込まれている。
虚血事業は前期比13.0%増の4,961百万円と2ケタ増収となる見通し。自動造影剤注入装置「ACIST」の買い替え需要を獲得していくほか、エキシマレーザ血管形成システムの販売台数も上期の4台から下期は7台に増加し、さらに追加で販売できる可能性があるとしている。レンタル導入した医療施設での買取りが進むことによる。また、コロナリーカテーテルなど消耗品も引き続き2ケタ成長が見込まれる。なお、コロナリーカテーテルに関しては2016年以降、0.9mm径サイズでハイパワー品が発売される予定となっている。医療現場でのニーズが強いため、一段の売上増が期待される。
また、現在、薬事承認申請準備中の下肢末梢動脈治療用レーザカテーテルが予定どおり2017年から販売開始となれば、1台のエキシマレーザシステムで冠動脈形成術※1、心内リード抜去術※2と合わせて3通りの術式が利用可能となるため、医療施設側も導入を進めやすくなる。国内で冠動脈形成術を行う医療施設は400ヶ所程度あるため、同システム及び関連消耗品に関しては2017年以降に、一段の成長が期待できるだろう。
※1冠動脈形成術・・・心臓に血液を運ぶ冠動脈が動脈硬化や血栓によって狭窄または塞栓した場合に、同部位にエキシマレーザを照射することで、血栓を分子レベルで分解し冠動脈の血流を改善する術式。
※2心内リード抜去術・・・ペースメーカやICD等のデバイスが菌に感染すると、デバイスと心臓をつなぐリード線を通じて全身に菌の感染が広がる恐れがあり、感染を抑えるために、感染源となるリード線を抜去する必要が出てくる。ただ、長期間心臓内に留置されたリード線は心臓の組織に癒着しており、抜去することが従来は困難であった。同社の製品はエキシマレーザをカテーテル先端部から照射することでリード線を心臓組織からはく離する術式となる。
ちなみに、心臓疾患の国内患者数は年間20万人程度であるのに対して、下肢末梢動脈疾患の患者数は年間5万人の規模となる。患者数の規模は少ないものの、重症患者は足の切断を強いられることから、ニーズは強いものとみられる。米国では冠動脈形成術よりも下肢末梢動脈治療で多く用いられており、一般的な治療法となっている。
その他事業は前期比17.3%増の1,156百万円を見込んでいる。第2四半期までは大型案件がなく低迷したが、下期はシネ装置などの受注を多く抱えていることから、増収に転じるものと予想される。
なお、2017年3月期については診療報酬改定年に当たり、取扱商品の販価低下が見込まれている。2年前は医療機器全体で8%の下落であったのに対して、同社商品は5%ダウンとなり、販売数量増効果で吸収して増収増益となった。2017年3月期についてはまだ低下幅が未確定なものの、同程度の下落率であれば、数量増効果で増収増益を継続していくことは可能とみられる。
(2)中期戦略
同社は中期戦略として、「販売代理店業」(不整脈事業、その他事業)と「輸入総代理店業」(虚血事業)に分け、それぞれの事業ポートフォリオの強化に取り組んでいく方針を示している。
○販売代理店業
「販売代理店業」に関しては、営業エリアの全国展開と取扱領域の拡大に注力していく。営業エリアの拡大については前述したとおり、関西エリアで新規顧客獲得に成功しているほか、地方においても宮崎、沖縄に出張所を開設するなど、着実に拡大してきている。関東圏での不整脈事業の市場シェアは約40%と高いが、全国平均で見ると21%となっており、地方エリアでの市場シェア拡大余地は大きいと言える。
同社の強みは、製品に関する技術サポートスキルの高い営業人員が多く集まっていることにある。社内教育を重視しており、ペースメーカを中心とした埋め込みデバイスの技術検定試験では、メーカー、商社含めて毎年、合格率でトップとなっているほどだ。特に、地方においては同社を上回る質の高い営業サポート力を持つ競合がないことから、今後も顧客(医師、仕入メーカー等)ありきではあるものの、シェアの拡大が進む公算が大きいと言えよう。
取扱領域の拡大に当たっては、不整脈分野以外の診療科目として、「虚血・脳神経外科」分野への取り組みを2015年3月期より強化している。取扱規模がまだ小さいため利益率が低い商品もあるが、キャリア人材の採用など人材強化を進めながら、売上規模の拡大を図り、事業規模を拡大していく方針だ。
○輸入総代理店業
輸入総代理店業に関しては、商品パイプラインの拡充を進めるため、新商品の発掘を今まで以上に積極的に行っていく。今期より新たに代表取締役社長に昇格した千葉茂(ちばしげる)氏がリーダーとなり、直轄部隊を組織して行っている。社長が外資系医療機器メーカー在籍時に構築した国内外の広範なネットワークと、同社の営業マンが現場で吸い上げるニーズとのマッチングを図りながら、新商材の発掘を行う。対象候補となるのは、国内において市場性が見込まれ、競合製品がまだないもの、あるいは商品化すれば高シェアが期待できるものとなる。
なお、M&A戦略としては虚血事業に関連したメーカー機能をグループに取り込みたい考えで、国内で条件にかなう企業があれば検討していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YF>
(1) 2016年3月期業績見通し
ディーブイエックス<3079>の2016年3月期の業績は、売上高が前期比10.3%増の31,589百万円、営業利益が同7.0%増の1,530百万円、経常利益が同5.0%増の1,530百万円、当期純利益が同40.2%増の1,289百万円と期初計画を据え置いている。
第2四半期までの進捗率は期初計画を下回ったものの、下期は円安が一服しているほか、エキシマレーザ血管形成システムについては仕入価格の調整が進み利益率が改善すること、シネ装置など大型医療機器の受注案件が多く入っていること、不整脈事業については主力製品を中心に引き続き販売数量の増加が見込まれることなどにより、通期の計画は射程圏にあるとみているためだ。なお、為替前提レートは120円/米ドルとしている。
事業セグメント別の売上計画では、不整脈事業が前期比9.5%増の25,470百万円を見込んでいる。大阪を中心とする西日本エリアでの新規顧客開拓の効果が期待できるほか、既存顧客の深耕も継続して進めていく。商品別では引き続き冷凍アブレーションカテーテルの伸びが期待できそうだ。2015年10月まではメーカーの販売戦略により、35病院に販売を限定してきたが、11月以降は全国の医療施設に段階的に販売を広げていく計画となっている。また、ペースメーカや心腔内エコーカテーテルなども引き続き売上増が見込まれている。
虚血事業は前期比13.0%増の4,961百万円と2ケタ増収となる見通し。自動造影剤注入装置「ACIST」の買い替え需要を獲得していくほか、エキシマレーザ血管形成システムの販売台数も上期の4台から下期は7台に増加し、さらに追加で販売できる可能性があるとしている。レンタル導入した医療施設での買取りが進むことによる。また、コロナリーカテーテルなど消耗品も引き続き2ケタ成長が見込まれる。なお、コロナリーカテーテルに関しては2016年以降、0.9mm径サイズでハイパワー品が発売される予定となっている。医療現場でのニーズが強いため、一段の売上増が期待される。
また、現在、薬事承認申請準備中の下肢末梢動脈治療用レーザカテーテルが予定どおり2017年から販売開始となれば、1台のエキシマレーザシステムで冠動脈形成術※1、心内リード抜去術※2と合わせて3通りの術式が利用可能となるため、医療施設側も導入を進めやすくなる。国内で冠動脈形成術を行う医療施設は400ヶ所程度あるため、同システム及び関連消耗品に関しては2017年以降に、一段の成長が期待できるだろう。
※1冠動脈形成術・・・心臓に血液を運ぶ冠動脈が動脈硬化や血栓によって狭窄または塞栓した場合に、同部位にエキシマレーザを照射することで、血栓を分子レベルで分解し冠動脈の血流を改善する術式。
※2心内リード抜去術・・・ペースメーカやICD等のデバイスが菌に感染すると、デバイスと心臓をつなぐリード線を通じて全身に菌の感染が広がる恐れがあり、感染を抑えるために、感染源となるリード線を抜去する必要が出てくる。ただ、長期間心臓内に留置されたリード線は心臓の組織に癒着しており、抜去することが従来は困難であった。同社の製品はエキシマレーザをカテーテル先端部から照射することでリード線を心臓組織からはく離する術式となる。
ちなみに、心臓疾患の国内患者数は年間20万人程度であるのに対して、下肢末梢動脈疾患の患者数は年間5万人の規模となる。患者数の規模は少ないものの、重症患者は足の切断を強いられることから、ニーズは強いものとみられる。米国では冠動脈形成術よりも下肢末梢動脈治療で多く用いられており、一般的な治療法となっている。
その他事業は前期比17.3%増の1,156百万円を見込んでいる。第2四半期までは大型案件がなく低迷したが、下期はシネ装置などの受注を多く抱えていることから、増収に転じるものと予想される。
なお、2017年3月期については診療報酬改定年に当たり、取扱商品の販価低下が見込まれている。2年前は医療機器全体で8%の下落であったのに対して、同社商品は5%ダウンとなり、販売数量増効果で吸収して増収増益となった。2017年3月期についてはまだ低下幅が未確定なものの、同程度の下落率であれば、数量増効果で増収増益を継続していくことは可能とみられる。
(2)中期戦略
同社は中期戦略として、「販売代理店業」(不整脈事業、その他事業)と「輸入総代理店業」(虚血事業)に分け、それぞれの事業ポートフォリオの強化に取り組んでいく方針を示している。
○販売代理店業
「販売代理店業」に関しては、営業エリアの全国展開と取扱領域の拡大に注力していく。営業エリアの拡大については前述したとおり、関西エリアで新規顧客獲得に成功しているほか、地方においても宮崎、沖縄に出張所を開設するなど、着実に拡大してきている。関東圏での不整脈事業の市場シェアは約40%と高いが、全国平均で見ると21%となっており、地方エリアでの市場シェア拡大余地は大きいと言える。
同社の強みは、製品に関する技術サポートスキルの高い営業人員が多く集まっていることにある。社内教育を重視しており、ペースメーカを中心とした埋め込みデバイスの技術検定試験では、メーカー、商社含めて毎年、合格率でトップとなっているほどだ。特に、地方においては同社を上回る質の高い営業サポート力を持つ競合がないことから、今後も顧客(医師、仕入メーカー等)ありきではあるものの、シェアの拡大が進む公算が大きいと言えよう。
取扱領域の拡大に当たっては、不整脈分野以外の診療科目として、「虚血・脳神経外科」分野への取り組みを2015年3月期より強化している。取扱規模がまだ小さいため利益率が低い商品もあるが、キャリア人材の採用など人材強化を進めながら、売上規模の拡大を図り、事業規模を拡大していく方針だ。
○輸入総代理店業
輸入総代理店業に関しては、商品パイプラインの拡充を進めるため、新商品の発掘を今まで以上に積極的に行っていく。今期より新たに代表取締役社長に昇格した千葉茂(ちばしげる)氏がリーダーとなり、直轄部隊を組織して行っている。社長が外資系医療機器メーカー在籍時に構築した国内外の広範なネットワークと、同社の営業マンが現場で吸い上げるニーズとのマッチングを図りながら、新商材の発掘を行う。対象候補となるのは、国内において市場性が見込まれ、競合製品がまだないもの、あるいは商品化すれば高シェアが期待できるものとなる。
なお、M&A戦略としては虚血事業に関連したメーカー機能をグループに取り込みたい考えで、国内で条件にかなう企業があれば検討していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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