城南進学研究社 Research Memo(6):長期囲い込みにむけスポーツクラブや留学試験対策専門予備校を買収
[16/01/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■新規事業
城南進学研究社<4720>は少子化社会という逆風下にあって、顧客を長期間にわたって囲い込むことで成長を実現するという成功シナリオを描いている。長期囲い込み戦略自体は同社に限ったことではないが、同社に特徴的なことは、a)社会環境の変化に応じて成長分野と期待できる領域に集中する、b)他社のノウハウを活用すべくM&Aを通じた事業領域拡大を図っている、c)その際の企業選定に当たっては、規模が小さくても他との差別化が図れて顧客満足度を高められる特質を有する企業選びを重視している、d)子会社化した企業に対してはそれぞれの歴史やノウハウを尊重し、独立性を重視した“連邦経営”で統治していると弊社は考えている。2016年3月期下期においても、注目すべきM&Aを2件立て続けに発表した。
(1)久ヶ原スポーツクラブの買収
同社は2015年11月19日付で、東京都大田区の久ヶ原スポーツクラブ(KSC)を完全子会社化した。KSCはスイミングプール、スポーツクラブなどに加えて、ダンス教室やバレエ教室、囲碁・茶道など様々なレッスンを提供し、2,700名超の会員を抱えている。
弊社では、顧客の長期囲い込み戦略が買収の理由とみている。スイミングは子供の習い事ランキングのトップクラスに位置している。典型的なパターンは幼稚園から始めて小学校3、4年生くらいで一定のレベルに達すると(例えば4泳法マスター)、勉強との兼ね合いから退会してしまうというものだ。同社にとっては長期囲い込み戦略という点で幼稚園児から顧客を取り込める点が魅力的だったのではないかとみている。
KSCはプールの隣接地に他の習い事のスタジオ・教室となっている4階建てのビルを有しているが、この存在も買収の大きな決め手となったものとみられる。これらの事業は塾業界との親和性が高く、同社の教育コンテンツを組み込み、スポーツと学習指導を融合させることによるシナジー効果を発揮し、長期囲い込み戦略の実現を図ることが可能になる。またアイデア次第ではこれまでの同社になかった新しいビジネスモデルの創出も十分あり得よう。今後の展開が注目される。
(2)リンゴ・エル・エル・シーの買収
同社は12月1日付でリンゴ・エル・エル・シー(リンゴ)を完全子会社化した。リンゴは英語教育、特にTOEFL対策などで著名な林功(はやしいさお)氏が、留学試験対策の専門予備校として設立した企業だ。留学試験対策として、英語の4技能(読む・聞く・話す・書く)をバランスよく習得させることに長けている点に特徴がある。
弊社は、リンゴの買収は同社の英語教育重視という中長期戦略上、非常に重要な案件であると考えている。前述のように、小学生以下はズー・フォニックス・アカデミーで、中高生は個別指導教室や予備校で英語教育を実施している。今回のリンゴの買収で大学生以上に英語教育を行うプラットフォームが整った。
もう1つの意義は、リンゴが英語4技能に強いということだ。小・中学校の英語の授業においても、4技能をバランスよく習得させ、“使える英語”を身に着けさせることに重点が移ってきている。この点で高度なノウハウと実績を有する林氏と同社を取り込むことができたことは、今後の同社の事業展開に大きなプラスになると弊社では考えている。
リンゴの施設は東京都新宿区内の1校舎体制だ。今後、リンゴをどのように発展させていくのかについて、同社は検討中としている。同社には予備校や個別指導教室、マナビスといった全国展開のプラットフォームや、デジタル教材のノウハウがあるため、既存プラットフォームでの英語教育に厚みを加えることや、事業の水平展開、地理的拡大など、リンゴの有するコンテンツの活用に当たっては様々な可能性がある。今後の具体的な施策の発表が待たれるところだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<YF>
城南進学研究社<4720>は少子化社会という逆風下にあって、顧客を長期間にわたって囲い込むことで成長を実現するという成功シナリオを描いている。長期囲い込み戦略自体は同社に限ったことではないが、同社に特徴的なことは、a)社会環境の変化に応じて成長分野と期待できる領域に集中する、b)他社のノウハウを活用すべくM&Aを通じた事業領域拡大を図っている、c)その際の企業選定に当たっては、規模が小さくても他との差別化が図れて顧客満足度を高められる特質を有する企業選びを重視している、d)子会社化した企業に対してはそれぞれの歴史やノウハウを尊重し、独立性を重視した“連邦経営”で統治していると弊社は考えている。2016年3月期下期においても、注目すべきM&Aを2件立て続けに発表した。
(1)久ヶ原スポーツクラブの買収
同社は2015年11月19日付で、東京都大田区の久ヶ原スポーツクラブ(KSC)を完全子会社化した。KSCはスイミングプール、スポーツクラブなどに加えて、ダンス教室やバレエ教室、囲碁・茶道など様々なレッスンを提供し、2,700名超の会員を抱えている。
弊社では、顧客の長期囲い込み戦略が買収の理由とみている。スイミングは子供の習い事ランキングのトップクラスに位置している。典型的なパターンは幼稚園から始めて小学校3、4年生くらいで一定のレベルに達すると(例えば4泳法マスター)、勉強との兼ね合いから退会してしまうというものだ。同社にとっては長期囲い込み戦略という点で幼稚園児から顧客を取り込める点が魅力的だったのではないかとみている。
KSCはプールの隣接地に他の習い事のスタジオ・教室となっている4階建てのビルを有しているが、この存在も買収の大きな決め手となったものとみられる。これらの事業は塾業界との親和性が高く、同社の教育コンテンツを組み込み、スポーツと学習指導を融合させることによるシナジー効果を発揮し、長期囲い込み戦略の実現を図ることが可能になる。またアイデア次第ではこれまでの同社になかった新しいビジネスモデルの創出も十分あり得よう。今後の展開が注目される。
(2)リンゴ・エル・エル・シーの買収
同社は12月1日付でリンゴ・エル・エル・シー(リンゴ)を完全子会社化した。リンゴは英語教育、特にTOEFL対策などで著名な林功(はやしいさお)氏が、留学試験対策の専門予備校として設立した企業だ。留学試験対策として、英語の4技能(読む・聞く・話す・書く)をバランスよく習得させることに長けている点に特徴がある。
弊社は、リンゴの買収は同社の英語教育重視という中長期戦略上、非常に重要な案件であると考えている。前述のように、小学生以下はズー・フォニックス・アカデミーで、中高生は個別指導教室や予備校で英語教育を実施している。今回のリンゴの買収で大学生以上に英語教育を行うプラットフォームが整った。
もう1つの意義は、リンゴが英語4技能に強いということだ。小・中学校の英語の授業においても、4技能をバランスよく習得させ、“使える英語”を身に着けさせることに重点が移ってきている。この点で高度なノウハウと実績を有する林氏と同社を取り込むことができたことは、今後の同社の事業展開に大きなプラスになると弊社では考えている。
リンゴの施設は東京都新宿区内の1校舎体制だ。今後、リンゴをどのように発展させていくのかについて、同社は検討中としている。同社には予備校や個別指導教室、マナビスといった全国展開のプラットフォームや、デジタル教材のノウハウがあるため、既存プラットフォームでの英語教育に厚みを加えることや、事業の水平展開、地理的拡大など、リンゴの有するコンテンツの活用に当たっては様々な可能性がある。今後の具体的な施策の発表が待たれるところだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<YF>