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【FISCOソーシャルレポーター】個人投資家ゆたぽん氏:マイナス金利恩恵の思惑銘柄と今後の見通し

注目トピックス 日本株

以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家ゆたぽん氏(ツイッター:@yutanpo104 )が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。

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※2016年2月21日23時に執筆

1月29日の会合で日銀が発表した「マイナス金利導入」政策に関して、各メディアでも実際にどのような影響があるのかなど多く取り上げており、関心の高さを強く感じる。

最初に、私が今回、「マイナス金利恩恵銘柄」ではなく、あえて「思惑」と入れているのには意味がある。それは、日本においてマイナス金利政策導入は初の試みであり前例がなく、今後どういった展開をみせるのか予想が容易でないためである。欧州では一部マイナス金利を導入している国もあるが、条件や国の規模も異なるため比較は難しい。

後に取り上げるが政策発表直後から、金庫を製造販売する企業が急動意し、商いを伴った上昇をみせている。こうした動きは無視することはできない。しかし、実際に恩恵があるのかどうかは蓋を開けてみないとわからず、思惑が先行している部分が大きい。

今回は、発表後に動意付いたセクター・銘柄を復習し、さらに今後マイナス金利政策がマーケットで中期的な太いトレンドテーマとして広がりを見せたときに、“こじつけ”も含めどういったセクター・銘柄に物色の手が広がる可能性があるのかを考察する。


◆マイナス金利政策の目的

簡単なおさらいをしておくと、この政策の狙いは、日銀の当座預金をマイナス金利にすることで、民間銀行の融資を促してカネ回りを良くし、経済を活性化させて景気を上向かせるということだ。金利の低下で、企業の設備投資や住宅ローン借り入れの増加も期待されている。

懸念としては、実際に銀行が貸し出しを増やすかどうかが疑問である点と、肝心の資金需要がなければ機能不全に陥る可能性があるという点だ。そして、現在国際金融市場における混乱の元凶の1つとも言われている中国をはじめとした諸外国の抱える問題が悪化した場合には、外部要因の不安を打ち消すほどの政策ではないということだ。(実際に、発表後は円安に動いた為替も直ちに全否定され、外的要因により株式市場も急落してしまった。)


◆発表後に動意したセクターと主な銘柄

◇不動産セクター
大手不動産株、ケネディクス<4321>、プロパスト<3236>、ファンドクリエーションG<3266>

→政策発表後初動の物色としては、東急不動産<3289>、野村不動産HD<3231>などの大手不動産銘柄、アベノミクス初期に大相場を演じた新興系不動産ファンド株、そして新興低位小型不動産株の上昇が特に目立った。
2/21付の日経新聞一面では、昨年の不動産融資が26年ぶりに過去最高を記録し、低金利を背景に住宅やオフィスビルの需要が底堅く、緩和マネーが流入していると報道された。さらに、今後マイナス金利政策が拍車をかけ局所的なバブルを生みだすことも懸念されている。
現在、市場金利が軒並み低下し、相対的に利回りの高い不動産投資信託(REIT)に資金が集まっている。だが、一部ではREITの主要な投資先であるオフィス市況が悪化に転じる兆しが出ているそうだ。円安が止まり企業業績の先行きに警戒感が出る中、数か月前よりも市況が悪化するリスクが高まっている。さらに、1月のオフィス空室率が一部上昇に転じたことも懸念材料の一つとされている。需要が低下しオフィス市況そのものが悪化すると、マイナス金利の恩恵も思ったほどではなかったという失望を誘う可能性があるので、今後の不動産指標には要注目だ。

◇金庫関連銘柄
日本アイエスケイ<7986>、くろがね工作<7997>

→メディアでも取り上げられていたが、マイナンバー制度の運用開始やマイナス金利導入を背景に、防衛本能が働いているのだろうか。預金金利が低下し、「タンス預金」が増えると見込み金庫の販促活動をしているホームセンターなどでは、実際に売り上げが直近1か月で前年同期比約1.4倍となったところもあるようだ。今後、普通預金にマイナス金利が適用される可能性は考えづらいが、現在の超低金利下でのタンス預金ニーズの高まりがどの程度継続するのかは見ていく必要がありそうだ。


◆今後思惑が広がる可能性のあるテーマと関連銘柄

◇与信管理サービスを活用した融資拡大
情報企画<3712>、リスクモンスター<3768>

→先ほども述べたように、金融機関の融資拡大促進が今回のマイナス金利導入の狙いである。そこで、金融機関は今よりもさらに多くの企業の信用情報データが必要となるかもしれない。ここで挙げる2社は足元業績も好調で、与信管理サービス事業等を展開している小型株である。
情報企画<3712>は、金融機関向け業務支援ソフトのパッケージを開発しており、決算書リーディングや法人格付けシステムなどが地銀、信金等に受注好調である。
リスクモンスター<3768>は、東京商工リサーチの企業情報を活用してネットで審査・与信サービスを提供している。こちらも信用情報の需要は想定超であり直近の第3四半期決算では今期経常利益を上方修正している。また、2015年6月から中国企業の与信管理システムの提供を開始しており、約1000万社の中国企業に対して自社で格付けを付与した信用調査が可能となっているという。近年たびたび中国企業の信用問題が話題に上がり、日本企業との取引も多いことから、今後の思惑のみならず需要増も期待されるところである。


◇実物資産としての美術品
シンワアートオークション<2437>

→以前個別銘柄考察でも取り上げさせていただいたが、実物資産の一つとして美術品に注目している。資産としての価値認定の難しさや流動性の低さなど、リスクも高い。しかし、インフレに強く、保有している美術品の価格がバブル的に高騰することもあるといった長所もあり、今回のマイナス金利政策により、“現金から実物資産へ”という思惑がはたらく可能性は十分考えられる。美術品は、おもにオークションなどで売買されることが多いため、高額美術品市場シェアトップの同社に注目したい。


◇株式投資
スパークス<8739>、フィスコ<3807>、モーニングスター<4765>

→今年に入りたびたび混乱を含んだ金融経済状況による不安の煽りと、預金金利の急低下によって、資産運用のニーズが高まることが予想される。証券各社は年初からの急落により、損失が膨らみ売買を手控える顧客が増え、手数料収入が先細る可能性も考慮して除外する。ここでは、投資顧問業・金融情報を提供する上記3社を関連銘柄として監視したい。


最後に、くどいようだが注意してほしいのは、これらの企業には実際に業績寄与するほどの恩恵がないかもしれないということだ。しかし、思惑というのはマーケットにおいて重要なファクターの1つである。
思惑は数字で測ることができないので、株価がどこまでいくのか見当がつきにくい。それ故に期待が膨らみ、時としてファンダメンタルズやテクニカルをあざ笑うのかのごとく、覚醒したような株価急騰を短期的に引き起す。そこにトレードの収益機会が存在する以上、思惑というものは無視できない要素であると考える。
実際に、金庫関連銘柄の一連の急騰で、国内全世帯の何%にあたる世帯が金庫を新しく購入し、そこから日本アイエスケイにシェアを計算に入れて、最終的にどの程度業績寄与するのかまで計算して株を買っている人がどの程度いるだろうか。おそらく、殆どの人は<金庫がバカ売れするっぽい>という思惑だけで買っていることだろう。
これから、中にはとんでもない“こじつけ”が出てくるかもしれない。マーケットはそれを祭り上げるかもしれないし、認めないかもしれない。答えは未来だけが知っている。自分なりのロジックとイマジネーションを融合させて、ゆとりを持ちながら様々な思惑トレードの醍醐味を楽しんでいければ良いのではないだろうか。


※テーマ・個別銘柄に関して盛り上げるか上げないかは大口次第で、先のことはわかりませんので悪しからず。地合いも考慮しながら売買のタイミングには気を付けましょう。

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執筆者名:ゆたぽん(ツイッター:@yutanpo104 )



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