伊藤忠エネクス Research Memo(3):電力・ユーティリティ事業は電力小売全面自由化で成長エンジンに
[16/02/29]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■事業部門別動向
(1)ホームライフ事業
伊藤忠エネクス<8133>のホームライフ事業の中核のビジネスはLPガスの販売だ。同社はジャパンガスエナジー(株)(同社が20%出資)から仕入れ、同社の直販子会社を通じて直接約35万世帯にLPガスを販売している。このほかに全国約1,600のLPガス販売店に対しLPガスを卸売しており、この1,600の販売店の顧客も合わせると、同社のLPガスがカバーする世帯数は全国で約108万世帯に達している。
ホームライフ事業の今第3四半期は、売上高68,526百万円(前年同期比15.8%減)、営業利益1,367百万円(同17.2%増)、当期利益138百万円(同181.6%増)と減収ながら増益で着地した。CP下落の影響で減収となったが、利益面では第2四半期までの堅調な流れがそのまま第3四半期に続いたという印象だ。暖冬の影響で業界全体ではLPガス販売数量が前年割れとなるなか、同社は直販顧客数増加などでほぼ前年同期並みの販売数量を確保できた。LPガス事業は原料費調整制度で一定の利幅を確保できるため、販売数量の動きが利益変動に対して大きな影響を持つ。機器販売も順調に伸びて、事業部門全体の利益押し上げに貢献した。
ホームライフ事業での取り組みで注目されていた電力小売自由化への取り組みは順調に進捗しているもようだ。LPガス事業の販売会社各社は、電力小売自由化に際して電力事業部門がバランシンググループ(BG)を形成する際、需要家PPSとしてBGに参加して販売窓口となることが期待されている。関東地域を事業エリアとする子会社の伊藤忠エネクスホームライフ関東(株)は既に登録小売電気事業者への登録を済ませており、2016年4月1日から電力小売事業を開始予定だ。
(2)カーライフ事業
カーライフ事業ではカーライフステーション(CS、いわゆるガソリンスタンド)関連事業(子会社によるCS経営、系列CSへのガソリン等の卸売、その他CS周りの事業)と、大阪カーライフグループ(OCG)が行う自動車ディーラー事業が2本柱だ。
カーライフ事業の今第3四半期は売上高408,605百万円(前年同期比16.6%減)、営業利益2,774百万円(同2.5%増)、当期利益1,360百万円(同1.6%増)と減収増益で着地した。主力のガソリンは石油価格下落の影響で販売量増加と価格下落という好悪両方の影響が出たがネットでは売上高減少となった。また、不採算CSの閉鎖による減販(閉鎖55ヶ所、新規取得23ヶ所で純減32ヶ所)も売上高を押し下げた。利益面では不採算店の閉鎖で利益が改善する一方で、暖冬による灯油販売不振と市況悪化の影響を受けた。OCGが増益となったことで事業部門全体での前年同期比増益を確保した。
カーライフ事業にとっての中長期的な課題は、トップライングロース、すなわち売上拡大に転ずることだと考えている。ガソリン市況など外部要因の影響やCS数の減少基調継続の影響があるため、売上高全体では減収基調が続く懸念もあるが、個々のCSベースでの収益拡大による事業全体の収益力強化ということだ。同社は車関連6事業(洗車、レンタカー、車検、板金、保険、買取)の強化やRポイント及びカードの展開などの施策を行ってきた。また、「CS経営の基本は洗車から」ということで、子会社のエネクスオート(株)が事務局となって日本洗車連盟(JVWF)を運営してきたが、加盟店数が1,500を突破するなど、順調に拡大しつつある。
(3)電力・ユーティリティ事業
電力・ユーティリティ事業は電力の発電・需給・販売と、大規模オフィスビルに対する熱供給事業が2本柱となっている。電力事業は石炭火力、風力、太陽光などの多様な自社電源のほか王子ホールディングス<3861>との提携で得られた電源(バイオマス等)も活用して、電力小売全面自由化のなか、同社の成長エンジンとなることが期待されている。
電力・ユーティリティ事業の今第3四半期は、売上高31,181百万円(前年同期比9.9%増)、営業利益3,743百万円(同20.1%増)、当期利益1,891百万円(同18.6%増)と増収増益で着地した。第3四半期の時点で通期の営業利益予想の3,200百万円を超えた。電力事業では王子・伊藤忠エネクス電力販売(株)からの電力が加わったため電力販売量が前年同期比で大幅増となった。利益面では電力卸市場からの調達価格が下がって増益に貢献した。熱供給事業では原油安メリットが生じてやはり増益に貢献した。
電力・ユーティリティ事業では2016年4月からの電力小売全面自由化を控えており、それへの対応が今後の大きなテーマとなる。その詳細については別項で詳述する。
(4)エネルギートレード事業
エネルギートレード事業はアスファルトやアドブルー(ディーゼル車の排ガスを無害化する高品位尿素水)、船舶用燃料、産業用燃料などの販売から構成されている。また近年では石炭灰再利用や再生油事業などの新規事業にも取り組んでいる。
エネルギートレード事業の今第3四半期は、売上高321,613百万円(前年同期比30.9%減)、営業利益2,853百万円(同54.5%増)、当期利益1,887百万円(同63.4%増)と大幅減収ながら大幅増益となった。大幅減収の理由は原油価格下落、アスファルトの需要減に加えて、非効率取引の抑制などを行ったことによる。非効率取引見直しは期初からの計画である。利益が大幅に増加したのは、アスファルト以外の事業は全般に好調に推移したほか、コスト削減等の努力が奏功した結果だ。
エネルギートレード事業について、同社は事業基盤強化をテーマの1つに掲げている。具体的には全国展開するアドブルー供給拠点やアスファルト基地、各種専用船・専用施設などのアセットを活用して流通機能の最適化・高度化を図ることなどがある。今第3四半期までの実績はこうした施策が一定の成果を出しているように思われる。もう1つのテーマである新規事業展開の推進では、再生油事業や石炭灰再利用などの早期の事業化が待たれるところだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<HN>
(1)ホームライフ事業
伊藤忠エネクス<8133>のホームライフ事業の中核のビジネスはLPガスの販売だ。同社はジャパンガスエナジー(株)(同社が20%出資)から仕入れ、同社の直販子会社を通じて直接約35万世帯にLPガスを販売している。このほかに全国約1,600のLPガス販売店に対しLPガスを卸売しており、この1,600の販売店の顧客も合わせると、同社のLPガスがカバーする世帯数は全国で約108万世帯に達している。
ホームライフ事業の今第3四半期は、売上高68,526百万円(前年同期比15.8%減)、営業利益1,367百万円(同17.2%増)、当期利益138百万円(同181.6%増)と減収ながら増益で着地した。CP下落の影響で減収となったが、利益面では第2四半期までの堅調な流れがそのまま第3四半期に続いたという印象だ。暖冬の影響で業界全体ではLPガス販売数量が前年割れとなるなか、同社は直販顧客数増加などでほぼ前年同期並みの販売数量を確保できた。LPガス事業は原料費調整制度で一定の利幅を確保できるため、販売数量の動きが利益変動に対して大きな影響を持つ。機器販売も順調に伸びて、事業部門全体の利益押し上げに貢献した。
ホームライフ事業での取り組みで注目されていた電力小売自由化への取り組みは順調に進捗しているもようだ。LPガス事業の販売会社各社は、電力小売自由化に際して電力事業部門がバランシンググループ(BG)を形成する際、需要家PPSとしてBGに参加して販売窓口となることが期待されている。関東地域を事業エリアとする子会社の伊藤忠エネクスホームライフ関東(株)は既に登録小売電気事業者への登録を済ませており、2016年4月1日から電力小売事業を開始予定だ。
(2)カーライフ事業
カーライフ事業ではカーライフステーション(CS、いわゆるガソリンスタンド)関連事業(子会社によるCS経営、系列CSへのガソリン等の卸売、その他CS周りの事業)と、大阪カーライフグループ(OCG)が行う自動車ディーラー事業が2本柱だ。
カーライフ事業の今第3四半期は売上高408,605百万円(前年同期比16.6%減)、営業利益2,774百万円(同2.5%増)、当期利益1,360百万円(同1.6%増)と減収増益で着地した。主力のガソリンは石油価格下落の影響で販売量増加と価格下落という好悪両方の影響が出たがネットでは売上高減少となった。また、不採算CSの閉鎖による減販(閉鎖55ヶ所、新規取得23ヶ所で純減32ヶ所)も売上高を押し下げた。利益面では不採算店の閉鎖で利益が改善する一方で、暖冬による灯油販売不振と市況悪化の影響を受けた。OCGが増益となったことで事業部門全体での前年同期比増益を確保した。
カーライフ事業にとっての中長期的な課題は、トップライングロース、すなわち売上拡大に転ずることだと考えている。ガソリン市況など外部要因の影響やCS数の減少基調継続の影響があるため、売上高全体では減収基調が続く懸念もあるが、個々のCSベースでの収益拡大による事業全体の収益力強化ということだ。同社は車関連6事業(洗車、レンタカー、車検、板金、保険、買取)の強化やRポイント及びカードの展開などの施策を行ってきた。また、「CS経営の基本は洗車から」ということで、子会社のエネクスオート(株)が事務局となって日本洗車連盟(JVWF)を運営してきたが、加盟店数が1,500を突破するなど、順調に拡大しつつある。
(3)電力・ユーティリティ事業
電力・ユーティリティ事業は電力の発電・需給・販売と、大規模オフィスビルに対する熱供給事業が2本柱となっている。電力事業は石炭火力、風力、太陽光などの多様な自社電源のほか王子ホールディングス<3861>との提携で得られた電源(バイオマス等)も活用して、電力小売全面自由化のなか、同社の成長エンジンとなることが期待されている。
電力・ユーティリティ事業の今第3四半期は、売上高31,181百万円(前年同期比9.9%増)、営業利益3,743百万円(同20.1%増)、当期利益1,891百万円(同18.6%増)と増収増益で着地した。第3四半期の時点で通期の営業利益予想の3,200百万円を超えた。電力事業では王子・伊藤忠エネクス電力販売(株)からの電力が加わったため電力販売量が前年同期比で大幅増となった。利益面では電力卸市場からの調達価格が下がって増益に貢献した。熱供給事業では原油安メリットが生じてやはり増益に貢献した。
電力・ユーティリティ事業では2016年4月からの電力小売全面自由化を控えており、それへの対応が今後の大きなテーマとなる。その詳細については別項で詳述する。
(4)エネルギートレード事業
エネルギートレード事業はアスファルトやアドブルー(ディーゼル車の排ガスを無害化する高品位尿素水)、船舶用燃料、産業用燃料などの販売から構成されている。また近年では石炭灰再利用や再生油事業などの新規事業にも取り組んでいる。
エネルギートレード事業の今第3四半期は、売上高321,613百万円(前年同期比30.9%減)、営業利益2,853百万円(同54.5%増)、当期利益1,887百万円(同63.4%増)と大幅減収ながら大幅増益となった。大幅減収の理由は原油価格下落、アスファルトの需要減に加えて、非効率取引の抑制などを行ったことによる。非効率取引見直しは期初からの計画である。利益が大幅に増加したのは、アスファルト以外の事業は全般に好調に推移したほか、コスト削減等の努力が奏功した結果だ。
エネルギートレード事業について、同社は事業基盤強化をテーマの1つに掲げている。具体的には全国展開するアドブルー供給拠点やアスファルト基地、各種専用船・専用施設などのアセットを活用して流通機能の最適化・高度化を図ることなどがある。今第3四半期までの実績はこうした施策が一定の成果を出しているように思われる。もう1つのテーマである新規事業展開の推進では、再生油事業や石炭灰再利用などの早期の事業化が待たれるところだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<HN>