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サイオス Research Memo(5):売上、利益ともに大幅増の見込み

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

(1) 2016年12月期業績見通し

サイオステクノロジー<3744>の2016年12月期の連結業績は、売上高が前期比12.1%増の10,500百万円、営業利益が140百万円、経常利益が100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が50百万円を見込んでいる。売上高については6期連続増収、利益は2期ぶりの増益に転じる見通しだ。

売上高では新たにPCIが期初から貢献するほか、KPSも年間を通じてフル寄与する。2社合わせて前期ベースの売上高であれば前期比で約1,500百万円の増収要因となる見込みだ。また、「LifeKeeper」やMFP向けソフトウェア、「Gluegentシリーズ」なども引き続き成長が見込めることから、売上計画については保守的な計画とみられる。

一方、利益面では営業利益で前期比251百万円の増益を見込んでいる。今期も研究開発費を前期比232百万円増の880百万円と積極投下するほか、PCIののれん償却額約80百万円が減益要因となるが、グループ間の連携による合理化を推進するほか、利益率の高い自社製品の売上伸長が利益増に寄与する。

今期の研究開発方針としては、機械学習技術への積極的な投資を行い、「SIOS iQ」の機能拡充に加えて、Fintechを含む新たな領域での新製品・サービスの開発を進めていく。また、既存の主力製品の機能強化も引き続き行う予定だ。

○オープンシステム基盤事業
今期のオープンシステム基盤事業では、「LifeKeeper」の伸びが期待される。2015年9月に3年4ヶ月ぶりのメジャーバージョンをリリースし、顧客の多様なニーズに対応する新機能を加えたためだ。具体的にはDevOpsを実現するChefに対応し、システム環境を構築する作業の大幅な自動化が可能となった。これにより、同じ構成のシステムを短時間に大量に構築できるようになるなど、エンジニアにとっての利便性と作業効率が格段に向上する。更に、LifeKeeperに精通したエンジニアが不在の海外拠点等でも、正確かつスピーディーなインフラ構築が実現可能となる。こうした機能強化により、「LifeKeeper」で2ケタ増収を見込んでいる。

「SIOS iQ」については順調な立ち上がりが期待される。既に2016年1月に情報セキュリティソフトの大手であるトレンドマイクロ<4704>が採用したことを発表している。トレンドマイクロがアイルランドで運用するデータセンターで採用されたもので、同社担当者によれば「システムのパフォーマンス問題の原因分析を自動化することで、根本原因の早期発見・改善が可能となり、システム管理の効率化を実現したことに加え、サービスの信頼性が向上する効果が認められた」と言う。

また、3月16日付で、学習結果に基づいたストレージ枯渇予測機能を追加した「SIOS iQ v3.5」をリリースし、提供を開始した。この予測機能は、仮想ディスクをシン・プロビジョニング※で作成し、ストレージをオーバーコミット(物理的な容量より大きく論理的な容量を定義)している環境で、特に有効な機能となる。

※シン・プロビジョニング・・・物理ストレージの容量にかかわらず、仮想ディスクの論理的な容量を大きく割り当てることができる技術。シン・プロビジョニングされた仮想ディスクは、仮想マシン内からは論理的に割り当てられた容量として見えるため、論理的な空き容量が存在しても、物理的に空き容量が存在しないという矛盾が生じる場合がある。

SIOS iQのユーザーは、この機能を使用することにより、仮想ディスクレベルでは、空き容量があるように見えているにもかかわらず、データストアレベルでのストレージが枯渇するという深刻な問題を未然に防ぐことができる。さらに、実際の振る舞いを学習した結果に基づいた予測を利用することで、予めストレージやデータストアの容量を過度に用意する必要性を排除し、コスト節減にも寄与することになる。同社では今後も新機能の追加や利便性向上に向けたパフォーマンスの向上を続けることで、SIOS iQの顧客開拓を進めていく戦略だ。なお、今回のリリースに併せて、SIOS iQが英国のIT企業であるDatrix社に新たに採用され、製品開発のためのフィードバックを提供する「SIOS iQ VIPプログラム」に参加したと発表している。

○Webアプリケーション事業
Webアプリケーション事業ではMFPソフトウェアや「Gluegentシリーズ」など既存製品で2ケタ増収が見込まれるほか、KPSやPCIなど子会社の売上高も金融業界のシステム投資拡大を追い風に、2ケタ成長となる見通しだ。

特に、金融業界ではFintechなど新たなサービス領域に向けた開発投資が活発化することが予想され、同社でも注力していく方針となっている。3月6日にはPCIが、金融機関向けに提供する収益管理システムで特許を取得したと発表している。特許の内容は、金融機関の業務において法人・個人顧客の収益性を多様な属性を切り口として分析し、予算策定と実績管理を行う機能に関するものとなる。

具体的には、従来のシステムでは、固定的な勘定科目に縛られるという制約があったため、顧客との取引実態や金利条件などの市場環境の変化、顧客属性等による最適な施策立案と管理を行うことが困難であった。今回の特許は、PCIのALMシステムの中核となる経営管理データベースの機能を活用し、データベースに蓄積された取引明細単位のデータとその属性情報に基づき、科目別や部店別だけでなく、地域、業種、年齢など、さまざまな切り口での分析・管理を可能なものとしている。これにより従来の収益管理システムのように、最初に設定した勘定科目に縛られることなく、柔軟かつ機動的な運用が可能となり、金融機関にとっては経営戦略の多様化と高度化を実現することが可能となり、とりわけ、顧客へのソリューション提案力の強化により顧客の囲い込み、掘り起しを進めたい地方銀行や信用金庫など地方金融機関を中心に新規導入が進むものと期待される。

(2)中期経営計画について

同社は中期3ヶ年計画について、最終年度となる2018年12月期の業績目標値を、売上高で14,000百万円、EBITDAで700百万円とした。中期経営計画の基本方針としては、「継続的な研究開発投資」と「コアビジネスの競争力強化」に加えて、KPSやPCIなど新たな子会社との協業による「Fintechを含む新たな領域での新規事業創出」にも取り組んでいく方針となっている。

前述したように、今期の売上計画は保守的であるほか、「SIOS iQ」やその他複数の新製品の投入も予定しており、これら製品が順調に立ち上がれば、売上成長にもさらに拍車がかかることになるだろう。売上高の伸びに対して、EBITDAの成長率が小さくなっているが、これは積極的な研究開発投資(自社開発製品売上高比率で10%程度)を今後も行っていくことや、M&Aを実施した場合の対象会社の収益貢献について保守的にみていることが要因となっている。ただ、EBITDAベースでの過去最高益は2017年12月期に更新する見通しで、中期的に見れば業績は成長ステージに入ったと弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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