カルナバイオ Research Memo(7):創薬事業で前臨床試験まで進んでいるプロジェクトは2つ
[16/03/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(3)開発パイプラインの動向について
創薬事業における開発パイプラインで現在、前臨床試験まで進んでいるプロジェクトは2テーマあり、いずれもがん疾患を対象としたキナーゼ阻害薬となる。主要なパイプラインの取り組み状況については、以下のとおり。
○CDC7/ASK阻害薬
がん疾患を対象としたCDC7/ASK阻害薬についてはカルナバイオサイエンス<4572>の単独研究として、外部委託先を活用した前臨床試験が行われており、早ければ2016年上半期末頃には試験が終了する予定となっている。仮に試験結果が臨床試験に進めるものとならなければ、バックアップ化合物を用いて、再度前臨床試験を進めていく格好となる。現在は複数企業と導出に向けた交渉を行っている段階で、契約条件が折り合えば2016年中にも導出できる可能性があり、今後の動向が注目される。
CDC7/ASKキナーゼは、細胞周期活動の制御(細胞分裂の際の遺伝子複製)に重要な役割を担っていることが明らかとなっており、同キナーゼの活性を阻害することでがん細胞を死滅させることができる。特定の遺伝子を狙っていないので、様々ながん腫への応用が可能で、副作用も少ない画期的ながん治療薬として注目される。同社ではアンメット・メディカル・ニーズへの取組みを基本方針としており、対象疾患としてまずはトリプルネガティブ乳がんでの開発を進めている。
○Wntシグナル(TNIK)阻害薬
がん疾患を対象としたWntシグナル阻害薬については、国立研究開発法人国立がん研究センターとの共同研究テーマであり、現在は、同研究センターが中心となり前臨床試験を行っている。
大腸がんなどのがん幹細胞ではWntシグナルが活性化していることで、がん幹細胞が維持されることが分かっており、TNIKキナーゼがこのWntシグナルの制御に深く関わっていることが明らかとなっている。がん幹細胞を標的としたTNIK阻害薬を投与することで、がん幹細胞内のWntシグナルを強力に阻害し、がん幹細胞を死滅させることも可能となる。従来の抗がん剤ではがん細胞のみ死滅させるため、がんの再発リスクが残るが、TNIK阻害薬を使えばがん幹細胞を死滅させることも可能で、がんの再発リスクのない根治療法になるものとして期待されている。現在は、動物モデルで併用療法なども含めたステージアップにつながる研究を推進している。
○その他
その他の注目パイプラインとしては、広島大学との共同研究を進めている白血病幹細胞を対象疾患としたキナーゼ阻害薬について、現在は化合物の最適化を行っており、2017年までには次のステップとなる候補化合物の選択に進むものとみられる。白血病の治療法としては、抗がん剤を用いた化学療法や造血幹細胞移植などがあるが、いずれも副作用が強い。キナーゼ阻害薬としてはイマチニブ(商品名Glivec®)やイブルチニブ(商品名Imbruvica®)があり、いずれも数千億円の売上規模となっている。ただ、いずれも白血病細胞の増殖を抑えるための薬剤で、白血病の幹細胞を死滅させるものではなく対処療法となる。同社が開発を進めているキナーゼ阻害薬は、白血病幹細胞を死滅させる根治療法を目的としたものであり、研究開発が進めば市場価値も大きなものになることが期待される。このため、同社では同治療薬の研究開発方針として、患者での薬効・安全性までを確認する前期第2相臨床試験まで自社で行い、市場価値を高めてから導出する意向を示している。なお、前期第2相臨床試験までの研究開発費用としては20億円程度かかる見通しだ。
また、神経変性疾患を対象としたキナーゼ阻害薬では、現在、パーキンソン病の治療薬として、化合物の最適化を行っている。パーキンソン病は脳内にある体を動かす神経伝達物質であるドーパミンが減少することで引き起こされる病気だが、このドーパミンを作る黒質が壊死することが原因となっている。現在、治療法としてはドーパミンを補充したり、ドーパミンの分解を抑制したりするものなど複数の治療薬を服用する場合が一般的となっている。同社が開発を進めるキナーゼ阻害薬は、ドーパミンを作る黒質そのものが壊死するのを抑制する薬となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(3)開発パイプラインの動向について
創薬事業における開発パイプラインで現在、前臨床試験まで進んでいるプロジェクトは2テーマあり、いずれもがん疾患を対象としたキナーゼ阻害薬となる。主要なパイプラインの取り組み状況については、以下のとおり。
○CDC7/ASK阻害薬
がん疾患を対象としたCDC7/ASK阻害薬についてはカルナバイオサイエンス<4572>の単独研究として、外部委託先を活用した前臨床試験が行われており、早ければ2016年上半期末頃には試験が終了する予定となっている。仮に試験結果が臨床試験に進めるものとならなければ、バックアップ化合物を用いて、再度前臨床試験を進めていく格好となる。現在は複数企業と導出に向けた交渉を行っている段階で、契約条件が折り合えば2016年中にも導出できる可能性があり、今後の動向が注目される。
CDC7/ASKキナーゼは、細胞周期活動の制御(細胞分裂の際の遺伝子複製)に重要な役割を担っていることが明らかとなっており、同キナーゼの活性を阻害することでがん細胞を死滅させることができる。特定の遺伝子を狙っていないので、様々ながん腫への応用が可能で、副作用も少ない画期的ながん治療薬として注目される。同社ではアンメット・メディカル・ニーズへの取組みを基本方針としており、対象疾患としてまずはトリプルネガティブ乳がんでの開発を進めている。
○Wntシグナル(TNIK)阻害薬
がん疾患を対象としたWntシグナル阻害薬については、国立研究開発法人国立がん研究センターとの共同研究テーマであり、現在は、同研究センターが中心となり前臨床試験を行っている。
大腸がんなどのがん幹細胞ではWntシグナルが活性化していることで、がん幹細胞が維持されることが分かっており、TNIKキナーゼがこのWntシグナルの制御に深く関わっていることが明らかとなっている。がん幹細胞を標的としたTNIK阻害薬を投与することで、がん幹細胞内のWntシグナルを強力に阻害し、がん幹細胞を死滅させることも可能となる。従来の抗がん剤ではがん細胞のみ死滅させるため、がんの再発リスクが残るが、TNIK阻害薬を使えばがん幹細胞を死滅させることも可能で、がんの再発リスクのない根治療法になるものとして期待されている。現在は、動物モデルで併用療法なども含めたステージアップにつながる研究を推進している。
○その他
その他の注目パイプラインとしては、広島大学との共同研究を進めている白血病幹細胞を対象疾患としたキナーゼ阻害薬について、現在は化合物の最適化を行っており、2017年までには次のステップとなる候補化合物の選択に進むものとみられる。白血病の治療法としては、抗がん剤を用いた化学療法や造血幹細胞移植などがあるが、いずれも副作用が強い。キナーゼ阻害薬としてはイマチニブ(商品名Glivec®)やイブルチニブ(商品名Imbruvica®)があり、いずれも数千億円の売上規模となっている。ただ、いずれも白血病細胞の増殖を抑えるための薬剤で、白血病の幹細胞を死滅させるものではなく対処療法となる。同社が開発を進めているキナーゼ阻害薬は、白血病幹細胞を死滅させる根治療法を目的としたものであり、研究開発が進めば市場価値も大きなものになることが期待される。このため、同社では同治療薬の研究開発方針として、患者での薬効・安全性までを確認する前期第2相臨床試験まで自社で行い、市場価値を高めてから導出する意向を示している。なお、前期第2相臨床試験までの研究開発費用としては20億円程度かかる見通しだ。
また、神経変性疾患を対象としたキナーゼ阻害薬では、現在、パーキンソン病の治療薬として、化合物の最適化を行っている。パーキンソン病は脳内にある体を動かす神経伝達物質であるドーパミンが減少することで引き起こされる病気だが、このドーパミンを作る黒質が壊死することが原因となっている。現在、治療法としてはドーパミンを補充したり、ドーパミンの分解を抑制したりするものなど複数の治療薬を服用する場合が一般的となっている。同社が開発を進めるキナーゼ阻害薬は、ドーパミンを作る黒質そのものが壊死するのを抑制する薬となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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