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TYO Research Memo(2):グラフィック領域に強く、海外ネットワークを有するK&Lを連結子会社化

注目トピックス 日本株
■事業概要

(1)事業内容

ティー・ワイ・オー<4358>は、TV-CMの企画・制作をはじめ、ブランディングやWebを中心としたデジタル広告スマートフォンアプリなどあらゆる広告コンテンツの企画・制作を手掛けるクリエイティブエージェンシーである。

TV-CM制作市場が堅調な伸びを見せるなかで、JR東海(東海旅客鉄道<9022>)の「そうだ京都、行こう。」やユニクロ(ファーストリテイリング<9983>)など、消費者の印象に残る数々のCM制作を手掛けてきたクリエリティブ力を武器に順調に業績を拡大してきた。

事業セグメントは、主力の「広告事業」のほか、子会社によるミュージックビデオ、アニメーションの制作等を手掛ける「映像関連事業」の2つに区分される。また、「広告事業」は、広告代理店向けにTV-CMの企画・制作等を行う「広告代理店取引」と、直接広告主向けにWeb広告及びプロモーションメディア広告の企画・制作等を展開する「広告主直接取引」に分かれており、最近では、注力する「広告主直接取引」が大きく伸びている。広告事業が売上高の95.5%を占めているが、そのうち広告代理店取引が売上高の71.0%、広告主直接取引が24.5%を構成している(2016年7月期第2四半期累計実績)。

広告代理店別の構成比率は、(株)電通<4324>向けが40.1%、(株)博報堂向けが30.4%、2社グループ合計で70.5%を占めている。また、業種別の構成比率では、「電気・情報通信」「車両・交通器具・工業機械」「飲料」「衣料・繊維・服飾」「娯楽・エンターテインメント」が上位にランクされている(2016年7月期第2四半期累計実績)。

(2)沿革

同社は、1982年4月に東京都港区六本木においてCM制作会社として設立された。大手CM制作会社3社の中では後発となる。現代表取締役社長の吉田博昭(よしだひろあき)氏が、早川和良(はやかわかずよし)氏(現専務取締役)を含む5名のCMクリエイターとともに、「クリエイターの、クリエイターによる、クリエイターのための理想の会社づくり」という夢を掲げて同社を立ち上げた。

設立以来、同社の強みであるクリエイティブ力を発揮することで順調に事業を軌道に乗せ、1987年に制作したCMが「カンヌ国際広告映画祭」で金賞を受賞(1992年に再受賞)した。1989年には日本のCM界の最高の栄誉である「全日本CM大賞」を受賞(1990年に再受賞)した。

一方、更なる成長を目指すため、エンターテインメント映像分野(ゲーム・音楽・テレビ番組等)への参入を図り、1994年にコンピュータ・グラフィックス制作事業、1995年にゲームソフト事業、2000年には音楽関連映像制作事業を開始して業容を拡大。2002年にJASDAQへ上場を果たした。

その後も、積極的なM&Aや会社設立等により事業領域の拡充を進め、2002年にWeb制作事業、2003年にキャラクター制作事業とアニメーション事業、2006年に放送番組制作事業を開始。2007年には経営難に陥っていた(株)円谷プロダクションをグループ化した(ただし、2010年に保有株51.0%すべてをフィールズ<2767>に譲渡し連結除外)。

しかし、安定的な広告制作事業に比べ、ハイリスク・ハイリターン型のエンターテインメントビジネスが、景気後退の影響も重なって業績の足を引っ張る要因となった。2009年にはゲームソフト事業から撤退するなど、不採算部門の整理と本業回帰による事業再編を矢継ぎ早に進めた。その対応策が奏功して、財務基盤の強化及び収益性の向上が図られたことから業績はV字回復し、2013年10月に東証2部へ市場変更すると、2014年1月には東証1部へ指定となった。

同社の社名は、IATA(国際航空運送協会)が「東京」を表すために用いる都市コード「TYO」を由来としている。クリエイターがクリエイティブ・ビジネス都市「TYO」を目指して集まってほしい、世界にメッセージを発信するような日本を代表する「東京」のプロダクションになろう、という気持ちが込められている。

(3)アジアにおける戦略的M&A(第1段階)を実現

同社の中期経営計画「TYOグループ中期計画2013」は、広告代理店取引の継続強化に加えて、広告主直接取引の躍進、海外事業の新規展開を戦略の柱としている。同社は、成長戦略の一環として、2015年7月にアジアにおける戦略的M&Aの第1段階としてインドネシアに合弁会社(PT TYO FIRST EDITION)を立ち上げた。また、2015年8月にはグラフィック領域を強みとし、アジア地域を中心とした海外にもネットワークを有するK&Lを第三者割当増資引受により連結子会社とした。

PT TYO FIRST EDITION(以下、FE)は、インドネシアの国内資本系では最大規模の広告会社The First Editionグループの代表との合弁会社として設立され、The First Editionの事業を承継することで2015年8月より実質稼働している。当初計画では2016年7月期での予定であったが1年前倒しでの実現に至った。なお、The First Editionには、インドネシア国内において、ブランディング・コンサルティング及びクリエイティブ、ストラテジックプランニング・リサーチ、イベント等のサービスを手掛けてきた実績がある。今後は、現地従業員に対して同社の誇るクリエイティブ力や技術・ノウハウを伝え人材を育成することにより、成長著しいインドネシアの広告市場においてシェア拡大を図るほか、インドネシアにおける日系企業との取引拡大を目指す方針である。なお、同社の出資比率は51.0%(取得原価は約76百万円)であり、のれん代は取得原価と同額の約76百万円(5年間での均等償却)となっている。

一方、K&Lは、グラフィック領域を中心として大手広告主等の案件を長きにわたり手掛けてきた実績のあるクリエイティブエージェンシーであり、多くの日本企業に先駆けて、中国やインド等アジア地域をはじめとした海外へも事業進出している。K&Lグループの有する海外を含む豊富な実績及びノウハウを、同社グループの広告主直接取引の拡充及び海外事業の本格展開に生かすとともに、両社グループが有する経営資源と国内外にまたがる営業ネットワークを相互に有効活用することにより、事業規模の拡充及び事業効率の向上等に狙いがあるとみられる。なお、第三者割当増資引受による同社の議決権所有割合は68.0%(取得価額は非開示)でのれん代は約9百万円(5年間での均等償却)となっている。K&Lの直近期(2015年6月期)の売上高は1,499百万円、総資産は388百万円である。本件に伴って、凱立広告(上海)有限公司が連結子会社となっている。また、2015年12月にはシンガポールに現地法人(K&L CREATIVE ASIA PTE.LTD.)を新設した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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