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ファストロジク Research Memo(3):投資用不動産に特化したポータルサイト「楽待」を運営

注目トピックス 日本株
■会社概要

(2)事業の概要と事業モデルの詳細

(i)事業の概要
ファーストロジック<6037>の事業は非常にシンプルで、「投資用不動産に特化したポータルサイト“楽待”の運営」だ。同社の事業の特質を理解するキーワードは「個人」、「投資」および「マッチングに特化」の3点にあると弊社では考えている。

「個人」及び「投資」というのは、同社が運営する「楽待」は、投資用不動産の物件情報を個人向けに提供することを目的にしているということだ。投資用の対立概念は“居住用”であるが、居住用については従前から大手ポータルサイトが存在しており、新築・中古・賃貸のそれぞれの分野について十分な情報が提供されてきている。それに対して投資用に関しては同社の坂口社長がかつて、その情報を伝えるポータルサイトがほとんどないことを実体験しており、それが同社設立及び「楽待」のローンチにつながったという経緯がある。「楽待」は巨大な既存勢力が存在する居住用には踏み込まず、投資用不動産に徹するとともに、プロの不動産業者に比べて情報が限定的な個人投資家を対象にサービス提供することにこだわったサイトとなっている点を特徴としている。これが新しいポータルサイト市場を切り拓き、同市場でトップの地位に上り詰めた最大の要因であると弊社では考えている。

「マッチングに特化」というのは、後述する具体的な収益モデルとの関連で重要なポイントだ。同社は「楽待」の運営において個人と不動産会社のもつ物件情報をマッチングさせることに対して課金しており、成約に伴う取引手数料や成功報酬などは設定していない。これを行う場合、ライセンスの問題や同社の顧客(個人会員および不動産会社双方)との利益相反など、レギュレーションやコンプライアンスに関連する事項がクローズアップされてくることになる。同社はあくまで情報サービス産業に位置する企業として、マッチングに特化した収益モデルを採用しており、今後もこれを堅持する方針だ。

(ii)「楽待」の事業モデル
「楽待」の参加者は不動産物件情報を掲載する不動産会社と、不動産投資を行う個人だ。同社は不動産会社を“加盟店”、個人投資家を“会員”として管理している。同社の収益はひとえに加盟店から得られる事業モデルとなっており、個人会員はすべて無料で利用できる。同社が加盟店に提供するサービス、すなわち同社の収入を得る仕組みは、以下の通りだ。

(ア)物件掲載サービス
「物件掲載サービス」は、加盟店が不動産物件の情報を、有料で「楽待」に掲載するというサービスだ。このサービスは「楽待」のエントリーサービスという位置づけで、全ての加盟不動産会社が利用しているサービスだ。料金は1件当たり月額1,000円で、10件単位での掲載となっている。他に新規加盟の際に加盟料として5万円が必要となる。

(イ)提案サービス
「提案サービス」は、加盟店が、個人会員の希望に該当する物件の情報を、メールで送付できるサービスだ。個人会員のピックアップとそれに対する提案物件の選択は加盟店側が自ら行う。送付先は50人単位で、最初の50人が10万円となっている。

同社の強みは、提案メールに対する約80%という反応率の高さだ。約80%の会員から何らかの反応が得られる状況は他社を圧倒しており、これが加盟店にとって、このサービスを利用するモチベーションにつながっている。現状は、加盟不動産会社に占める利用不動産会社の割合が低いものの、単価が物件掲載サービスよりも高いため、売上高では物件掲載サービスと同程度の構成比となっているとみられる。また、付加価値サービスであるため利益率が高いのも特徴だ。今後利用割合が高まれば、最大の収益源に成長するポテンシャルを秘めているといえる。

(ウ)広告掲載サービス
「広告掲載サービス」は「楽待」サイトのバナー広告枠を加盟店等に販売するものだ。同社は広告代理店等を使わず直販しているため利益率の高い事業となっている。バナー枠の価格は大きさ等に応じて8万円〜80万円超と幅があるほか、PV数によって変動する仕組みとなっている。現状は半年に1回のペースで価格改定を行っているが、値上げ改定が続いている状況だ。にもかかわらず、バナー枠自体はすべて埋まっている状況にある。

(エ)査定サービス
「査定サービス」は個人会員が保有する不動産を売却する際に不動産会社に無料査定を依頼できるサービスだ。同社がフィーを受け取るのは査定を行った加盟店からで、物件価格に応じて5,000円〜50,000円の料金を得る仕組みだ。加盟店からみれば査定を行うことで仕入物件の情報を入手できることになり、この対価が上記の料金ということだ。不動産業界においては物件1件当たりの取得費用が50万円を超えるとも言われているため、同社に支払う査定サービス利用料は、加盟店側からみれば十分に満足できる水準となっている。

(iii)「大家さんの味方」の事業モデル
個人会員が不動産投資を行う上での最大の関心事は、究極的には入居率・稼働率を高めることだが、その前段階としては物件の魅力度を高めることが重要だ。その具体的アクションがリフォームであり、賃借人・テナントの異動があれば何らかのリフォーム作業が行われることになる。また不動産の通常の管理の一環で外装や諸設備のメンテナンスが行われることになる。このように、不動産投資とリフォームは不可分の関係にあるが「楽待」がカバーするのは不動産の売買の領域だけをカバーしていた。そこで同社は、不動産取得後の管理・リフォームの領域をカバーする新しいポータルサイト「大家さんの味方」をローンチした。これにより同社は、不動産投資の全サイクルを収益機会としてカバーする体制が整った。

「大家さんの味方」の事業モデルも、原則としては「楽待」と同じだ。すなわち、投資用不動産オーナーである個人会員と加盟店(典型的にはリフォーム会社)とをマッチングさせるサービスを提供し、料金は加盟店から受け取る、というものだ。「大家さんの味方」が加盟店へ提供するサービス(同社にとっての収入源)は2つだ。一つは「会社情報掲載サービス」で、加盟店情報や加盟店から発信する情報などをサイトに掲載するサービスだ。「楽待」の物件情報掲載サービスと類似したサービスといえる。料金は1件当たり月額10,000円が基本となっている。一つの加盟店が支払う最低月額が10,000円に設定されているという点では「楽待」と同様の設定だ。もう一つは「見積りサービス」で、これは個人会員がリフォーム会社を選定して見積もりを依頼した場合に、リフォーム会社は見積もりを返すとともにシステム利用料を同社に対して支払うというもので、「楽待」における査定サービスと同様のものだ。料金は見積金額に応じて1,000円〜100,000円となっている。加盟店は見込み客情報を獲得できるほか、受注のチャンスが増大することになる。

現在、同社は「大家さんの味方」を「楽待」のオプションサービスという位置づけにしている。「大家さんの味方」の専用サイトではなく、「楽待」のなかのメニューの1つとして掲げ、そこからリフォーム見積もり用画面などへと誘導する流れだ。このサイト構成について弊社では、「楽待」の会員をそのまま「大家さんの味方」の会員に“転用”できるという意味で、非常に効率的な手法だと評価している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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